張。







 「おーっすゾロ!! 遊びに来てやったぞーー!!!」

 「何だその偉そうな態度は」

 「気にすんなって!」

 「……ナミ、てめぇ……」

 「……ごめん、途中で見つかっちゃった」






この部屋の住人であるゾロの脇をすり抜け、ルフィはさっさと中に入っていく。
その後に続いて玄関の扉を閉めたナミは、ゾロの睨みに肩をすくめて応えた。

ゾロは溜息をついて背を向けて、中に戻る。
ナミも慌てて靴を脱いで後を追った。






3人は同じ大学だが、下宿しているのはゾロだけで、ルフィとナミは実家暮らしだった。
おかげでゾロの家は気付けば友人たちの集会所になっていた。
飲み会の後など終電に乗り遅れた友人たちが、2次会と称して集まってくるものだから、
ゾロは下宿生活スタートから1年後には大学から離れた所に引っ越した。

だがそれでも、集まるヤツは集まるもので。


ルフィとナミが、その例であった。







 「あーー腹減ったなーー」

 「てめ、人んちだぞ、考えろよ毎回言うけど」

 「人間腹が減ると何もできないよなー」



ゾロの言葉も無視し、ルフィは勝手に冷蔵庫を開けて覗き込む。

ルフィの大食は大学でも有名であった。
おかげで友人たちの中には、ルフィの声や来襲メールの着信を察知すると、
部屋に鍵をかけて居留守を決め込むヤツもいる。

ゾロもそうしたいのは山々なのだが、どうもこの手のタイプには弱いタチらしく、
結局いつも鍵を開けて招き入れてしまうのだった。




冷蔵庫の前でしゃがみこみしばらく動かないであろうルフィの背中を眺めつつ、
ゾロは虚しい溜息をついた。

キッチンから部屋の奥に戻ると、ナミはテレビの前に座り込んでいた。
床に直接置いたテレビにはゲーム機が接続されたままになっていて、ナミはそれをいじっていた。
ゾロも隣に腰を下ろす。




 「ゲームやっていい?」

 「お前、いっつもコレじゃねぇか」

 「だって最近のとか格闘モノとか、分かんないんだもん」



そう言ってナミは、選んだゲームのディスクを本体にセットし、コントローラーを握り締める。
ゾロにも一つ渡して、姿勢を正してテレビ画面を注視する。

画面が2つに別れ、カラフルな物体が落下してくる。
ナミは目を輝かせて手を動かし、「うりゃ!」「消えろ!」などと呟いている。

ゾロはその様子に苦笑して、同じように手を動かした。

すぐにナミの側の画面がカラフルな物体でいっぱいになり、そして黒くなった。




 「……手加減してってば!!」

 「いい加減上達しろよ」

 「もうイイ! 一人でやる! ゾロは見てるだけ!」



勝手に誘ったくせに、と反撃しようと思ったが、
ナミの反応があまりに子供っぽかったのでゾロはそのまま大人しくしていた。

コントローラーを投げ出して、後手をついて足を伸ばす。
チラリと目を横にやると、ナミは必死に画面を見ながら手を動かしていた。


大学でも隠れファンの多いその整った横顔を、ゾロはずっと見ていた。

入学してからすぐに仲良くなり、今では男女という枠を超えての友人だ(もちろんルフィも同じで)。
だがゾロにとっては。

ゾロにとっては、ナミは友人ではなかった。

初めて会ったときから女として見ていたのだろう。
だが親しくなってしまい、自分の気持ちを告げる機会を失ってしまった。


だが結局は、ゾロは今の友人としての関係を続けることにしたのだった。


……したの、だが。


いい加減我慢の限界だったりした。





ナミはゾロの気持ちを知ってか知らずか、隣の男の悶々とした空気にも気付かずゲームに熱中していた。
床についたゾロの手のすぐ近くに、スカートから覗くナミの白い足がある。
少し指を動かせば、その肌に簡単に触れられるだろう。

一瞬邪な感情が脳裏をよぎったが、ゾロはすぐに頭を振ってそれを消した。



 「ゾロ?」



視界の片隅でその頭の動きが見えたのか、ナミが不思議そうな声を出した。
顔は相変わらずテレビに向いているが。



 「……お前さぁ」

 「なに?」

 「ルフィ連れてくんなよな」

 「……何でよ。結局いつも来てるじゃない」



自分でも何が言いたかったのかよく分からなかったゾロは、ナミに問われて頭をボリボリと掻く。



 「何でって………、あいつが来ると、冷蔵庫が空になる」

 「……ふーん」

 「……だから」

 「じゃあ、今度からルフィは連れてこない」

 「…おぅ」



視線はテレビのまま、ナミは言った。
深読みせずに納得してくれたことに軽く安堵し、ゾロも答えた。


だがナミは、そんなゾロを一瞬横目で見てポツリと呟く。




 「………それってさぁ」

 「………あぁ?」

 「………」

 「………」

 「何でもない」

 「……あ、そ」





あぁもうじれってぇ、何ではっきり一人で来いって言えねぇんだ。


そう思いながら舌打ちをする隣で、




あぁもうじれったい、何で一人で来てもいいのって聞けないの


と同じように悶々している女がいることに、ゾロは気付かない。






そっちがはっきり言えば簡単なのに。


と同時に思って目が合って、2人は気まずく笑う。





背後ではそんな2人の空気を他所に、
冷蔵庫の中身を食らい尽くした「足りねぇ」ルフィが不満の声を上げていた。




『告白の言葉を相手から言わせてやろうと張り合う両想い大学生ゾロナミ』
……あれ、張り合ってない??
うん、気付いてた。
気付いてたけど、これが私の限界じゃどらくそォォォ!!!

10/11にリクくれた日菜子さん、いやもう本当スマン!

2006/12/10 UP

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