自爆70000代理ゲッター、マキさんとAIさんへ愛をこめて。

罠。






微かな話し声が聞こえて、ゆっくりと目を開けた。

見張り台で胡座をかいたまま大きく伸びをして、目をこする。
どうやら寝ていたらしい。
まぁいつものことだが、前方の暗闇に目をやると別に異常も無いのでヨシとする。
第一何かありゃ、すぐに目が覚める。


立ち上がり、甲板を見下ろす。
キッチンの窓から微かに降る明かりの中、人の形がぼんやりと見えた。



話し声の主は、ナミとコックだった。


声を潜めて話しているらしく、さすがに内容までは聞き取れない。
手すりに両手を置いて黒い海を見ているナミのすぐ隣、近すぎるくらいの距離にコックは立っている。

その手がナミの肩に乗った。
ナミは抵抗するそぶりも見せなかった。
普段なら、ああいうコックの行動はさり気なくかわしているのに。
それどころか、少し首を傾けてコックの肩にもたれる仕草までしている。



付き合って、いるのだろうか。



野暮だとは思いながらも2人から目を逸らすことができず、気配を消してそのまま見下ろす。
胸の奥が何かモヤモヤするが、気にせずにいた。

2人はまた二言三言ささやかな言葉を交わして、それから・・・・・・。




キスをした。




触れるだけですぐに離れたコックは、笑ってもう一度今度はナミの額にキスをして、その場から去った。
ナミはやはり抵抗をカケラもせず、そのまままた海を見つめていた。






はっと気付いて、いつの間にか固く握り締めていた拳を解いた。


チョッパーに診てもらうべきだろうか、何となく心臓が痛い。






それからはナミの姿を見ることができなくて、
妙なモヤモヤを抱えたまま、見張り台に座り込んでひたすら時間が過ぎるのを待った。

次の見張り番はナミだ。
妙に気まずいが、仕方ない。



時間になって、甲板に下りる。

ナミはまだ同じところにいた。
何となくいつもより脆く見えるその背中に声をかける。




 「ナミ」

 「・・・・・・、もう交替?」

 「あぁ」

 「そう」



返事をしながらも、ナミは振り向かなかった。

聞いてはいけないと思いつつも、口が勝手に動いた。



 「お前・・・コックと付き合ってんのか?」

 「・・・・・何よ、急に」

 「その、さっき・・・見ちまって・・・・・」



ボリ、と頭をかいて目を逸らしつつ言ったが、相変わらずナミは海を見下ろしたままおれに背を向けていた。



 「・・・・・・気になるの?」

 「・・・・・いや、別にそういうわけじゃ・・・」



そうは答えたものの、実際は気にはなっている。
だがその理由が自分でもよく分からない。
好奇心か?
それとも・・・?

おれの答えを聞いてナミは小さく息を吐いた。
何となく、自嘲気味の笑いに聞こえた。



 「付き合ってるわけないでしょ、ばか」

 「じゃあ何で」



続きは口にするのが、何となく憚られた。

何で、あいつと?




 「・・・・・・あんたには関係ないじゃない・・・!」



急に語尾を強めて振り返ったナミは、キッとおれを睨みつけた。
その顔を見て、固まる。


泣いていた。


動けないおれの脇を、顔を隠すようにして通り過ぎたナミは見張り台に上って行った。





 「・・・クソコック・・・」



小さく呟き、ギリと歯を噛んでキッチンに走った。


















 「おい」

 「あぁ・・・見張り交替したのか、お疲れさん」



ゾロの殺気に気付いているのかいないのか、サンジは呑気な声で背を向けたままそう言って、
棚からワインを1本取り出した。



 「飲むか?」

 「・・・てめぇ、何考えてんだよ」

 「何がだよ。おれは今気分がいいんだ」



振り返ったサンジはニヤリと笑ってみせ、ワインのコルクを抜いた。
そのまま鼻歌でも歌いそうな雰囲気で、デキャンタにワインを優雅に注いでいく。



 「何でナミに」

 「ナミさんがどうした・・・」

 「・・・・・」



口にすることのできないゾロを嘲笑うかのように、サンジは顔を下に向けたまま目だけでゾロを見た。



ゾロは思わずカッとなって、サンジの手から瓶を叩き落とした。
大きな音を立て瓶は床に砕け散った。
甘いアルコールの香りがキッチンに充満する。



 「あーあー、勿体無ぇ」

 「ふざけんな!!」

 「誰もふざけてねぇよ」



ゾロはサンジの胸倉を思い切り掴み上げ、そのまま乱暴に壁に押し付けた。
睨みつけながら、低く呟く。



 「泣いてたぞ」

 「・・・見てたのかよ、ヤラシイ奴だな」

 「何考えてんだ・・・!!」



サンジはゾロに首元を掴まれたままの状態で、ポケットから煙草を出して火を点けた。
ゾロはそれを黙って睨む。



 「・・・ああいうのは、てめぇの騎士道とやらに反するんじゃねぇのかよ」

 「好きなんだよ」

 「・・・何」



眉を寄せるゾロの顔に向けて、サンジはフーーッと煙を吐き出す。
ゾロはさらに眉間の皺を深くし、乱暴に煙草を奪い取りシンクに向かって放り投げた。



 「ナミさんが好きだから、ナミさんが欲しいから、ああしたんだ。文句あっか?」

 「・・・ナミは、泣いてたんだぞ」

 「だとしても、てめぇに何の関係がある? おれがナミさんに手ぇ出すのにてめぇの許可がいんのかよ?」

 「・・・・」



ゾロは小さく舌打ちをして、サンジの首から手を離した。
数歩離れて、背中を向ける。

首元をさすりながら、サンジはゾロの姿を見つめていた。

言い返すことができずに恐らくは不機嫌な顔でいるであろう剣士の背中を見て、サンジはニヤリと笑う。




 「・・・おれがナミさんにキスしようが、ナミさんが誰とキスしようが・・・てめぇにゃ関係ねぇことだろ、なぁ?」



サンジがそう言うと、ゾロの肩がピクリと動いた。





 「・・・・・どいつもこいつも」

 「あぁ?」

 「どいつもこいつも関係ねぇ関係ねぇ・・・・、うるせぇんだよ!!!!」

 「・・・・・・」

 「関係無くねぇんだよ!!!」



ゾロは自身の感情を掴みあぐねているのか、怒鳴ったあとでまた舌打ちした。



 「・・・とにかく、今後ナミに手ぇ出すんじゃねぇぞ!!」

 「・・・へーへー」



サンジは肩をすくめて返事をして、ゾロはそれを睨みつけてからドカドカと足を鳴らしてキッチンから出て行った。





















昨日の夜はコックに自分でも意味不明な警告をしてから、
ミカン畑で一人頭を抱えていた。

おれは何を言ってんだ?

ただナミが泣いていて。
コックがナミを好きだと言って。

それがやたらにムカついたんだ。

それだけ、それだけだ。


結局そのままミカンの木に寄りかかって寝てしまったらしく、いつもよりもかなり早い時間に目が覚めた。
キッチンにはどうも行きづらかったが、喉が渇いたので仕方なく足を向ける。
願わくば、誰も起きていないことを。





願い届かず、キッチンの扉越しに話し声が聞こえた。
どうやら見張りを終えたらしいナミと、クソコック。

またムカムカとしてきた。

扉を開けるか否か迷って、しばらく動きを止める。




 「いや本当、見せてあげたかったよあの姿」

 「そんなに・・・?」



コックの笑いをこらえた声と、疑い深げなナミの声。
思わず扉に耳を近づけた。



 「だから言ったろナミさん、あいつはあれくらいしないと自分で気付かないんだって」

 「そうかな・・・」

 「いい加減気付いたと思うよー?」

 「分かんないわよ、ゾロだもん。 鈍いんだもん」

 「まぁまぁ。 しょうがないよ、・・・ゾロだもん」



ナミを真似た喋りでコックがそう言うと、二人は同時に噴出した。



 「でもあの筋トレ馬鹿が、自分から告白なんてしてくっかな」

 「そこが腕の見せ所よ」

 「ステキだナミさん! おれで良ければまたいつでもご協力しますよvv」

 「ふふ、ありがと! でも昨日みたいなのはもうナシよー」

 「あ〜〜〜やっぱり〜〜〜」






シクシクと嘘泣きするコックと楽しげに笑うナミの声を聞きながら、
ハメられた、と気付いた。

だがまぁ、結果オーライってヤツか?
悔しいことに、「いい加減」どころか今この瞬間にようやく気付いたわけだが。



とりあえずはあの演技派女優にどうやって一泡吹かせてやるか、
考えながらミカン畑に戻った。




コックばりの甘い言葉でも吐いてやったら、さぞかし面白い顔をするだろう。

覚悟してろよ、ナミ。




2006/09/17 UP

70000キリリクです。
えーー、70000を自爆しまして・・・・。
代理リクを募集しました。
有難いリクをくれたのはマキさんでした。
リクは『原作、サンジがナミにキス』
お笑い系で、ってことだったのに、何かシリアスっぽくなってます。
あらら?
リクのシーンはほんの一瞬かい!!
・・・・ごめーんねvv(誤魔化す)
その後AIさんから『ゾロsideの話も・・・』て追加リクが来ましたので、
ゾロ視点を主にしてみました。

そんなわけでお二人と、隠れ家に来てくださってる全ての方に捧げます。

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