待。








朝になって目が覚めて、隣に一人分空いたシーツにそっと手を滑らす。

冷たくなったそこには、確かにあの人がいた。



起き上がり、カーテンを開けて昇り始めた太陽の光を浴びる。
窓辺に置かれた白い一輪挿しには、私のようだと笑ってあの人がくれたひまわりの花が挿してある。

その横に、無造作に置かれた真っ白な紙。

彼が手紙を残すのは、決まってここだった。

窓を開けると、朝の風に乗ってが潮の香りが届いてくる。
ひらひらと手紙が飛んでしまわないように、手にとった。









オレンジ色のワンピースの裾が風に攫われ、海の冷たさが素足の肌に染み入る。
朝も早く誰も居ない海辺を歩きながら、持っていた手紙をそっと開いた。

波の音と鳥の鳴き声、吹く風以外には何も聞こえない、広い広い海を前にして、
小さなその手紙には短い言葉がただあるのみ。

どこに行くとも、いつ帰るとも。
何も書かれてはいない。

いつもと変わらぬその手紙をまた畳んでぎゅっと胸に抱く。



こうした日々をどれだけ過ごしてきただろうか。

手紙ひとつを残してふいに消え、その身の無事さえ分からなくなる。
彼が消えてから毎朝届く新聞が、私にとってどれだけ心乱すものか彼はきっと知らないのだろう。

彼の記事が無ければ寂しく思い、
彼の記事があれは、それが海賊狩り成功を知らせるものであれば安堵する。

遠く離れてしまったなら、そうやって彼の無事を知るしか私には方法は無いのだ。


報せが届くのを心待ちにする。
そして同時に、恐怖を覚える。

それが『海賊狩り』の死を伝えるものだったら?

今朝の新聞はまだ届かない。

早く教えて。
だけど見るのは怖い。

手紙も連絡も寄越してはこない彼には、きっと私のこんな気持ちは分からない。






花を見るたび空を見るたび海を見るたび、私は彼を思い出す。
そして彼の無事を想う。


だが逢いたいと。
触れたいと。
その声を聴きたいと。
そう願っても、彼は今ここには居ない。

彼が居なくても私の時は流れ日々を過ごし、昨日の私はいなくなる。
一人で眠って、一人で目覚めて。


いっそ忘れてしまえばいい。
一人でも生きていけるよと友人は笑って言ってくれる。

いっそ捨ててくれればいい。
こんな手紙など残さずに、斬り捨ててくれればラクになれる。




だがたとえそうされても、私は彼を待つだろう。

彼が安らぐ場所になりたい。
彼が戻ったときにおかえりただいまと言える相手でありたい。
彼が傷つき血を流したとき、世界中のどこにいても慰めてあげられる存在でありたい。



手紙に記されたたった一言が、そう祈る私を支えてくれている。




 『必ず帰る』




目の前のこの海は、きっと彼の居る場所とも繋がっているだろう。




2007/07/13 UP

『○多田ヒカル【Letters】でゾロナミ』
うーん、微妙?
まぁ歌の雰囲気ってことで……。
海賊狩りゾロと、その帰りを待つ女ナミさん。
パラレルですよ、うん。

友子さん、短いけど勘弁!

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