読。
「じゃあ、お父さんお母さんの前で作文発表してもらいます!」
「はーーーい!!」
「一番は誰がする?」
「はい!」
「はーい!」
眼鏡をかけた優しそうな女性教師は、笑顔で教室を見渡す。
姿勢を正して椅子に座った生徒たちは我先にと一斉に右手を挙げる。
教室の後ろには、我が子の成長した姿を嬉しそうに見守る母親や父親がぎゅうぎゅうと並んでいる。
生徒のテンションが何だか上がってしまう日。
この日は授業参観日だった。
「そうねー、じゃあミラちゃん、読んでみようか?」
「はい!」
教師に指名され、緑の髪をした愛らしい容姿の少女が元気のいい返事をした。
少女・ミラは満面の笑みで立ち上がる。
「ミラだわ! どうしよう!」
「どうしようも何も無ぇだろ」
テンションが急に上がったナミは、我が子の勇姿を目に焼き付けようと身を乗り出す。
その隣でゾロは苦笑しながら、同じく目はミラに釘付けになる。
「私のお父さん! 2年3組、ロロノア・ミラ!」
ミラは腕をピンと前に伸ばして原稿用紙を広げ、よく通る声で読み始めた。
「お父さんだってよゾロ! 何でお母さんじゃないのよ!」
「まぁしょうがねぇな」
不服そうなナミを横目で見ながら、ゾロは嬉しそうにヘラヘラと笑う。
クラス中からの視線を受けながら、ミラは緊張を感じさせない声で続ける。
「私のお父さんは、毎朝お仕事に行きます。 そのとき、いつもゴミ袋を抱えて行きます」
いきなりの出だしに、ゾロはズルリと肩を落とす。
ナミは苦笑し、隣の別の母親は「いいご主人ね」とナミに話しかけている。
「私は一緒について行きます。
なぜなら、お父さんはゴミ捨て場の場所をよく分かっていないからです。
いつも捨ててるのに、いまだに自転車置き場に行こうとしてます。
だからお母さんから、ついていってあげてねとお願いされました」
ゾロは眉間に皺を寄せて、隣で笑いをこらえるナミを睨んだ。
「てめぇ…」
「ご、ごめん……っ」
ナミは必死で声を噛み殺して笑っている。
ゾロは唇を突き出すように不満を表して、改めてミラを見る。
父親の気を知ってか知らずか、ミラはしゃきっと背筋を伸ばして続きを読み上げる。
「それから、バス停まで行きます。
私の友達と一緒にお父さんをお見送りします。
お父さんは体が大きいので、バスに人がたくさんいるときはぎゅうぎゅうづめで苦しそうです」
「お仕事が終わって帰ってきたら、お母さんはお父さんを迎えに玄関に行きます。
「それから、2人はキスをします」
一瞬、教室内の空気が固まった。
だがすぐに、子供たちはキスと言う単語にきゃっきゃと喜び、
教師は困ったように笑いながらミラを見つめ、
他の両親たちは遠慮がちに笑いながらゾロとナミをチラリと見る。
「だから私も、お母さんのあとにお父さんにキスをします。
お父さんは、お母さんとは口にするのに、私とはほっぺたにします」
面白がる母親たちの視線が、ゾロとナミに突き刺さる。
今さら誤魔化そうとしても、あの髪の色を見れば誰がどう見てもミラの父親はゾロだとバレるだろう。
「仲が宜しいんですね」
「はぁ、どうも……」
話したことも無い母親から笑顔で声をかけられ、2人は顔を赤くしてそれに答えた。
それからジロリとミラの背中を睨むと、
振り返ったミラは邪気の無い笑顔を見せ、再び前を向いて続きを読む。
「それからお父さんとお母さんは、同じ布団で寝ます。
ベッドが一つだけなので、そこで2人で寝てます。
私も一緒に寝られるくらい大きいのに、2人で寝てます。
だから私は一人で寝ます。
時々夜に起きると、お父さんたちもまだ起きてるときがあります。
お父さんはお母さんと――」
「ミ、ミラちゃん」
教師が苦笑したまま慌ててミラを止めた。
ミラはきょとんとした顔を上げて、教師を見つめる。
「はい」
「今日はそこまででいいわよ?」
「まだ続きあります」
「お母さんが泣きそうだから、あとはおうちで読んであげて?」
「はーい」
ミラは素直に返事をして、すとんと腰を下ろした。
教師はほっとした表情を見せ、ふふふと誤魔化すように笑った。
他の母親たちも、微笑ましくゾロとナミを見ながら今度は遠慮することなくクスクスと笑い声を漏らす。
真っ赤な顔のナミは、穴があったら入りたいとばかりに縮こまっている。
ゾロはというと、既に開き直って堂々としていた。
ミラは一人、満足気な顔で座っていた。
『ゾロナミミラ親子のパラレルバージョン』
何を見たの、ミラちゃん。
10/13にリクくれたハルさん、こんなノリじゃダメかな…(逃)。
2006/12/14 UP
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