130555ゲッター、かなんサマへ愛をこめて。
受。
「なぁナミ、この袋はー?」
「えーっと、それはゴミだから外に出しといて」
「分かった!」
掲げていた袋を持って、チョッパーは女部屋の階段を上りそれを外に置き、また下りてきた。
それから再び、本や袋や箱が積み上げられた女部屋の中をパタパタと動き回る。
本日は女部屋大掃除。
ふとナミが思い立ち、偶然近くにいたチョッパーが手伝いをすることになったのだ。
ある程度ナミがより分けた、いるものといらないもの。
チョッパーがそれをもう一度ナミに確認しながら、いらないものはさっさと部屋の外に出す。
それでもいまだに女部屋にはモノが溢れ、
今までどうやってコレを収納していたのかと、逆にチョッパーは感心していた。
ナミによる仕分けが済んでいるらしき山に近づき、チョッパーは薄汚れた箱を持ち上げた。
医学書と同じくらいのその箱は軽く、元は白かったのであろうが薄黄色に変色し、振ると中からカサカサと音がした。
「なぁナミ、これは? 捨てるのか?」
ゴミが詰めてあるにしては中が空いているし、それにゴミならばナミがあらかじめ潰しているはずだった。
チョッパーはその箱を持ち上げて、再びナミに声をかけた。
横髪をピンで留め、後ろ髪を頭の上でお団子にしたナミはふぅと額の汗を拭きながら振り返る。
「どれ? あっ、それはダメ!!!!」
チョッパーの持つ箱を見たナミは、顔色を変えて慌てて駆け出し、それを奪い返した。
その剣幕に、チョッパーは思わず固まってしまう。
「ご、ごめん」
「いいの、こっちこそごめんね大声出して」
必死になっていた自分に気付いて、ナミは少しだけ頬を赤くして笑った。
箱を両手に抱えたナミは、近くにあった椅子に腰を下ろして大事そうにそれを見下ろした。
チョッパーも傍に寄ってその箱を眺め、ナミを見上げた。
「それ、大事なモノなのか?」
「うん、手紙が入ってるのよ」
「てがみ?」
チョッパーが首をかしげると、ナミは優しく笑った。
「昔ね、ベルメールさんとかノジコとかゲンさんとか、皆で文通ごっこしてて」
そう言いながら、ナミはその箱の蓋をゆっくりと開けた。
チョッパーは目をキラキラとさせてその中を覗き込む。
「それを全部取ってるの」
「へぇーーー!!!」
箱の中から出てきた、これもまた箱と同じように変色した手紙たちを、
ナミは懐かしむように柔らかく微笑みながら手に取った。
そんなナミの表情を見ながら、チョッパーはまた首をかしげて尋ねた。
「…嬉しいのか?」
「え?」
「手紙って、貰うと嬉しいのか?」
ナミはきょとんとして、考えるように首を傾けてそれから笑った。
「そうね、嬉しいわよ。 貰うのも、出すのもね」
「ふーん…」
「口に出すのとは違う、文字だからこそ伝えられる思いっていうのがあるもんね」
「ふーん……」
「そういえば最近は手紙とか、書いてないなぁ…」
ナミのその呟きを聞いて、チョッパーはきらーん!と目を輝かせた。
「書けばいいよ!!」
「え?」
「おれが届けてやるから!!」
目を丸くしたナミは、意味を理解してふふっと笑った。
もしチョッパーが犬であったら、ぴんと伸びた耳とぶんぶんと振れる尻尾をナミは見たことだろう。
「じゃあ、郵便屋さんを頼めるかしら、チョッパー?」
「任せろ!!!」
その日の夕方、チョッパーはナミから貰ったお下がりの赤いカバンを肩から斜め掛けにして甲板を走っていた。
どうしたんだチョッパーとウソップが声をかけると、郵便だ!と楽しそうに返した。
それから甲板の端でイビキをかいていたゾロの正面に立つと、ゆーーびんでーーーーす!!と叫んだ。
んぁ?と薄目を開いたゾロは、チョッパーの姿を確認して欠伸をしたあと、
壁に寄りかかっていた上体を起こして目をゴシゴシとこする。
「何だよチョッパー、ゆうびん?」
「あぁ! ロロノア・ゾロへナミから手紙が届いてるぞ!」
「ナミ? 手紙??」
ゾロが混乱しているにのも構わず、チョッパーはごそごそと赤いカバンに手を突っ込んで、
白い封筒を取り出してにかっと笑った。
「はい!!」
「………どーも…」
満面の笑みで差し出されたその手紙を、ゾロはとりあえず受け取った。
裏表を確認してから、封を開く。
1枚の便箋が出てきて、最初の方の文章を読んだゾロはちらりとチョッパーを見て、
それからさらに読み進め、口元を隠しながらも照れたように目が笑っていた。
「嬉しいか?」
「あ?」
「手紙もらって、嬉しいかゾロ?」
「…あぁ、ありがとなチョッパー」
ゾロは優しく笑って、ガシガシとチョッパーの頭を撫でた。
「…へへっ! 返事書いたらおれに渡せよ!ナミに届けてやるからな!!」
「………返事、ね……」
はは、と苦笑しながらゾロは頷いた。
翌日、朝食の席に現れたゾロはチョッパーの姿を見つけると、ポケットから少し皺になった封筒を引っ張り出した。
「チョッパー、これ配達してくれ」
「おぅ!!!!」
ぱぁっと笑顔になったチョッパーは、フォークを放り出して椅子から飛び降り、
ゾロの傍まで走り寄りその封筒を受け取った。
「誰に届ける?」
「ナミだ」
「分かった!!!」
そう答えて、チョッパーは郵便カバンを取りにいくために男部屋へと走った。
キッチンにいたクルーはその後姿を見送ってから、椅子に座っているナミへと視線を移した。
「こんな近くにいんのにね」
「かわいいわね、船医さん」
「ふふ、いつ届けてくれるかしらね」
サンジは微笑みながらナミのカップに紅茶のお代わりを注ぎ、ロビンとナミは揃ってクスクスと笑った。
ゾロは定位置であるナミの隣に腰を下ろし、自分の朝食を食べ始める。
隣の男をちらりと見て、頬をうっすら赤くしたナミは小さな声で言った。
「ありがとね、ゾロ」
「あぁ」
しばらくして赤いカバンを携えて戻ってきた小さな配達員は、満面の笑みでナミに手紙を届けたのだった。
その日以来メリー号では手紙を出し合うことが流行り、チョッパーは大忙しとなった。
それは他愛もない連絡事項だったり、サンジから美女への愛の手紙だったり(大抵それに対して返信は無かったが)、
ナミとゾロの秘密の連絡だったりと内容は様々だったが、
相手が近くにいようといまいとクルーはチョッパーに配達を頼み、
チョッパーは赤いカバンをぶら下げて、にこにこと船内を駆け回るのだった。
ある日、チョッパーはキッチンにいたサンジとウソップ、それからロビンにそれぞれへの手紙を配達した。
受け取った3人は、笑顔でお礼を言ってから封を開く。
楽しそうにその手紙を読む3人の姿を見て、チョッパーも笑っていた。
だが、ふとその笑みを解いた。
それは本当に、おそらく本人も自覚していなかったかもしれない程の一瞬で、
すぐにまた笑顔を戻したチョッパーは次なる配達をするためにキッチンから出て行った。
「………」
3人と同じようにキッチンにいたゾロだけが、それに気付いていた。
夕方になって、甲板に居たチョッパーにナミが倉庫から声をかけた。
「チョッパー!」
「何だナミ、また掃除か?」
「違うの、お手紙配達してもらいたいから、あとで女部屋に寄って?」
「わかった!」
薬の瓶や乳鉢を抱えたチョッパーは、いつもの笑顔で返事をした。
10分後、チョッパーは赤いカバンを提げて女部屋の扉を叩いた。
「ナミー、来たぞー」
「あぁチョッパー、どうぞ入って」
中からの返事を聞いて、チョッパーは扉を開けて階段を下りた。
床に着地すると、そこにはナミだけではなくゾロの姿もあった。
ナミは椅子に座って日誌を書いていたようだが、ゾロはソファの背にもたれかかるように腰掛けて酒を煽っていた。
「ゾロもいたのか」
「あぁ」
「夕飯前だぞ、飲みすぎるなよ!」
「分かってるよ」
チョッパーにびしりと言われて、苦笑したゾロは酒瓶をテーブルに置いた。
2人の会話を聞いてクスクスと笑いながら、ナミは引き出しを開いて封筒を取り出した。
「チョッパー、これいつもみたいにお願いね」
「わぁ、今日は多いな! 誰に?」
「サンジくんとウソップとロビンと、あとルフィよ」
「わかった!」
「チョッパー」
ナミから受け取った封筒をカバンの中に丁寧に入れながら、ゾロに呼ばれてチョッパーは振り返る。
ゾロは相変わらずソファに腰掛けたまま、これまた相変わらずよれよれの封筒をポケットから出しているところだった。
「これも頼む」
「わかった、誰宛てだ?ナミか?」
チョッパーはゾロの前まで歩み寄り、その封筒を受け取って尋ねた。
差出人を見るとそこにはゾロとナミの名前があり、首をかしげてそれを裏返し宛名を見た。
「トニートニー・チョッパーだ」
「…………」
チョッパーは目を丸くして固まって、それからゆっくりと封筒から顔を上げゾロを見た。
「よろしくな」
「…………」
チョッパーは段々と頬を緩めながら、振り返ってナミを見た。
「よろしくね」
にっこりと優しく微笑んだナミを見て、とうとうチョッパーはガマンできずに言った。
「う、嬉しくなんかねーぞコノヤロー!!!」
それからもしばらくはメリー号内文通ごっこは流行ったが、
配達される手紙の中には『トニートニー・チョッパー』宛のものが混じるようになった。
07/10/09 UP
130555リク。
…キリにしては微妙だけどね!(笑)
リク内容は『ゾロナミミラorチョパで、家庭内で郵便屋さんごっこ』
とりあえずチョパで書いてみた。
父から母へのラブレターを、家庭内で子供が配達するんだって!
やっば考えただけで可愛すぎて頬緩む!!
そう思いながら書いたのに…何故か愛の手紙というよりも配達すること自体がメインになってしまった…。
アレだ、ゾロとナミのラブっぷりは皆さんに感じ取ってもらいたい、隙間から(人任せ)。
ということで、かなんサマへ捧げます!
ラブ要素無いけど許してくれたら有難い…!
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