国。






 『電話が少ない?』

 「今忙しいみたいでさ…、前ほどかかってこないの」

 『ふーん』




ベッドの上に寝転んで、ナミは電話の向こうに聞こえない程度の溜息をついた。

恋人――ロロノア・ゾロが海外赴任となり遠い地へ行って以来、夜になるとつい友人に愚痴ってしまう。
最初のころは意外と平気だったのだが、時間が経つとともに妙に寂しくなってしまったのだ。
電話の向こうの友人は、独り言に近い愚痴をそれでもちゃんと聞いてくれる。




 「ノジコの彼はいつ戻ってくるの?」

 『あいつ? あいつは当分よ。戻ってくる気があるのかないのか』



友人――ノジコはケラケラと笑っている。

ノジコの恋人も、ゾロと同じように海外にいる。
写真家だか何だかで、フラフラと海外に行っては連絡もせず戻ってくるのだと言う。
この2人の付き合いは長く、ノジコはそんな恋人の行動にも慣れているようで、
ナミにとっては超遠距離恋愛における先輩のようなものだった。

ノジコの笑い声に、ナミは苦笑する。
自分はまだそこまで寛容になれなかった。



 「クリスマスは一緒に居たかったんだけど、ムリみたい」

 『向こうも慣れない海外だしね。まだ半年も経ってないんじゃないの?』

 「うん」

 『ま、しょうがないわよ。メールとか手紙とかはちゃんと来るんでしょ?』

 「うん、それは結構マメに」

 『ならいいじゃない。素直に待つ女ってのもたまにはさ」

 『そーかなー。 まぁどうしようも無いもんね、仕事なら』






電話を切って、ベッドの脇に放る。
天井を見上げながら、また小さく溜息をついた。

赴任が決まったときはもちろんショックだったが、大丈夫だという自信もあった。
寂しくなんかならないし、我慢できると思っていた。

だが。


自分がこんなに女々しいヤツだったなんて。


あーーもう、とナミは一人呟いて、起き上がる。



テーブルの上に広げられた雑誌。
クリスマス特集だか何だかで、ホテルだのプレゼントだの、
今のナミには嫌味にしか思えない特集がでかでかと組まれている。

世間の女性は、彼氏と過ごすクリスマスの予定を考えてるのに。

私は独りで、直接渡せる保証もないプレゼントを考えるのがせいぜいだ。


乱暴に雑誌を閉じて、それもまたベッドの隅に投げた。
ボスンと音がして、傍にあった携帯が飛び上がる。



それをじっと見て、手を伸ばして掴んだ。




クリスマスは帰れるの、と。

電話を、してみようか?


向こうは今何時?
計算するのも面倒くさい。


ボタンを押しながら、ナミはぼんやりと考えた。




再びベッドの上に仰向けになり携帯を耳に当てて、しばらく待っても出る気配は無い。

当たり前だ。
今向こうは昼間、仕事の真っ最中のはず。




バカみたい、とまた独り言を言って、携帯を閉じる。
その瞬間に、着信音が静かな部屋に鳴り響いた。

ビックリして飛び起きて、画面を見る。
表示されたのは、公衆電話の文字。

今どき、しかもこんな時間に公衆電話?
疑問に思ったが、切れる様子も無いのでとりあえず通話ボタンを押してみた。







 『……ナミ?』

 「……………え?」



思わずナミは間の抜けた声を出した。
耳に届いたのは、聞きたくてたまらなかった人の声。



 『…おいナミ、聞こえてるか?』

 「……あ、うん、きこえてる…」

 『びっくりしたろ』

 「びっくりした…」

 『今、家か?』

 「家…」



驚きのあまり、オウム返ししかできていないことにナミはしばらく気付かなかった。
ゾロは気付いたらしく、電話の向こうでくっくっと笑っている。




 『じゃあ、そのままちょっと待ってろよ』



そう言って、唐突に電話は切れた。



 「………え?」




携帯を耳に当てたまま、ナミは動けなかった。



公衆電話?
てことは?


考えがまとまらないうちに、インターホンが鳴った。



まさか。
まさか。



ナミは慌ててベッドの上から飛び出して、玄関を開けた。



そこに立っていたのは。







 「………ゾロ」



半年前に、あっさりと平気な顔をして遠くへ行ってしまった恋人の姿。

半年前ぶりの笑顔で、自分を見つめてくる恋人の姿。



 「クリスマスには休み取れなくてな」

 「……」

 「早めに貰って帰ってきた」

 「………」

 「……何か言えよ」



頭をガリガリと掻きながら、ゾロは笑った。



 「……お、かえり」

 「おう」





たった半年。

半年会えなかっただけなのに。


何で泣いちゃってるんだろう。


目の前の男は、何事もなかったかのように立ってるし。
半年ぶりだっていうのに、昨日も会ったみたいな顔してるし。
半年やそこらで変わるわけもないけど、その笑顔とか肌の温度とか声とか、全然変わってない。


……私がこんなに感動しちゃってるっていうのに、
平気な顔のこの男にちょっとムカついたりもして。


ナミはそう思いながら、
とりあえず半年分、思いっきり抱きついておいた。










それから1時間後の会話。



 「お前、パスポート持ってるよな?」

 「え? うん、確かまだあるはず」

 「クリスマスにはお前がこっちに来いよ」

 「………え!?」

 「ほれ、チケット」

 「ちょ、ちょっと待ってよ!いきなり言われても」

 「どうにか有休取れ」

 「えーー!!」



以来、頑張って有休のために働くナミでありました。



『仕事で外国に行ったゾロ、逢いたくても逢えないナミ。最後は帰国してラブラブ』
なんていうか、スランプですハイ。
オチが…オチが……!!!!orz
そしてタイトルの芸の無さは何だ!!!(笑)
私はパスポートすら作ったことがございません。
ゾロは一体どこで何の仕事をしてるのか?
……知るか!!!(えーー)

10/9にリクくれた春さん、……ごめんなさいーー!!!

2006/11/28 UP


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