白。







はぁっと白い息を両手に吐きかけると、彼女が駆けてくるのが見えた。

鼻の頭を少し赤くして、道路を挟んだ向こう側で信号待ちをしている。
目が合うと顔の前で両手を合わせ、ごめんなさいと口を動かす。
その姿が何だか子供っぽくて、思わず笑ってしまった。


青信号に変わり小走りに駆けてくる彼女へ腕を伸ばし、冷えたその手を包み込んだ。
12月の指すような冷たい空気の中でも、おれたちは手袋はしない。
いつでも互いの温もりを感じていたかったし、
凍えたその手を温めるのを互いの役目にしていたからだ。

手を繋いで隣り合って、家までの道を2人で歩く。


もうすぐ1年だねと唐突に呟くと、彼女は少し考えてそうねと答えた。
それから二度目の冬ねと言って、いつもの大人の笑みを見せた。
彼女がすぐに分かってくれたことが嬉しくて、おれも同じように笑ってぎゅっと手を握った。

白く細い彼女の指は、力を入れれば簡単に折れてしまいそうな気がした。
だがそれでも、思いを込めて強く握る。

人込みの中でもはぐれてしまわないように。
この手が離れてしまわないように。

彼女もそれに応えてくれるので、おれは嬉しくなってまた笑う。


交差点で信号待ちをして、ふと顔を上げると灰色の空が目に飛び込んでくる。
雪が降りそうだ。
そう言うと彼女も顔を上げ、テレビで言ってたわと答えた。
へぇと答えて、じっと空を見つめる。
その間に信号が変わったらしく、彼女に手を引っぱられたので慌てて歩き出した。
一緒に見たいな。
隣を歩く彼女にそう言うと、またすぐに彼女はきっと見られるわと答えた。

今年最初の雪を、2人で一緒に。



もうすぐおれの家に着く。
家の引き出しには、彼女には内緒の贈り物が隠してある。
その傍らの壁にはカレンダーがあって、おれは何度もその数字を追ってきた。

2人の記念日まで、あと少し。

彼女は驚くだろうか。
早くその顔が見たくて、何度も何度も日付を目で追って、
何度も何度も小さな贈り物を取り出しては確認した。

記念日まであと少し。

そうして今日がやってきた。



今日彼女が部屋に来たらおれはそれを取り出して、そして彼女の指に通すのだ。

あのシルバーの細いリングは、彼女の白い指によく似合うだろう。


2人の記念日である今日この日。
彼女の細い指がそれを受けてくれたなら、
おれは赤く染まった彼女の頬にキスをしよう。

とびきり甘い、キスをひとつ。



また顔を上げると、空から白く淡い雪がふわりと舞い降りてきた。
横を見ると、同じようにそれに気付いたらしい彼女と目が合った。
彼女は微笑んで、ほらね?と言った。



2人で同じ空を見上げて、
2人で同じ雪に触れて、
そして2人で家に帰ろう。


君の喜ぶ顔が見たいから。




2007/03/30 UP

サン誕第3弾。
良かったねサンジくん、何だかようやく報われてるよ!!!
相手は…まぁロビンちゃんでもナミさんでも誰でも(適当)。
皆さんは誰の印象を受けましたか?

サスケ『12月のリング』より。

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