惹。





 「ナミーーー!いつになったら島に着くんだよーー」

 「もう、しつこいわね、もうすぐだってば」



ミカンの木の下で昼寝していたゾロは、その声で目を覚ました。




 「さっきもそう言ったのに、まだ着かねえぇじゃねーか!」

 「あと2,3時間はかかるわよ! 夕方前には着くから・・・」

 「待てねぇ!」

 「知るか!」



伸びをして立ち上がり後甲板を見下ろすと、海の様子を見ているナミとルフィの姿があった。
どうやら上陸が待ちきれないルフィが、暇つぶしにナミに絡んでいるらしい。

ゾロは頭をボリボリと掻きながら大きな欠伸をして、階段を下りる。



 「あらゾロ、おはよう」

 「・・・朝か?」

 「昼よ」

 「・・・」



しれっと言うナミを、ゾロは片眉を上げて睨む。
ナミはふふんと笑って、再び海に目をやる。

風を受けて、ナミのオレンジの髪が乱れる。
片手を上げてナミは落ちてきた横髪を耳にかきあげた。
ちらりと白い首筋が見えて、ゾロはぼんやりとナミの後姿を見つめていた。

ナミの隣では、相変わらず暇そうにルフィがウロチョロしている。



 「なーなー、次の島で肉いっぱい買ってくれよな」

 「ダメよ、お金無いんだから。必要な分だけ」

 「ケチ!」

 「誰がケチだ!!」



怒鳴りあう2人の姿が妙に楽しそうで、ゾロは何故だかモヤモヤした気持ちになった。

いつものようにナミの拳骨が炸裂し、ルフィは頭を押さえてしゃがみこむ。



 「大人しくしてなさいったら、まったく!」

 「このやろう!」



ルフィはそう叫んで、腕を伸ばしてナミの体に巻きつけた。



 「きゃ!?」

 「これでもう殴れないぞ!」



ふふんとルフィは得意げな顔で、ナミの体をその腕でぐるぐる巻きにしていく。



 「ちょ、もう! やめなさいよ気持ち悪い!!」

 「いやだ! 外したらお前殴るだろ?」

 「当たり前!!」



ナミの細い体は、ルフィの腕に巻かれほとんど見えなくなっている。
ルフィは楽しそうにきゃっきゃと笑い、
ナミも怒ってはいるものの、それは自分に体に触れられていることへの怒りではない。

ゾロはその様子を黙って見ていたが、ふと手を伸ばしルフィの両腕を掴んだ。



 「ゾロ?」



そのままゾロは、一気にその腕を広げて引っぱった。



 「きゃあ!!!」



コマの要領で、ルフィの腕はほどけ同時にナミの体がキュルルルと回転する。

伸びたルフィの腕を放り出し、ゾロは今度はグルグル回っているナミの片腕を掴む。
そのまま、自分の胸に引き寄せた。


ボスン、とゾロの胸にぶつかり、ナミは目をまわしてそのまま寄りかかる。



 「・・・うー・・・・」

 「おい?」

 「・・・んー・・・。・・・ルフィ、あとで覚えてなさいよ・・・!!」



ギロリとナミがゾロの後ろに睨みをきかせると、ルフィはさっさと退散していた。

ゾロの胸の中で『もう!』と呟いて、ナミは息を吐く。
目が回ってまだ気分が悪いらしい。

ゾロはナミの片腕を掴んだまま、もう片方の手をその背中に当てた。
そのままゆっくりと撫でる。



 「大丈夫か」

 「・・・う、うん」



思わず顔を上げたナミは、普段なら有り得ないほど近い距離にゾロの顔があって、驚いて顔を伏せた。



 「・・・珍しいわね」

 「何が」

 「あんた、こういうときって大概ルフィの味方じゃない」

 「・・・そうか?」

 「そうよ、どうしたのよ今日は」

 「・・・・何か、ムカついたんだ」

 「・・・何に?」

 「・・・さぁ?」


顔を上げて首をかしげたナミを見下ろしながら、ゾロも首をかしげた。
訳分かんない、とナミは言ってゾロから離れた。






 「おやつですよーー」



その声に2人が顔を向けると、階段を上りきっていたサンジが煙草を咥えて立っていた。



 「ありがとサンジくん! 行こ、ゾロ」

 「おう」



ナミはゾロに振り返って笑い、歩き出す。
ゾロもその後に続くが、ふとサンジを見ると、煙草を携帯灰皿に押し込みながらニヤニヤとした目でこちらを見ていた。

眉間に皺を寄せて睨み返し、気にせず足を進める。



サンジはナミが自分の前を通り過ぎる間際、再びゾロに意味深な視線を送ったあと、手を伸ばした。



 「え?」



サンジの手はナミの肩に回され、そのままナミは引っぱられサンジの胸に倒れかかった。




次の瞬間。



ゾロの手が素早く伸び、再びナミの腕を掴んだ。
先程と同じように、自分の方にぐいっと引っぱる。


唐突にサンジに抱き寄せられ今度はゾロの胸に。
意味不明に忙しいナミはクエスチョンマークを浮かべて、されるがままになっていた。



ナミの腕を握って胸に抱き寄せたまま、ゾロはサンジを睨んだ。

サンジは相変わらずニヤニヤと笑ったまま、楽しそうにゾロを見ていた。




 「お前も普通の男だったんだなぁ」

 「あぁ?」



サンジの言葉の意味が判らず、ゾロは片眉を上げる。
意味は分からずとも、何となくからかわれているのは分かった。

不機嫌な顔のゾロに抱かれて、
一方のナミはその意味を何となく理解し、顔を真っ赤にして固まってしまった。



 「おい、いい加減ナミさん離せ」

 「・・・」



サンジの言う通りにするのは癪だったが、ナミが動かなくなってしまったので、
殴られる前にゾロは手を離した。

ナミはパっとゾロから体を離し、一目散にキッチンに下りて行った。





 「罪な男だねぇ」

 「・・・何がだよ」

 「まぁ無自覚なヤツに負けるつもりは無ぇがな」

 「だから何の話だ」

 「別にーー。とりあえずおやつだぜぇーー」



ふふんと何やら楽しそうに、サンジも階段を下りてキッチンへと向かった。




残ったゾロは、首をかしげて『何なんだあいつら』と一人呟く。


毎度のことながらサンジの態度には腹が立つ。

だが。


2度この手に掴み、2度この胸に抱いた。

その感触を思い出すと、何故だか気分が良くなった。




その感情の名を知らない者は、ロロノア・ゾロただ一人。





2006/08/30 UP

『やきもち焼きなゾロ』
6/30にリクくれたnikonikoさん、・・・あれ、デキる前の2人になってしまった!
予定外!(笑)
ゴメン!

えー、無自覚でジェラシーなロロノアさんです。
ナミさんも気付いてなかったけど気付いちゃったようです。

追記。
nikonikoサマよりステキ絵をぶんどり・・・・もとい、頂きました!(笑)
宝蔵においてありますがコチラからでもどうぞ→

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