続。












ナミちゃんはぼくが守るよ。

ずっとずっと一緒にいるからね。






わたしもずっとずっと一緒にいるよ。

大好きだよ、ゾロ。






だから。











幼馴染の男の子の言葉は、いつも私に勇気をくれた。
やさしくてあったかくて、いつも傍に居てくれて。
成長した今でもそれは変わらず、私を守ってくれる彼の言葉は私にとって宝物だった。





 「それってさぁ、好きってことじゃあないの?」

 「…好き?」



一番仲の良い友人からそう言われ、首をかしげた。

教科書をカバンに詰める手の動きを止めて答えられずに考え込んでいると、
ノジコは呆れたように息を吐いて、隣の席から立ち上がった。



 「そういうのとは違うの?」

 「うーん……よく分かんないわ」

 「……あのさ、さっきロロノアくん呼び出されてたよ」

 「え?」

 「そろそろ卒業でしょ。 同じ高校行けない子が勝負かけてんのよ」



こないだ泣いてる子も見たんでしょ?とノジコは腰に手を当ててこちらを見下ろしてくる。

先日、昼休みに下駄箱で泣いている女子生徒がいた。
隣のクラスの子で、何があったのかと思って覗くとそこにはゾロが立っていた。
私と目が合ったゾロは一瞬驚いたようだったが、すぐにいつもの笑顔を見せてくれた。
どうしたのと問うと何でも無いと答えたので、そのときはそれ以上は聞かなかった。




 「ロロノアくんってモテるんだよ」

 「………」

 「あの人かなりかっこいい部類だからね、顔。 運動神経もあるし」



ノジコは人差し指でビシビシと私の額を突付きながら、言った。



 「あんたはいーーっつも傍に居るから気付かないのかもしんないけど」

 「………そんなの、」



何か答えようとして、だが何と言っていいか分からずに口ごもっていると、
教室の扉の方から聞き慣れた声がした。

隣のクラスのゾロが顔を出している。

ゾロはこうして毎日放課後になると、一緒に帰るため迎えに来てくれる。
私にとってもゾロにとってもこれは普通のことなのだが、
ノジコやあの日下駄箱で泣いていたような子にとっては、これは「普通」ではないのだろうか。



 「ナミ、帰ろう」

 「…あ、うん。 じゃあねノジコ」

 「はいはい、また明日ね」













小さい頃から隣に居た女の子は明るくてよく笑って、自分とは違いふわふわと柔らかいものだった。
幼いながらに守りたいと思ったし、傍に居たいと思った。
それは今でも変わらない。


中学卒業を前にして、最近やたらと女子から告白されるようになった。
手紙やら呼び出しやらメールやら、手段はそれぞれだが結局は『付き合ってください』の一言だ。
だがどれにも応じたことは無い。

そもそも付き合うってのが何なのか、その段階でいまいちよく分からない。
クラスにももう彼女がいるヤツもいるが、そいつらを見てもやはり分からない。
一緒にメシを食ったり登下校したり、休みの日に2人で遊びに行ったり。


今のおれとナミの関係と、どう違う?


もちろん『男女交際に伴うモノ』についてはそれなりに興味はあるが、
だが今はまだそれを他の女子で経験してみたいとは思わない。


















2人はいつものように学校から家までの道を並んで歩く。

幼馴染で登下校も毎日一緒とは言え、クラスが違うので話すことはたくさんある。
ゾロは元々そんなに喋る性格ではないので、
いつもならナミがその日一日のことを報告するように一人で喋っているのだが、この日のナミは違っていた。

ゾロの隣で無言で、少し俯いて歩いている。


何やら元気の無い、考え事をしているようなナミをちらっと見下ろしてゾロは自分から口を開いた。



 「ナミ、どうした?」

 「……あのさ、ゾロ」

 「ん?」



遠慮がちに覗き込むようにゾロを見上げたナミは、おそるおそる尋ねる。



 「……ゾロ、今日…も、誰かに告白されたの?」

 「…あー…あぁ、まぁ」



顎のあたりをボリボリと掻きながら目を逸らしたゾロを見て、ナミはさっと顔を俯ける。




 「…私知らなかったんだけど、ゾロってモテるんだってね」

 「別に……普通じゃねぇの?」

 「………返事は?」

 「あ?」

 「何て返事したの?」



ナミは立ち止まり、少し遅れて同じように足を止めて振り返ったゾロをじっと見た。
呆れたように首をかしげたゾロはナミの正面まで行って、そのオレンジ色の頭をガシガシと掻き混ぜる。



 「はいって答えてたら今頃こうやってお前と帰ってねぇだろが」

 「…そっか」



乱れた髪を手で直しながら、ナミは笑った。
ゾロも微笑んで、歩き出そうとナミに背を向けて一歩踏み出そうとしたが、動きを止める。

再び振り返ると、シャツの裾を細い指が掴んでいた。
笑顔を見せていたのにナミはまた俯いて、小さな声で呟く。



 「……でもこれからまた告白とかされたら、OKするかもしんないよね?」

 「……さぁ、どうだろうな……」

 「……………何か、やだ」

 「あ?」



首をかしげたゾロがナミを覗き込むと、そこには口を尖らせて不貞腐れている顔があった。



 「…やだって、何が」

 「ゾロが他の女の子と付き合うとか、そういうの」

 「………何で、ヤなんだよ」

 「分かんないけど、とにかくやだ」



拗ねた口調でそう言ったナミは、相変わらず俯いたままでゾロのシャツを掴む手に力を込めた。



 「だってゾロが誰かと付き合ったら、こうやって一緒に帰れなくなるんでしょ?」

 「まぁ…そうだろうな」

 「休みの日もその子と遊びに行くんでしょ?」

 「まぁ…」

 「そんなのやだ」



ナミはじわりと涙目になり、それに気付いたゾロはぎょっとする。
ゴシゴシと目をこすりながら、ナミはすんと鼻をすすった。



 「…泣くほどイヤかよ」

 「イヤ」

 「何で」

 「何でか分かんないけど、イヤ」

 「お前に分かんねぇならおれにも分かんねぇよ…」



慰めるようにナミの頭を優しく撫でながら、ゾロは溜息をついた。
ゾロのシャツから片手を離さず、片手で目を隠すようにしてナミは呟く。



 「ノジコがゾロはモテるって言うから、また絶対誰かから告白とかされるでしょ?」

 「いやだから別にモテねぇって……絶対告白、とか知らねぇよ」

 「高校に行ってゾロが誰かと付き合うとかもやだ」

 「どんだけワガママだお前」



ゾロは苦笑するが、顔を上げたナミは赤い目でキッとゾロを睨む。



 「ワガママだって分かってるわよ、でもヤなもんはヤなの!」

 「……ナミ」

 「………」



目を見張ったゾロは、再び俯いてしまったナミの頭を少しだけ自分の肩に引き寄せた。
ナミもそのままゾロの肩に額を寄せて、頭を撫でられながらまた小さく鼻をすする。



 「大丈夫だって、おれはずっとお前の傍に居るから」

 「………本当に?」

 「一緒に居るって、約束したろ?」



顔を上げたナミは、ゾロがニッと笑ったのを見て涙目のまま微笑んだ。



 「約束、覚えてたんだ?」

 「当然だろ」



ナミは嬉しくなって、そのままゾロにぎゅうと抱きついた。
一瞬体を後ろに退かせたが、ゾロもナミの体に軽く腕をまわし抱き寄せる。



 「じゃあナミ、そのあとの約束覚えてるか?」

 「………覚えてるよ、当然」

 「そっか」







大きくなったら、けっこんしようね







 「………約束、だよ」

 「…おぅよ」







幼い頃の約束は、今でも変わらず続いていて、やがて永遠のものとなる。






2007/08/13 UP

『幼馴染のゾロナミがそれぞれ自分の想いに気づき告白』

告白………してねぇーーーー!!!!!
ありゃりゃーー!!
いやまぁでも何となくラブいから誤魔化されてやってくれよ!
頼むよ!

みちりんさん、このへんで許してくれ!

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