家。






「いて」





サンジが小さく声を出した。

夕食の準備をしていたサンジの背中に、
ルフィと遊んでいたチョッパーが、投げ飛ばされて激突してきたのだ。
その拍子に、サンジは持っていた包丁で左手を切ってしまった。





 「あああああああああ!!!ごごごごごごごごめんサンジ!!!」

 「クソゴムてめぇ!!!!」


ガタガタと尻を机の脚に隠したチョッパーが必死に謝るが、
サンジはそれには目もくれずキッチンを飛び出し、ルフィを蹴り飛ばした。


海へと消えた船長を狙撃手が救出に向かうのを確かめて、
サンジはキッチンへと戻ってきた。


 「サササササササンジ、ごごごめん」

 「気にすんな、ルフィが悪い」


ルフィへの制裁の間に、チョッパーは救急箱を持ってきていた。


 「あの、サンジ、手当てするよ!!」

 「おう、頼む」


ぱっくりと割れた左指を止血しながら、チョッパーは薬の用意をする。



 「傷塞がるまで動かしちゃダメだぞ」

 「そしたら船長が餓死しちまうぜ」

 「・・・・あんまり、動かしちゃダメだぞ!!水仕事も!」

 「大量の皿どうしろってんだ」

 「おれが洗うよ!!洗う!!」

 「・・・よし、まかせたぞ、チョッパー」





幸いにも料理はあらかた完成していたため、
サンジは左手を器用に庇いつつ、いつものように夕食を準備し終えた。

その夕食時、サンジの怪我に気付いたナミによって
船長と船医はかなりの鉄拳制裁を受けた。










 「サンジ!皿洗うぞ!!」

 「何だ、お前が今日は洗うのか?」


食事を終えて、立ち上がってシンクに向かうチョッパーを見て、
ゾロは驚いたように言った。


 「おれのせいで怪我したから・・・・」

 「へぇ、偉いぞチョッパー。どっかのゴムとはえらい違いだな」


ゾロに褒められて、チョッパーは「嬉しくないぞバカヤロー!」と踊りだす。

それを見たルフィの「おれも洗う!」という意見は、
「お前が洗うと全部割れる」とサンジに却下された。







 「よし、チョッパー頼んだぞ」

 「おう!」




人型になって、チョッパーは一生懸命に皿を洗う。
せめて拭くのでも手伝おうかと思ったサンジだが、
「安静!」と怒鳴られたために、
大人しく椅子に座って、必死な後姿を眺めていた。



 「我が子のはじめてのおつかいを眺めてるお父さんみたいよ、サンジくん」


キッチンに入ってきたナミが小声で話しかける。


 「やぁナミさん、コーヒー?」

 「今日は自分でやるからいいわよ。それに今あそこ近づけないし」


流しで皿の山と格闘するチョッパーを、ナミも椅子に座って眺める。




 「せめて皿洗いくらいは、当番制にするべきかしら」

 「おれなら大丈夫ですよ」

 「でも、いつもあんなにあるんでしょう?」


普段のサンジが手馴れた要領で仕事をこなすせいか、
あんなにも大量の洗い物が毎回出ているとは、ナミもあまり気にとめていなかった。

しかし今、皿に埋もれるチョッパーを見て、
しみじみとその仕事量に考えさせられてしまったのだ。


 「おれの仕事ですからね」

 「でも」

 「それに、作った料理がキレイに無くなって、その皿を洗うのって、
  結構気分いいんですよ」

 「・・・そう?」

 「だから大丈夫ですよ」


向かい合って座るサンジににっこりと微笑まれて、
ナミは不覚にも、頬に熱が集まるのを感じた。








 「終わったぞ!サンジ!!」


サンジのかける時間と労力の何倍もかけて、
チョッパーはようやく皿を洗い終えた。
ナミはとっくに部屋に戻っていた。


 「おつかれさん」

 「サンジは凄いなー!いつもこんなに洗ってるのか!」

 「慣れてるからな」

 「でも凄いなー」


いつもの大きさに戻ったチョッパーは、椅子に座るサンジを尊敬の眼差しで見上げる。


 「助かったよ、チョッパー」


優しく微笑んでそう言われて、チョッパーはまた「バカヤロー!」と言いながら踊りだす。


 「ご褒美に抱きしめてやろう」


両手を広げるサンジを見て、
何故かチョッパーは真っ赤になって「そんなことされても嬉しくないぞバカヤロー!」と言いながらも
サンジの膝の上に飛び乗る。

そのままチョッパーを抱えあげて、サンジは冷蔵庫に向かう。
その間にチョッパーはよじよじとサンジの肩の上に移動する。


 「何だ?明日の準備か?あんまり動かすなよ!」

 「明日の朝は軽めなのにしとくよ。まぁ明日には治ってるだろうけどな」

 「治るかっっ!!」


ツッコミを無視して、サンジは冷蔵庫を開ける。


 「ご褒美その2、だ」


奥から、小さな透明な器に入った、蜜柑のゼリーを取り出してチョッパーに渡す。


 「え!?いいのか!?」

 「あぁ、明日のデザートだ。多めに作ったからな」

 「わ!わ!本当にいいのか!」

 「静かに食えよ、ゴムが来るぞゴムが」

 「しーーーーー」


肩の上で暴れそうなチョッパーを、サンジは椅子の上に降ろす。


 「美味いか?」


さっそく食べ始めたチョッパーは、喜色満面でサンジを見上げる。


 「あぁ!!サンジは本当に凄いな!!」


素直に褒められて、サンジもつい頬が緩む。






 「あら、いいもの食べてるわねチョッパー」

 「ナミさん」


サンジがちょうど座ろうとしたとき、ナミがキッチンに入ってきた。


 「ご褒美もらったの?」

 「ああ!美味いぞ!」

 「ナミさんも食べるかい?明日出す予定だったけど」

 「いいの?チョッパーが食べてるの見たら、私も欲しくなっちゃった」

 「もちろん。今ご用意します。おれも食おうかな」


ナミに椅子を引いたあと、サンジは再び冷蔵庫へと向かった。






 「・・・・へへっ!」

 「何だよチョッパー」

 「どうしたの?」


3人でテーブルを囲んで食べていると、突然チョッパーが照れたように笑い出した。


 「何か、親子みたいだな!!」

 「・・俺が父親でナミさんが母親で、お前が息子ってわけか?」

 「ああ!」

 「・・・・・チョッパー、もっと食うか?どんどん食え!!息子よ明日は何が食べたい?」


へらっ、と格好を崩して、妙に優しくなるサンジ。
一方ナミは微妙な笑顔のまま。

今のチョッパーの発言が、ゾロの耳に入らないことを願うのみだった。
ゾロが聞いたら、
ナミもサンジもチョッパーも、何らかの形でゾロの不機嫌の被害を被るだろうから。


そんなナミの心中も知らず、サンジとチョッパーはのほほんと家族ごっこを続けていた・・・。



サン誕第2弾。
今度はサンジとチョッパーだ!あとナミさん。
チョパの「凄いなー」はゾロに対して言って欲しい言葉ですが
サン誕ですから、サンジくんも持ち上げとかなね(笑)。
ほのかにサンナミ。(笑)。
でも結局ゾロナミ。ふふ。
とりあえず、はぴぱ!サンジくん!

2005/03/04

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