報。








 「誕生日おめでとーーーー!!!!」





キッチンに入った途端、ウソップ特製クラッカーの甲高い音が鳴り響き、
ゾロは全身にカラフルな紙のリボンを纏うことになった。






 「……あー、ありがとう」




ガリガリと頭を掻きながら、それでも祝われることはやはり嬉しく、
ゾロは素直に礼を言った。




一発目の大音響に続き、残っていたクラッカーも次々と鳴らされる。
入り口に立ったままどうしていいか分からないゾロに、チョッパーがトコトコと近づき、
紙で作ったオレンジ色の三角帽子を手渡した。



 「ゾロ! これかぶって! 主役だから!」

 「……おう」



主役だからって何で帽子だ、という突っ込みはしないでおいて、
ゾロはチョッパーから笑顔でそれを受け取り、スポンと自分の頭に乗せた。
剣士が船医に甘いというのは、この船では周知の事実だった。


そのままチョッパーに手をひかれ、ゾロはテーブルの上座に案内される。
椅子に座るとサンジがやってきてグラスを差出し、優雅な動きで酒を注いでいく。



 「今日はめでてぇ席だから、特別だぜ」



ニヤリと笑ったサンジは、ゾロにラベルを見せた。
以前飲んでみたいと呟いたことのある、珍しい高価な酒だった。

ゾロは片眉を上げてサンジに応えた。


ゾロがグラスを手に持ったのを確認して、他のクルーも席に戻り各々のグラスを掲げる。




 「えー、ゴホン、では改めて」



ウソップが長い鼻をさらに空に掲げるようにして胸を逸らし、喉の調子を整えながらグラスを持った腕を伸ばす。



 「ロロノア・ゾロの誕生日を祝しまして!! かんぱーーーい!!!」








始まってみればいつもどおりの宴会だが、さすがにこの日は少し違った。


何というか、至れり尽くせり。

ゾロの前には常に新しい料理が並び、酒が無くなれば素早くサンジが注ぎにやってくる。
ナミはゾロのために料理をとりわけ、あのルフィでさえゾロの皿には盗みの手を伸ばさなかった。

さすがのゾロも頬が緩んでしまう。



 「何かすげぇな」



隣に座るナミに思わずそう言うと、ナミはふふっと笑って答えた。






 「今日だけだから」





魔女の笑顔に、ゾロの口元がヒクリと歪む。


知らない者が見ればそれは間違いなく、『愛しい恋人の誕生日に見せる最高の笑顔』であっただろう。
だがゾロには、その笑顔に裏があることはすぐに分かってしまった。



 「明日からは断酒・連続見張り当番・買出しの荷物持ち及び甲板掃除………忙しいわよ、ゾロ!!」

 「…………」



何故かぐっと拳を握り締めて、励ますような笑顔を見せるナミの顔を見つめたまま、
ズルリと紙の帽子がゾロの頭から落ちる。



 「何遠慮してんだよゾロ、さぁ飲めとことん飲め!」

 「……」



どうやら今日の接待の代価を知っているらしく、ニヤニヤと笑うサンジの顔を、
ゾロはジロリと睨むが効果はない。

他のクルーたちを見渡すと、ニコニコと笑ってゾロに酒を注ぎ料理をとりわけ、
事あるごとに『おめでとう!』と口にする。




 「……まぁ、いいか」



とりあえず今は気分がいい。
そう思ってゾロはへっと笑い、注がれた酒を一気に飲み干した。












 「明日から大変ねー、ゾロ」

 「……どうせてめぇが発案者だろ」

 「あら、そのぶん今日の宴会は超豪華でしょ? 飲み放題だし」

 「……」



キッチンの隅に転がる空き瓶と、いまだ栓がされたままの瓶の山々を見ながら、
ゾロはまぁなと呟いて、今度は自分で新しい酒のコルクを抜いた。



 「断酒とー、見張り1週間とー、買出し荷物持ちとー、甲板掃除とー、あと何がしたい?」

 「……他は構わねぇけど、断酒だけは勘弁してくれ」

 「そんなこと言ったって、今日飲み干しちゃうんだから次の島まで無いわよ」




ゾロの動きが止まり、むぅと口を突き出して握った酒瓶を見下ろした。
その様子に、ナミは思わず噴出す。



 「私のお酒、ちょこーーーーっとだけなら分けてあげるから」

 「ケチだな」

 「何よ、文句言うならあげない」

 「ヨロシクオネガイシマス」

 「よろしい」



少し酔いの入ったナミはクスクスと笑い、
ゾロもその笑顔に釣られて笑って、結局手の中の酒瓶も空にした。









 「見張り1週間か……。 夜の、だよな?」



かなり満足行くまで飲んだのかゾロは一旦グラスを置き、椅子に背もたれてポツリと呟く。



 「うんもちろん。 そろそろ寒いからねー、夜はキツイのよねーー」

 「…………」



そのキツイ当番を、連続1週間させようとしてんのはドコのどいつだ?
そんな思いを込めつつ、ゾロはナミを横目で睨む。






 「……私も、付き合うからね」

 「……あ?」



ナミが小声で言ったその言葉を、ゾロは思わず聞き返した。


周りのクルーたちも完璧できあがっているため少々の会話は聞こえるはずはないのだが、
ナミはゾロにすり寄ってその耳元で囁く。



 「夜の見張り」

 「…………」



ふふ、と微笑んだナミは、ゾロの頬に軽いキスをして席を離れ、他のクルーたちの騒ぎの輪に入っていく。







ゾロはしばらく固まっていたが、そっと自分の頬に手をやった。
ナミの柔らかい唇の感触が、いまだそこに残っている。



 「……なるほど、な」



ニヤリと笑い、悪かねぇと呟いてまた新しい酒瓶に手を伸ばした。



どうやらこの誕生日プレゼントは、1週間は続くらしい。



『ゾロが照れつつもうれしくて幸せな誕生日をすごした話』
な、何か微妙にリクに合ってない気がするよ…(いつものこと?)
さて、この2人はデキているのかいないのか??

10/10にリクくれたnikonikoさん、これじゃダメ?

2006/11/30 UP

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