熟。










結婚して何年、経っただろうか。


最初の数年は、結婚記念日にはそれなりのお祝いをしていた。
ホテルのレストランに行ったり、自宅で豪華な夕食を作ったり。
お互いにプレゼントを用意したりもした。

ゾロは昔から、自分の感情を口にするほうではなかった。
結婚したのも成り行きに近かったし、記念日の日だって特別に何かを言ってくれることはなかった。

それでも気持ちは伝わっていたし、その日を覚えていてくれるだけで充分だった。



子供たちが生まれてその世話に手一杯になって、
その子たちが成人してようやくまた2人きりの生活になったけど、
いつの間にか忘れられた記念日のお祝いはもう戻ってはこなかった。

いつの間にか男と女ではなく、ただの父と母になっていて。



今さら愛の言葉が欲しいわけではない。
今までだって、ロクにもらったことは無いのだ。

だからそんな言葉を求めることはやめたし、浮気されたこともないからそれでいいと納得していた。



そう、そんなもの、今さら。












夕食後、お茶を飲みながら2人でぼんやりとテレビを見ていた。

ゴールデンタイムの特番で、クイズ番組のような、4択の問題を出していた。
一番良いと思われる夫の答えはどれか?

その問題を見ながら、ふとゾロに聞いてみた。




 「ゾロはどうする?」

 「あ?」

 「『浮気現場を見られたら』ってヤツ」

 「ンな場面は無い」



新聞を広げながら、ゾロはあっさりと返す。
確かに無かったけど、今聞きたいのはそういう答えではない。



 「もしもの話でしょ」

 「うるせぇなぁ」

 「……答えてくれたっていいじゃないの」



じろりと睨みながら言うと、ゾロは溜息をついて顔を上げた。
目が合って、口を開く。



 「あのなぁ、お前だけでもういっぱいいっぱいなんだよおれは。
  今さら他の女が入るスペースなんざ残っちゃいねぇよ」

 「………質問の答えになってない」

 「うるせぇ、質問の方がおかしいんだ」




ゾロはそう吐き捨てて、また新聞に目を落とす。


頬がほてるのを感じながら、恥ずかしさを誤魔化すようにまたテレビに目を移した。




既に次の質問が始まっていた。
川で溺れた妻と子供、どちらを助けるか?というものだった。



 「ねぇゾロ、この質問は?」

 「あぁ、またかよ?」

 「いいから! どっち」

 「お前」



即答されて、思わず固まる。

私なら、悪いけど夫ではなく子供と断言するだろう。




 「そりゃ、実際なら両方とも助けてやるぜ?」




言葉の出ない私に構わず、ゾロは自信満々の顔で続けた。




 「でもな、どっちをって聞くなら、おれはお前だな」

 「…血の繋がった自分の子供よ?」




子供、と答えてほしかった。

女は確かに自分の腹を痛めて産んだ子だが、男の方はそうではない。
まさか今になっても自分の子供という実感が無いとでも言うのだろうか。




 「お前は血が繋がってない」

 「あたりまえじゃない」

 「だからだよ」

 「……どういうことよ」

 「男にとって女房ってのはそんなモンだ」

 「……意味分かんない」



首をかしげると、ゾロは新聞をテーブルに置いた。
お茶を一口飲んでから、目を合わす。



 「男女平等の時代に言ったら怒るかもしんねぇけどな、
  嫁にもらうってことは、そいつの人生を全部自分に預けてもらえるってことだろ?
  こっちはそれだけ責任があるんだ。 だから死ぬまで男は誰よりもその女を守るんだよ」

 「………」

 「分かったか?」

 「……分かった」






今さらそんなセリフ吐くなんて、卑怯だわ。




出逢ったころの若さも、肌のツヤも張りも、もう無くなってしまったけれど。

想いや情熱なんかは意外と残ってるもんなのかしら。



とりあえず、来月の結婚記念日は久しぶりにパーティーでもしようと、ナミはこっそり心に決めた。




『熟年夫婦、醒めつつあったけどふとしたきっかけでまたラブvに』
一気に年取ってもーた!!!
熟年夫婦の経験どころか新婚の経験も無いよmariko!!!(笑)
でも半分実話v(笑…?)
両親との会話もネタにする女。

10/18にリクくれたnamiさん、これ…何か違うね…うん…。

2006/12/26 UP

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