子。






ゾロは一人で砂浜に寝転んでいた。

ログのために2泊はすることになったこの島。
他のクルーは、街の方へと出かけて色々と買い物をしているようだった。
船番はロビン。
ゾロもいったんは街へと出たが、鍛冶屋どころか大した武器屋もなく
つまらないので船に戻ろうとしたのだが、
気付けば港とは正反対のこの砂浜に着いていたのだった。


船に戻れば多分おやつの時間。
ロビンのために、きっとクソコックは早めに戻ってきて
甲斐甲斐しく紅茶やら何やらを用意してるんだろう。


考えたら小腹が空いてきたが、
それに間に合うようにまっすぐ船に帰れないことをそろそろ自覚したゾロだった。



ということで、ただひたすらに砂浜に寝転んで惰眠をむさぼる。


五月蝿いクルーが誰一人いないこの状況、ある意味最高の昼寝ポイントだ。


そう考え本格的に眠ろうとすると、ふと何かの気配を感じる。
敢えて反応はせず、相手の出方を伺う。






 「頭が緑だーーー!!!!」



その相手は砂浜に面する林から飛び出てきて、第一声にそう叫んだ。




さすがにいきなりそう叫ばれるとは思ってなかったゾロは、
目だけをちらりと声のする方へ向ける。


そこには7,8歳の少女が立っていた。
ゾロは体を起こして少女に振り返る。


自慢じゃないが、ゾロは凶悪面だ。
加えて今は寝起き。
子供ならば大概は泣き出すかビビるかはするはずだ。
しかしその少女はそんな様子はカケラもなく、
ただ嬉々としてゾロ(の頭)を見つめていた。

ゾロも思わずその少女をじっと見つめてしまった。
少女がビビらなかったからではなく、
その髪の色が、毎日見ている色にあまりにも似ていたからだ。


オレンジ頭の少女は、そのまま笑顔で砂浜を走ってゾロに近づいてきた。




 「お兄ちゃんの頭、ユイにそっくりだよ!」


いかにも子供らしい、唐突なセリフ。


 「・・・ユイって誰だよ」

 「あ、ユイはね、私の友達!」

 「へぇ」



とりあえず聞いてはみたものの、ユイとやらに興味があるわけではないので素っ気無い返事になってしまった。



 「キレイな色だよね。緑色って」

 「おれの知り合いには、お前みたいな頭のヤツがいるぜ」


元々ゾロは子供が嫌いなわけではない。
話しかけられればついつい返してしまう。


 「へぇー!女の子?男の子?何て名前?」

 「女。ナミ、だ」

 「ナミちゃん!あ、お兄ちゃんの彼女だ!!」

 「・・・・・マセガキが・・・・」

 「当ったりーー!!!美人?美人?」

 「・・・・・・・・・まぁ、」

 「わー!ノロケだ!!見てみたいなー」



初対面でこのフレンドリーさは何だ?と思いつつも、
邪険にできないのはこの色のせいか、などと考えながら、ゾロは言う。


 「明日なら、会えるかもな」

 「明日?明日もここに来るの、お兄ちゃん?」

 「あぁ、明後日まではこの島にいる」

 「わー!!会わせて!!私もユイ連れてくるよ!ね!」

 「・・・あぁ」


テンションが上がって飛び跳ねる少女に苦笑しながら、ゾロは返事をする。


 「私はカエデ!お兄ちゃんは?」

 「ゾロ、だ。ロロノア・ゾロ」

 「じゃあね!ゾロ兄ちゃん!また明日!!」

 「あぁ」


そうしてカエデはまた林の方へ走っていった。


 「あ、おい、カエデ!」

 「何?」

 「・・・・港はどっちだ?」










翌日の夕方、ゾロはナミに適当な説明をしつつ、昨日と同じ砂浜にやってきた。
かなりの『適当な説明』だったのだが、
ナミはゾロと2人で出かける、というのが嬉しくて、素直についてきた。
もちろん『ついてきた』とは言っても、砂浜に辿りついたのは
ゾロの周囲の記憶から割り出す、というナミの相当の努力によるものだが。



 「で、結局この砂浜が何なの?誰かと会うんだっけ?」

 「あぁ、カエデとかいうガキと、あと一人」

 「何で?」

 「色が同じだから」

 「・・・やっぱり訳分かんないわ」


ゾロの説明する気があるのか無いのか怪しい返事に、
ナミは唸るしかなかった。





 「ゾロにぃーーーちゃーーーーーん!!!」

 「あ、あれだ、あれ」

 「・・・あの子たちの髪の色・・・私たちと同じね」


昨日と同じように林を抜けて砂浜を走るカエデと、ユイ。
見覚えのあるオレンジと緑の組み合わせに、ナミも思わず笑ってしまった。




 「この子がユイよ!あなたがナミ姉ちゃん?」

 「そうよ、あなたがカエデちゃん?よろしくね、ユイくんも」

 「よろしく!ユイ、あんたも挨拶しなさいよ!」


ユイと呼ばれた緑頭の少年は、カエデより幾分小さい、大人しい子供だった。


 「・・・こんにちは」

 「へぇ、本当に同じ色だな」


ゾロは珍しそうに見下ろしながら呟いて、ユイの頭をガシガシと掻いた。
何故かユイは真っ赤になって俯いてしまった。






それから4人は、カエデが持ってきた果物を、砂浜に座り込んで食べた。
その後は、何故かゾロによる木の枝を使ったユイへの『刀の振り方』講座が開かれたり、
ナミによるカエデへの『雲と風の読み方』講座が開かれて、
子供2人はビシビシしごかれていた。


しばらくそうしていたが、さすがにユイがへばってしまったので
再び砂浜に並んで腰を落ち着ける。


 「ゾロ兄ちゃんたちは何してる人なの?」

 「えーと・・・、旅してるのよ」


さすがに堂々と海賊です、とは名乗れなかったので、ナミは適当に濁しておいた。
それに、嘘は言ってない。


 「2人で?」

 「いや、あと・・・5人いる」

 「いーなー、みんなで楽しそう」

 「そうね、まぁ色々ありすぎるけど、楽しいわよ」

 「自分たちの船で旅してるの?」

 「そうよ」

 「見たいな!!ダメ?」

 「・・・いいわよ、でも今日はもう遅いから、明日ね」


海賊旗さえ隠してしまえば、メリー号は単なる旅の船に見えるだろう。
そう考えてナミは笑顔でカエデに言う。


 「え?もうそんな時間?」

 「やばいよカエデ、園長先生に怒られるよ」

 「園長先生?」


普通は『ママ』とか『パパ』とかだろうに、『園長』という単語に引っかかって、ナミは聞き返してしまった。


 「うん、ぼくたちが住んでる施設の」

 「私たち、両親いないから。海賊に殺されて」

 「海賊・・・・・・」


 「ナミ」


青くなって固まるナミの肩を、ゾロが抱く。


 「あ、すごく小さい時だからあんまり覚えてないし、
  友達とかいっぱい皆で暮らしてるから、全然平気だよ?」

 「・・・・」


屈託なく笑うカエデの顔をただ見つめるだけで、ナミは返事をできなかった。


 「じゃあね!ナミ姉ちゃん、ゾロ兄ちゃん!明日船見せてねー!!」


ユイとカエデは、時折振り返って大きく手を振りながら、林の奥へと走っていった。






 「・・・・・どうしよう」

 「何が」

 「船、どうしよう」

 「旗隠せば大丈夫だろ」

 「でもルフィとか絶対に言うわよ!それに帆張って、とか言われたら、」


正直さっきまでは、海賊だと白状してもこの子たちなら大丈夫だろうと思っていた。
でも両親の話を聞いた今では、自分たちが海賊であるとは、とても言えない。


 「どっちにしろ、明日は出発だ。言うか、上手く誤魔化すか、だな」











そして、翌朝。

ゾロとナミはあの砂浜にやってきた。


どうしようどうしよう、とナミは唸りながら歩いている。
昨日の夜も一人で唸っていて、ゾロは相手をしてもらえなかった。


砂浜にはまだ、あの2人の姿はない。


 「・・・まだ早かったか?」

 「うーん、あ、来た」


カエデとユイが、こちらに向かって全速力で走ってくる。
その表情は固い。


 「・・・どうしたんだろう・・・・」


 「ゾロ兄ちゃん!ナミ姉ちゃん!!逃げて!!戻って!!!」

 「え?」


走りながらカエデが叫ぶ。ユイも逃げて、と叫んでいる。


 「海軍だよ!海軍!」

 「・・・・・・・・海軍!?」

 「早く早く!船どこ!?」

 「港の端に・・・・・」

 「じゃあまだ間に合うかも!!早く!!!」


2人の元に叫びながら走ってきたカエデは、ナミの手を取って港の方へと引っぱった。


 「林の中の近道知ってるから、急いで!」


再び林へと走り出すカエデとユイの後を、ナミとゾロも急いで追う。


 「カエデ、知ってたのか?」


林の中を走りながら、ゾロはカエデに聞く。


 「ゾロ兄ちゃんたちが海賊だって?知ってたよ?」

 「何で・・・・」

 「ユイがね、ゾロ兄ちゃんの手配書持ってるの。ファンなんだよ」


ゾロがちらりとユイに目を向けると、ユイは真っ赤になってカエデに「言うなよ!」と怒っていた。


 「でもあなたたち、ご両親を・・・・」

 「うん、殺されたよ。でもゾロ兄ちゃんたちじゃないじゃん」

 「ぼくたち、父ちゃんと母ちゃん殺した海賊は嫌いだけど、ゾロ兄ちゃんたちは、好きだもん」

 「ユイ・・・・」

 「今の子供って、結構割り切ってるんだよー?とりあえず早く港!」



メリー号に着いたゾロとナミは急いで出航の準備をする。
カエデとユイは少し離れて、メリー号を嬉しそうに見上げていたが、
海軍の声が聞こえてきたので、急いで港から離れた。

海軍連中の叫び声を背に、ルフィは戻ってきた。
案の定、船長殿が町で騒動を起こしてくれたせいで、海軍に見つかったらしい。
他のクルーも騒ぎに気付き急いで船に戻ってきていたので、
ルフィが飛び乗った途端にメリー号は出航した。


 「あんたのせいで、ろくにお別れもできなかったじゃない!バカ!」

 「悪ぃ悪ぃ。お別れって、誰とだ?」

 「あんたにゃ関係ない!」


悪びれた様子もないルフィに、ナミの鉄拳が下る。


島をぐるりと回るように離れると、
さっきまでゾロ達がいた砂浜が見えた。



 「なぁナミ、誰かこっちに手を振ってる子がいるぞ?」


チョッパーが言う。



手を振る、2人の子供。

カエデとユイ。



それを見たナミは、自分と彼女たちのまわりに海軍の姿がないのを確かめてから、大きく手を振り返す。

気付いたゾロも手を振りこそはしなかったが、
ナミの隣で軽く微笑んで砂浜の2人を見つめていた。









 「強い子たち、だったね・・・」

 「あぁ」

 「子供、女の子と男の子、両方欲しいなぁ・・・」

 「・・・・・・・・・・は?」

 「何よ、私が子供産んじゃダメなの」

 「別に・・・」

 「何その自分には関係ない、みたいな言い方」

 「男でも女でも、剣は教えるからな」

 「・・・・・じゃあ私は、航海術教えるわ」


ゾロの言葉にナミは嬉しそうな顔をする。


 「才色兼備、文武両道。完璧ね、私たちの子供って」

 「・・・・だな」


何て芸のないタイトル。。。
浮かばなかったの!うるさい!(逆ギレ)
カエデとユイという名前は某漫画の出てくる人の名前です。
その漫画では仲良しさんではないですが。
カエデも男ですが。
日本語っぽくても片仮名でイケて性別どっちもありな名前、を考えたらこの2人になりました。
あぁ、自分で考える気なんざこれっぽっちもねぇよ。
子供の名付け親にはなれないmariko。

2005/03/18

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