誤。









 「あーーーー、島はまだかなー」

 「何だ、食糧足りねぇのか?」





見張りを終えたゾロが夜食の皿をキッチンに戻しに来ると、
椅子に座って一服していたサンジがボソリと一人ごちた。




 「ちげぇよ、そのへんはバッチリだ」

 「じゃあ何か要るモンでもあんのか?」

 「ンなの、決まってんだろ」




皿をシンクに置いて、サンジの傍を通り過ぎながら尋ねたゾロに、
サンジはニヤリと笑いかけた。




 「女だよ」

 「………エロコックが…」

 「なんだよ! 普通だろーが!!」



溜息をつきながらのゾロの言葉にサンジは立ち上がって抗議する。
ゾロはそれも相手にせず、ワインラックから勝手に酒を選び始める。



 「あ、コラ! 勝手に呑むな! 呑むなら寄越せ!」

 「…何だ、呑むのか?」

 「呑まねぇとやってらんねぇ」

 「……」



ゾロは仕方なくグラスを2つ出して、酒を抱えてテーブルについた。
サンジはゾロから酒瓶を奪い取り、2つのグラスに注ぐ。

手を伸ばすと、先に取ったサンジが自分のグラスを掲げてきたので、
ゾロは仕方なくカチリとグラスの端を合わせた。



 「何の乾杯だよ」

 「別に、何となくだ」

 「あ、そ」

 「あーー、しっかし……」

 「…何だよ」



ぐいとグラスを傾けたサンジは、一気に中身を呑み干してから呟いた。
その姿にゾロは片眉をあげ、自分もグラスを空ける。





 「ヤリてぇなー」

 「………」



サンジの発言にゾロは溜息をつく。
瓶を取って手酌でグラスを満たし、差し出してきたサンジのグラスにも注いでやる。

サンジは再び一気にグラスを空けて、大きな息を吐いた。



 「ナミさんやロビンちゃんに迫るわけにゃいかねぇからなぁ」

 「ナミに迫ったら殺すぞ」

 「けっ、ベタ惚れかよ剣士サマは」

 「うるせぇ」



即答したゾロに、サンジはニヤニヤとした笑顔を送る。
ゾロは相手にしないと決めたのか、サンジの正面から体の向きをずらして座り直した。





酒2杯一気呑みで早くも酔いが回ったのか、
赤い顔をしたサンジは笑いながら手を伸ばし、ゾロの肩を指でビシビシと突付く。



 「じゃあさ、お前ヤラせろよ」

 「……はぁ!? 何でそうなる」

 「ナミさんに突っこんでるお前に突っこんだら、間接的にナミさんとヤってる気になる!」

 「………てめぇ、相当酔ってんな…まさか一人で飲んでたか?」

 「あぁ? 文句あっか?」

 「……」



胸を張って鼻息荒く返されて、ゾロはさらに深い溜息をついた。
サンジは相変わらずダラけた顔でゾロを突付きながら、やらせろやらせろと連呼している。

うざったいその手を払いのけながら、ゾロはサンジを睨みつけた。



 「つーか、間接的っておかしいだろ意味無いだろアホかお前」

 「たまってんだよこっちは!!!!」

 「知るか! 力説すんな!!」

 「じゃあ手!!」

 「だから何でおれがやってやんねぇといけねぇんだ!!!」

 「四の五の言うな!!!」



そう叫んだサンジは立ち上がり、出遅れたゾロを床の上に引きずり倒した。
酔っ払いと油断していたゾロはあっさり組み敷かれ、サンジをギロリと睨み上げる。



 「ふざけんのも大概にしろよこの色ボケコック」

 「お前はナミさんとイイ思いしてんだろ? おれにも少しくらいそういう思いさせろよ」

 「関係無ぇだろが!!!」



酔っ払いで自制がきかない上に性欲パワーまで追加されているサンジはなかなかに強力で、
ゾロはジタバタと暴れるがなかなかその腕から抜け出せなかった。



 「離せ!」

 「いやだ! ヤラせろ!」

 「死んでも嫌だ!!」












 「……何やってんの……」

 「あ、ナミさん……」

 「………ナミ」




床に押し倒されているゾロと、その上にのしかかっているサンジの姿を、
キッチンに入ってきたナミは硬直した顔で見つめた。



さすがのサンジも酔いが醒めてしまったのか、若干青い顔でナミを見ている。
その隙にゾロは抜け出して急いで立ち上がる。
続いてサンジも立ち上がり、3人がキッチンに立ち尽くし気まずい沈黙が流れた。





 「……あんたたち」

 「誤解するなよナミ、こいつが…」

 「何だよ、元はと言えばてめぇが…!」

 「おれは何もしてねぇだろうが!」




 「そういう関係だったの?」


 「「…………」」





鼻を突き合わせて押し付け合いをしていた2人はその言葉を聞き、
揃ってぎしぎしとぎこちなく顔を動かしてナミの方を見た。

ナミはひどくショックを受けたような顔で、半泣き状態だった。



 「私、私…知らなかった…! ひどいわ!」

 「ちょ、待てナミ、違――」

 「私とゾロが付き合ってるの知ってるくせに、ひどいわサンジくん!!」

 「ち、違うんですナミさん――」

 「ゾロも、私のことは遊びだったのね!?」

 「バカ言うな!」



ナミは顔を覆ってしゃがみこんでしまった。

男2人は顔を合わせ、お前が悪いいやお前が悪いと目で喧嘩をする。

だがこの誤解は絶対に解かなくていけないので、ナミに声をかけようとした瞬間。
ガバリとナミは顔を上げ、勢いよく立ち上がった。



 「……渡さないわよ!」

 「「………は?」」

 「サンジくんにゾロは渡さないから!!!!」



涙目のナミは、目を丸くしているサンジにびしっと人差し指を突きつけて、睨みつける。
そして今度はゾロに鋭い視線を移す。



 「サンジくんよりっ、私の方がイイ女だって思わせてやるからっっ!!」



そう言い残して、ナミは駆け足でキッチンから出て行った。







残った2人は唖然としたまま、しばらく声も出せずに固まっていた。



 「……どうしよう」

 「……」

 「ナミさんにホモだと思われてしまった…!!!」

 「ホモじゃねぇか」



隣で蒼白な顔をしているサンジに、ゾロは諦め混じりの溜息をつきつつ答えた。
サンジはキッとゾロを睨みつける。



 「ホモじゃねぇ!!」

 「さっき襲ってきたのはどこのどいつだ!!」

 「だから、あれは間接的にナミさんと……!」

 「その発想がおかしいって事に気づけよ!!!」

 「うるせぇバカヤロウ!! うわーーーんナミさーーん!!!!!」





その後、2人がナミの誤解を解くのに3日かかった。




『ゾロナミ前提サナゾ甘々ギャグ』
ナミがゾロと仲良しなサンジに嫉妬する感じ、だそうで。
うーむ、マンネリな展開に……すまん!!!!
サンジくんはホモじゃないですよ、酔っ払いなだけですよ。

10/16にリクくれた方、これでご勘弁を!

2006/12/24 UP

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