嗜。
「あ、ゾロ、遅かったのね」
委員会を終えたゾロが教室に戻ると、ナミが机の上に座って振り返り、ひらひらと手を振ってきた。
誰もいないと思って入った教室に幼馴染の姿を見つけて、ゾロは目を丸くする。
「何だ、お前も委員会あったのか?」
「私のはすぐ終わったんだけど、ゾロのカバンがあったからついでに待ってみた」
自分の机に近づいたゾロは配られた数枚のプリントをカバンに押し込んだ。
ナミはその前の机の上に座り込んだまま、背後に置いていた自分のカバンを抱える。
「お母さんが、晩御飯どうするかって。 おばさん今日から出張でしょ?」
「あぁ…、今日も世話になっていいか?」
「うん。 どうせお母さん、ゾロが来る方が嬉しいんだから。食いっぷりがいいって」
「そりゃありがてぇ」
女手一つで息子を育てるゾロの母は、今現在も一線で働くいわゆるキャリアウーマンで、
出張で家をあけることが度々あった。
そんなときは、ゾロはお隣のナミの家で夕飯を食べさせてもらうのが常になっている。
ナミは携帯で母親にメールをしたあと、
カバンの中をゴソゴソと探り、グリーンの包装紙に包まれた四角いものを取り出した。
「はいゾロ」
「あ?」
「誕生日おめでとー」
「おーー」
ゾロは肩にかけようとしていたカバンをもう一度机に戻して、それを受け取った。
ナミは相変わらず机の上でにっこりと笑顔を見せる。
ガサガサと包装紙を開くと、それはゾロの好きなロックバンドのCDだった。
「昨日出たばっかだから、まだ買ってないよね?」
「あぁ、サンキュ!」
ゾロが嬉しそうに笑って礼を言うと、ナミも満足気に微笑んだ。
「ヒマなとき焼いてね」
「わかった」
「ていうか明日焼いてきてね」
「…へーへー」
図々しいというか、ちゃっかりというか。
だがそれでも決して人から憎まれることはないナミに、ゾロは苦笑して返事をした。
ナミはやったと言って笑う。
「てかお前、さっきから何食ってんだ?」
「ん? ポッキー」
ゾロが教室に入ったときから、ナミは太腿の横に赤い箱を置いて、
右手では細長いチョコレート菓子をつまんでいた。
「何か逆に珍しいな、それ」
「でしょ? 最近のって何かチョコとか太くて色んな味があって…」
そう言う間にも、絶えずナミはポッキーをポリポリと口に運んでいた。
時折、指についてしまった溶けたチョコをペロリと舐める。
「だからこの元祖!な感じのが、たまーにすごく食べたくなるのよねー」
「ふーん」
「そういえば11月11日はポッキーの日なのよ、知ってた?」
「へぇ、何で?」
ゾロはCDをカバンに詰めながら、ナミに視線をやりつつ首をかしげた。
ナミはガサガサと箱から新しいポッキーを4本出して、両手の指で器用にそれを持った。
「ほら、11月、11日!」
子供のように笑うナミに、ゾロはこっそりと頬を赤らめつつ太るぞと呟いた。
「何よバカ、じゃああんたも道連れ」
ゾロの言葉に顔をしかめたナミは、その4本のポッキーをまとめて持って突き出した。
「はい、あーーん?」
にっこりと満面の笑顔でそう言われ、ゾロは思わず固まった。
だがナミはゾロの気持ちには気付く様子もなくにこにこと笑ったまま、ゾロがポッキーにかじりつくのを待っている。
「ほら、あーーん!」
「………」
しばらく無言で固まっていたゾロはふいに手を伸ばし、ナミの細い腕をガッと掴んだ。
「なに――」
ナミが声を出す間もなく、ゾロはポキポキと4本のポッキーにまとめてかじりついた。
根元まで全部食べてもなおナミから手を離さず、
ナミの指に少しだけついていたチョコレートを、舐めた。
「なっ………」
さすがにナミの顔が一気に赤くなる。
ゾロはその腕を解放はせず、そのままちらりとナミの赤い顔を見た。
だが次の瞬間、ナミの片手の拳が脳天を直撃し、ゾロはあっけなく腕を離してしまった。
「っそ、そんなに好きなら全部あげるわよ!!」
ナミは赤い顔のままでそう言い捨てて、脇に置いていたポッキーの箱をゾロの頭めがけて投げつけ、
カバンを胸に抱えてバタバタと教室から駆け出て行った。
「……ってぇ……」
頭のてっぺんをさすりながら、しゃがみこんだゾロは床に落ちた箱を拾う。
かさりと音がして、中に残っていたポッキーが飛び出しそうになったので、それを取ってバキっとかじった。
「………コレじゃ無ぇよ、アホ……」
ナミに負けじと顔を赤くしたゾロは、しゃがみこんだまま誰に言うでもなくそう呟いた。
07/11/04 UP
『幼馴染ゾロナミ』
追加リクで、『ポッキーの話を中に入れて』とのこと。
むりやり幼馴染設定を匂わす…というレベルに終わりましたが…ごめんね…。
ゾロは若さゆえに色々たまってますよ(笑)。
でもピュアボーイさ!!!
秋空さん、こんなんで勘弁!
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