罪。








好きな相手の前で、みっともない姿を見せたいわけじゃない。

優しい優しいあの人を、泣かせたいわけじゃない。

















そりゃあね、海賊船なんて男だらけだもん。
そういうことになるのも、理解できるわ。
ずっと船の上に居て、金で買える女もいない状況なら、
男同士で代用しあうってことくらい。


でもまさか、本気になるなんて思わないじゃない。
だって、サンジくんったらあんなに女好きなのに。

なのに、何でよりにもよって、ゾロなのよ。








 「たまには男じゃなくて、女を抱きたいと思わないの?」

 「・・・・・・」



女部屋で2人きりで飲んでいる時、ふいにそう言ったナミを、
ゾロは怪訝そうな顔をして横目で睨んだ。

ソファに背中を預け、ゾロは返事をせずに酒瓶をあおる。
その隣に座るナミは、少し近づいて顔を覗き込む。

女と2人きりだというのに、ゾロは一向にナミに手を出そうとはしてこない。



 「私、とかさ?」

 「・・・・・・お前は、」



掠れた声で呟いて、のしかかってくるナミを制してゾロは少し体を起こした。
それから、自分を見つめてくる目の前のナミの頬を、両手で包む。



 「お前は、こんな事しなくていいんだ」

 「・・・なんで」

 「する必要は無い」



全てを拒絶された気がして、ナミは思わず言葉に詰まる。
ゾロはナミの頬から手を離し、ソファに座りなおした。
ナミも脱力したように腕をダラリと垂らして、ソファの上にへたり込む。



 「・・・そんなに私を抱きたくない?」

 「違う」

 「私じゃダメなの」

 「そうじゃない」



ナミは俯いて、途切れ途切れの声で言う。
ポタリとソファに小さな染みができる。
それに気付いても、ゾロはナミを抱き寄せることはしなかった。



 「ゾロが好きなのよ」

 「・・・・・・ナミ」

 「ゾロが好き」






こんな自分は嫌い。

男にのめりこんで、男に嫉妬して、女であることを利用して。

こんな自分は、大嫌い。





























最初は冗談のつもりだったんだ。
この船のレディに手を出すわけにもいかねぇし、
それならって事で発散相手に選んだのが偶然アイツだったってだけで。
アイツが女役だなんて想像するのも気持ち悪ぃから、仕方なくおれが下になってやって。

そうだ、ただの偶然だったんだ。

その場にいたから、それだけ。

それだけだったのに。



おれは女の子が大好きだし、ロビンちゃんが好きで、ナミさんが好きだ。
男なら普通は女に惚れるモンだ。
それはアイツも同じだってことを、おれは気付かない振りをしてたんだろうな。

おれはナミさんを見てたから、ナミさんが誰を見てるかすぐに気付いた。
それから、認めたくはねぇがおれはアイツのことも見てたから、アイツの視線の先にも気付いちまった。

この場合、お邪魔虫は誰だ? って話だ。
人間のあるべき形なら、当然それは男と女の組み合わせ。

でもそんなの、卑怯じゃねぇか?

だっておれの方が先に行動に移したんだぜ。
なぁナミさん、おれの方が先に、自分の気持ちに気付いたのに。

気付くんじゃなかった。
おれの気持ちも貴女の気持ちもアイツの気持ちも。
そしたらおれは、何も知らないまま図々しくいられたのに。
















 「行けよ、ゾロ」

 「・・・・・・」



後甲板で、サンジは暗い夜の海に煙を吐き出しながらそう言った。



 「知ってるんだぜおれ、お前の本心」

 「・・・お前は」

 「なぁ知ってるか? おれはお前のこと、お前よりもよく分かってんだ」



そう言いながら振り返ったサンジは、笑っていた。
ゾロはその目をじっと見つめる。
サンジは刺すようなその視線から逃げることなく、目を合わせたまま煙草をまた口に運ぶ。



 「だから、行けよ」

 「・・・・・・」

 「頼むから、行ってくれ」

 「・・・・・・悪ぃ」

 「謝んな、クソ野郎」






ゾロの消えた後甲板で、サンジは咥えていた煙草を海に投げ捨てた。



 「・・・ナミさん、出ておいで」

 「・・・・・・」



ミカン畑からナミがゆっくりと姿を現す。
手すりにもたれて、サンジはナミを見上げて笑った。



 「サンジくん・・・」

 「ゴメンとか言うつもりなら、やめてくれよナミさん」

 「・・・・・・」



軽く笑いながら、サンジは新しい煙草に火を点けて深く吸った。



 「・・・ナミさん、おれさ、女の子が大好きなんだよ」

 「・・・知ってるわ」

 「貴女のことも大好きだ」

 「・・・うん」





サンジは煙草を唇で咥え、ナミに背を向けて手すりに肘を乗せる。
まだ新しいその煙草を、指で摘まんで海に捨てた。
小さな赤い火が真っ黒な海に飲み込まれて消えるのを、サンジは無言で見送った。





 「だけど今は、貴女がものすごく憎い」

 「・・・・・・うん」



サンジの背中をじっと見つめていた視線を落とし、ナミは唇を噛んだ。



 「ごめんなナミさん」

 「サンジくんが謝るなんて、おかしいわ」

 「いいんだ、貴女にこんな感情を持っちまった自分が許せねぇから」

 「・・・・・・」

 「あんなクソ剣士に惚れちまった自分も、許せねぇ」

 「・・・・・・」



クルリと向きを変え、サンジはナミの方を向いた。

いつもの顔で、ナミを見つめる。



 「ごめんナミさん、一人にしてくれるかな? 煙草吸いてぇんだ」



つい先程、火を点けたばかりの煙草を海に捨てたのに、
サンジはそう言って困ったように笑った。



 「・・・ごめんね、サンジくん」



ナミはそう言って、ミカン畑から降りてパタパタと女部屋へと駆けて行った。



 「謝らないでと、言ったのに」



サンジは一人そう呟いて、ズルズルと甲板に座り込む。















謝るな。

謝らないで。

これは謝られるようなことじゃない。

これが普通なんだ。

割り込んだのは、おれだから。




本気になって、ごめん。

だからどうか、泣かないで。







2006/08/13 UP

『ゾロサンでナミがゾロを奪う、最後はゾロナミ』
6/21にリクくれた方、こんなんで・・・。

私はサンジくんを精神的に苛めるのが大好きです(笑)。
愛ゆえに・・・。
この3人のドロドロは、どんなCPでも大好きだ(笑)。

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