縋。





床と壁と天井の境目を見失うほど、眩しいくらい真っ白な部屋にゆっくりと足を進める。

ようやく見つけてようやく辿り着いたその部屋で、白いベッドの白いシーツに女は横たわっていた。






これが生きていると言えるのか?
その体からは何十本ものチューブが伸び、やたらと巨大な箱に繋がれている。
何の感情も存在しない、無機質なその箱が無理矢理にこの体を生かしている。


これが人の姿か?
微かに開かれた目は空ろで何も見ていない。
目尻に溜まった目やにすら取ってくれる者はいない。


ただ、生かすだけ。



これはお前の望む生き方か?





  ゾロ、私はここにいるよ





それでもお前は生きているというのか?
こんな形で、こんな、哀れな姿で。

それでもなお、お前はこの姿を望むのか?





  ゾロ、私を見て





生きてさえいてくれれば、それでいいと思っていた。
再びこの腕に抱くまで、生き延びてさえいてくれれば。

必ず助けに来ると誓った。
だが、こんな姿になることを望んだわけではない。
こんな無様に生かされることを望んだわけではない。

あの太陽のような笑顔はもう無い。
その目がおれを見ることは無いし、
その手がおれに触れることも、その唇でおれに口付けることも、
何一つ、お前はもうできないんだ。





  ゾロ、私はここにいるよ





目を開けると、ナミの姿があった。


体中を覆い尽くすようなチューブも、不快な電子音を発する機械も、何も無い。

ナミだけが。

白くなめらかで、純粋で美しい、おれの知っているナミの姿があった。
この世界でただそれだけが唯一の光であるような、ナミの笑顔がそこにあった。





  ゾロ、私を感じて





どくん、と心臓の音がする。

これはナミの音。
ナミが生きている音。

無理矢理に生かされていても、だが確かに刻む小さな小さなナミのいのちの音。





  ゾロ、私はここにいるよ





おれの心臓の音と、ナミの音が重なる。

どくんどくんどくん。

2つの心臓が同じリズムを刻み、やがてひとつになる。





  ゾロ、私はここにいるよ





あぁそうだ。
お前はいつもここにいた。

おれと共にこの世界を走り、おれと共にこの世界が終わるのを見た。
おれの聞くものを聞き、おれが思うものを思った。

お前は、お前の心は、いつもおれと共にあったのに。



それでもおれは、諦められなかったんだ。
お前の体を失うことを、考えたくなかったんだ。

お前をこんな姿にしたのは、おれ。
お前をこんな風にしてまで生かし続けているのは、おれ。





  ゾロ、私はここにいるよ





体は死んでも心は死なないと言った、あのときと同じ顔で、
目の前のお前は笑っている。


ごめんな、ナミ。
いつまでもいつまでも、こんな汚れた世界に縛り付けて。

失いたくなかったんだ。
この手に触れる確かなものが欲しかったんだ。

許してくれ。





  ゾロ、私はいつも、ゾロといるよ





おれもきっと、すぐにお前の傍に行くから。

だから。

だから。


今は、さよならだ。





  ゾロ、私を感じていてね





途切れなく、長く長く続く電子音とともに、天使のように笑ったナミの姿は消えた。





・・・な、なにコレ?(自分で書いといて)
あのねー、ちょっとイライラすることがあってねー、
そしたらこんな死にネタが浮かんでね。
あは。
ご、ごめんなさい。
時代的には近未来?
世界が崩壊したあと、みたいな?
え?なに?(自分でも意味不明)

タイトル潰れてるね。『縋(すがる)』です。
うん、いいのが思いつかなかったの!!

2006/10/19 UP

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