揺。







 「ねぇ、ナミさんはおれと付き合ってるんだよね?」




笑いながら、何の脈絡もなく男は傍らの女にそう尋ねた。




 「…そうよ、何言ってるのサンジくん」




女はどこか不自然に笑いながら、だが滑らかな声で答えた。




 「ナミさん、おれのこと好きかい?」

 「好きよ」

 「じゃあゾロは?」

 「……え?」

 「ゾロのことは好き?」

 「…もちろん大事な仲間だもの、…好きに、決まってるじゃない」

 「…そういうことじゃないって、分かるだろ?」

 「……」

 「…変なこと聞いてごめんよ」




男は優しく微笑んで、女の額にキスをした。




 「おやすみナミさん、愛してるよ」

 「…おやすみ、サンジくん」


















 「ナミ」



船首のメリーの横に立って海を見ていたナミに、ゾロが声をかける。



 「針路は?」

 「うん、しばらくはこのままで大丈夫よ」

 「そうか」



ゾロはナミの隣に立って、同じように海を見る。
その顔をチラリと見上げて、ナミはまた海に目を戻す。


風を受けて、ナミの髪がふわりと乱れた。
片手でそれを直すと、ゾロの腕が伸びてきてナミの髪に触れる。



 「…自分で直すわよ」




ゾロは何も答えず、無言でナミの横髪をすくって耳にかきあげた。
そのまま、その大きな手のひらでナミの頬を包んだ。
親指の腹でナミの白い肌を撫でる。




 「ゾロ」

 「……」

 「ゾロ、離して」

 「いやだ」



刺すように自分を見つめてくるゾロから視線を外すことができず、
ナミはじっと睨み返した。



 「……キッチンから、ここは見えるのよ」

 「…知ってる」

 「なら、離して」

 「いやだっつったろ」

 「ゾロ…!」



戸惑ったナミの顔を、ゾロはじっと見つめる。
ナミは顔を歪めて、それでもやはり目は反らさない。



 「嫌なら突き放せ」

 「……」

 「それができねぇんなら、受けいれろ」

 「ゾロ」




ナミは動かない。
今にも泣き出しそうな顔をしているのに、それでも強気にゾロを睨みつける。








 「ゾローーー!! どこだーーー!!!」



後甲板からルフィの声がして、バタバタと駆ける音がする。

ゾロはゆっくりとナミの頬から手を離し、『ここだ』と答えた。




 「何だ、ナミもいたのか!」



ルフィはいつもの笑顔で、メリーの横の2人を見上げながら叫んだ。



 「ゾロ、でっっけぇ魚釣れたんだけどよ、糸が絡まっちまったんだ! 斬ってくれ!!」

 「そんなくだらんモン斬らせんなよ」




ゾロはそう言いながらも、素直に階段へ向かって歩き出した。
離れる間際、俯いて立ち尽くしているナミの手に微かに触れる。


ナミはぎゅっと唇を噛んで、また海を見つめた。



キッチンからの視線を感じながら。











甲板を横切りながらゾロは頭をボリボリとかく。



 「糸ぐらい、てめぇで斬れんだろ」

 「まぁそうだけど、おれおっさんと約束してっから」

 「約束?」



隣を歩くルフィを見下ろして、ゾロは尋ねた。
ルフィは頭の麦わらを押さえながら、ゾロに向かって笑顔を見せる。



 「ナミを泣かすな、ってな」

 「……」



ゾロは目を見開いてルフィを見つめ、それから苦笑して視線を前に戻した。



 「お前らしくねぇよなー、あの2人が困るようなことするなんて」

 「仕方ねぇだろ」

 「ふーん、そんなに欲しいのか」

 「………あぁ」



ルフィはそこまで言って、先に後甲板まで駆けて行った。
ゾロもゆっくりとその後を追って歩く。
階段を上りきったところで、キッチンの扉が開いた。

中から出てきたサンジが、ゾロと一瞬の視線を交わす。

だが互いに言葉を発することは無い。



その視線に混じるのは、嫉妬か憎悪か、それとも共鳴か。












罪なのは、

貴女のその美しさと、

揺れる心と。



それを責められぬ、自分の弱さ。




『ゾロ・ナミ・サンジの三角関係』
矢印はお任せとのことなので、
サンナミに横恋慕なゾロにしてみました。
何気にサンナミは苦手なのです。
サンジくんを苛めたい人なので、私。
てことで、やっぱり今回もサンナミと言いつつ可哀想なサンジくん。
サンジくんファン、サンナミ好きさん、ごめんなさい!!!!

10/3にリクくれたあきえさん、こんなノリでも良かったでしょうか……。
結局ベタにシリアスです…。

2006/11/16 UP


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