起。







ゾロは寝起きが悪い。





というのも、起こされ方が手厳しいからだ。



大概、食事の時間になってもキッチンへと来ないゾロを起こしに来るのは、
サンジの役目だった。
その起こし方は、もちろん蹴り。

声をかけるだけで起きないならメシ抜きだ、と最初は思ったサンジであるが、
それではコイツは一生メシ抜きになって餓死してしまう、と判断したコック魂は、
蹴り起こす、という非常にゾロの身を案じた故の確実な方法で起こしているのだ。


当然、ゾロからすれば快適な目覚めからはほど遠い。
サンジは蹴るだけ蹴ってさっさとキッチンへ戻るので、
そこで喧嘩が勃発することはない。
第一サンジは早く戻らねば、飢えた船長が暴れだしてしまう。
結局、一人取り残されたゾロはいつも不機嫌な顔でキッチンへと向かうのだった。



時折ナミも起こしに来る。
ナミが起こすのは食事の時には限らず、何か用事を言いつけるとき。
ゾロに起きてもらわねば意味がないので、これまた蹴り起こすか、殴り起こす。
もちろん、サンジほどの力はナミにはないが、
その分無遠慮に全力で攻撃してくるので、寝ている状態の人間にはゾロとて辛い。
結果、これまた不機嫌な寝起きとなる。

眉間の縦皺に、無言の威嚇。
これに毎回ビビっているのはウソップくらいだが。





しかし、チョッパーが起こすとなると話は別になる。

チョッパーはゾロを殴り起こしたりしない。
とてとて走ってきて、ゾロの傍でゾロを揺すりながら、
「ゾロっっ!メシだぞ!サンジのメシが冷めちゃうぞ!起きろよゾロ!」
と、可愛らしく起こすのだ。
おかげでゾロはゆっくりと、比較的自然に目覚め、
さらに寝ぼけているため
そのままチョッパーを片手で抱え上げ、抱きしめたままフラフラとキッチンへ行く。

この状態のゾロは無言ではあるが、眉間の皺はない。
おかげで年相応、もしくはそれより幼く見える顔で、
さらにチョッパーを胸に抱いた状態で、ぼやーーーっとキッチンに現われる。
加えて、チョッパーがやたら嬉しそうにニコニコとゾロに抱かれているのだ。


これには一同もほんわかせざるを得ない。
ナミやロビンはにこやかにそれを見つめるし、
あのサンジですら、寝坊のゾロに悪態をつくでもなく、「早く座れ」としか言えないのだ。
しかも、ゾロはそれに「ん」と素直に従う。
寝ぼけたゾロならではの素直さ。
普段とのギャップに動揺しまくってしまう一同。

ほんわかすぎる。

結局この妙な空気に耐え切れないサンジが、次の食事の時にはゾロを蹴り起こすのだった。








ならば、ナミとサンジが優しく起こすとどうなるのか。

この日の昼食前、ゾロを除いて既にキッチンに集まっていたクルーたちは話し合ってみた。

どっちにしろ、まずはやってみよう、ということで、
最初はナミ。





甲板の手すりに寄りかかって眠るゾロに近づくナミ。



隣に座って、甘えるように擦り寄りながら、優しく声をかける。





瞬間ナミは、ヤバイと本能で察知した。
しかし時既に遅し。
次の瞬間にはあっという間に寝たままのゾロに捕獲され、その太い腕に拘束されてしまい、
抱きしめられて一緒に甲板に寝転ぶ羽目になった。
キッチンの窓からその様子を見ていた他のクルーは、
血管を浮かべて飛び出さんとするサンジを必死で押さえていた。
真っ赤になったナミは、結局ゾロを叩き起こしてしまい、
優しく起こすのは人がいない時じゃないとダメだわ、と実感した。






次はサンジが試す番だ。
夕食時、同じようにゾロ以外はキッチンに集まる。


ゾロは甲板のど真ん中で大の字になって眠っている。
キッチンの扉の前に全員集合し、サンジがゾロに近づくのを見守る。




何でコイツを優しく起こさなきゃなんねぇんだ、とぶつぶつ言っていたサンジだが、
一同が結果を楽しみに見ているので、ここで抜けるのは場がシラけてしまう。
腹をくくって、サンジはゾロの元へと歩いていく。








体を伸ばして思う存分爆睡しているゾロの傍に、サンジはしゃがみこむ。



 「ゾロー」

 「・・・・・・」

 「ゾローーー」

 「・・・・・・・」



声をかける程度では、当然起きない。


 くそう、寝腐れマリモめ。



サンジはゾロの頬に触れて、軽く叩く。


 「ゾロ」


精一杯の優しい声色で、ゾロを見下ろしながらなおも頬に触れる。


 「・・・・ぅ・・・」



ようやくゾロの半目がうっすらと開いた。


目があった気がしたので、
サンジは鳥肌たちそうな自分を必死で押さえて、にっこりとゾロに微笑んだ。



 「メシだぞ、ゾロ」







そして





次の瞬間。








 「・・・・あぁ・・・」






普段のサンジへの口調とは全く違う、優しい声でゾロは小さくそう言った。


さらにその後、サンジに向けたことなどない顔で、




微笑んだ。










 「・・・・・・・・・・!!!!!!!」










ドガァッ!!!!!










 「!!!!???????」



サンジはつい、ゾロを蹴り飛ばしてしまった。

半覚醒の状態で蹴られたため、ゾロも反応が早かった。


 「何しやがるっ!!」


素早く体勢を立て直し、刀に手をやる。



 「っっ、う、うるせぇ!!メシだ!!さっさと起きろクソマリモ!!!」

 「・・・てめぇ、顔赤いぞ?」

 「!!!!!」






 「恋ね・・・・」

キッチンの前で見下ろしていたはずのロビンとナミが、いつの間にか2人の傍まで下りて来ていた。


 「ちっっ違います!やめてくれよロビンちゃん!!!」

 「何だよ、こいって」

 「うるせぇ!てめぇにゃ関係無ぇっ!!!」



 「あんな風にひとつの恋が始まるのね・・・」

 「だから違うってばナミさん!!!」



完全に女性陣2人は面白がっている。




 「何なんだよ」

 「だからてめぇは黙ってろ!!くそ、やっぱてめぇは蹴り起こさねぇとダメだ!!」

 「あぁ!?少しは丁寧に起こせよ」

 「死んでも御免だ!!!!」




依然顔を赤らめたまま、ズンズンとサンジはキッチンへと戻っていった。




 「・・・何なんだ?あいつは」

 「あんたがカワイイことするからよ」

 「かわいいぃ〜〜?」



ナミの言葉に、ゾロはあからさまに顔をしかめてみせた。



 「そうよ」

 「おれがいつ」

 「今」

 「・・・・知るかよ、覚えてねぇ」

 「ま、いいわ。とりあえず、サンジくんには二度とあんな起こし方させないようにしないと」

 「あんな?」

 「あんたは知らなくていいの」




   とられちゃうわ




ナミは小さく呟いて、ゾロの腕にしがみつくようにして共にキッチンへと向かった。


天然タラシ剣豪。
寝ぼけた剣豪はタラシだ。なーんて。
え?サンゾロ?
サンジくん、恋に落ちるの巻(違います)。
剣豪総愛希望。
ふふ。

2005/04/05

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