外。









 「まいった・・・船が移動したのか?」






ゾロは一人、町の大通りで呟いた。




上陸した島で、ゾロは一人で街に出てきていた。
特に目的もなくブラブラして、飽きてきたので船に戻ろうとしたのだが何故か辿り着けない。


この通りを右に行けば港に着くはずなんだがな。


ゾロはそう呟きながら、迷っている自覚もなく前進する。

ちなみに正解は右ではなく左である。






 「お・・・」




何故か自信満々で裏道に突入しようとしていたゾロは、見慣れた後姿を見つけた。


オレンジ色の頭。


存分に買い物を済ませたのか、ご機嫌な様子でナミは歩いていた。
片手に大きな紙袋を抱えて、それでもなお通りに面した店の中をガラス越しに覗いている。



 「あいつについてきゃ・・・船に着くな」





声をかければいいのだが、また『迷子』と言われるのがオチなのでゾロはこっそりと後をつけることにした。




適度な距離をあけて、ナミの後を歩く。

こうしてナミの後姿をじっと見つめていると、改めてそのスタイルの良さに気付かされた。

過去に女の経験は少なからずあるし、商売女も知っている。
そういう女はそれなりの見た目だったが若干『作られた』感があったし、第一『それだけ』の女だった。


ナミはそれに劣らぬ容姿で、なおかつ泥棒で海賊で航海士で、魔女だ。

日頃彼女に頭の上がらないゾロは、とんでもねぇ女だな、と呟いて一人笑った。


とりあえずこのなかなか良いポジションからその姿を堪能しつつ、
ゾロはナミの後ろを歩き続ける。













 「・・・6人目か・・・」



たまにゾロはナミの買い物に荷物持ちとして付き合うことがあるが、
その時は男連れだからだろうか、こんなことは無かったのだが。

女一人で歩いているナミに、声をかけてきた男はこれで6人目。

ゾロがナミを見つけてから・だから、それ以前にはもっと近寄っていたのかもしれない。



若い男はヘラヘラと笑いながらナミの肩に手を伸ばそうとするが、
ナミはスルリとそれから逃げる。
声をかけようと口を開いた別の男にはにっこりと笑顔を贈り、そのチャンスを奪う。
一瞬たりとも歩みを止めることなく、ナミはナンパ男たちをかわしていった。


全く、男を翻弄する女だな。


しつこい男だったら助けてやろうと思っていたが、どうやらゾロの出番は無いらしい。
さすがに慣れているのだろう。
ゾロは苦笑しつつその光景を見守っていた。






15人目の男は、粘りに粘ってナミと会話することに成功した。

ナミの返事は、男の期待するものではなかったが。



 『6000万ベリーくれたら付き合ってあげてもいいわよ?』



男は呆気に取られ、ナミはニコリと笑ってその隙に男の傍から離れていく。


何故だかナミの声はゾロの耳に届いてくる。

さすが魔女、とゾロは呆れつつ、それからふと言葉に引っかかった。


・・・・・・6000万?


だが深くは考えずに、ゾロはひたすらナミの後を追う。







次は4,5人の集団で、しかも揃いも揃って大柄な男たちだった。



 「・・・こりゃ、ちょっとやべぇか?」



なかなか気の短そうな連中で、ナミが冷静にかわせば逆にキレてしまいそうなヤツらだった。


図体のデカイ男たち相手でも、ナミなら恐らくはねじ伏せることができるだろう。

だがナミは街中での争いを好まない。
下手に暴れて、海軍に嗅ぎ付けられてはたまらないからだ。

だがあの人数相手で、しかも女一人では、気を利かせて誰かが海軍に通報するだろう。



男たちはいやらしく笑いながらナミを囲む。
ナミはどうするか迷っているようだった。


仕方なく、ゾロは歩みを早める。







 「だからー、ちょっとおれらに付き合えってだけだろ?」

 「忙しいのよ、私」



ナミの冷めた返事に懲りもせず、男たちはナミに話しかける。

その中に、違う声色が混じる。



 「よぉ姉ちゃん」

 「・・・・・・」



振り返ったナミの目に、緑頭に3本の刀を持った見知った顔が飛び込んでくる。



 「何だ兄ちゃん、おれらのが先だぜ」

 「そうそう、ひっこんでな」



男たちはゾロもナンパしに来たと思ったのか、うっとおしそうに手で払いのける仕草をする。
それを無視してゾロはナミに近づき、その肩にポンと手を乗せる。



 「姉ちゃん、一緒に海賊でもやんねぇか?」

 「あら、いいわね。お付き合いするわ」



ニヤリと笑いながらゾロが言うと、ナミはすぐに笑ってそう答えた。

驚いたのはナンパ男たちで、緑頭の男と腕をからめて去っていく女の姿を、
声も出せず唖然と見送っていた・・・。











 「さっさと声かけなさいよ」

 「・・・おれが後ろにいるの、気付いてたのか?」

 「うん、お店のウィンドウで見えた。迷子だろうなと思って放っといたの」

 「・・・・・・」



結局『迷子』と言われてしまい、ゾロは小さく息を吐く。





 「・・・ところで、いつまでこうしてるつもりだ?」

 「何が?」



見上げてくるナミに、ゾロは目で自分たちの腕を示す。
ナミはゾロの腕に自分のをからめたまま、ひっついて歩いていた。
片手にはナミ、片手にはナミの紙袋。
歩きにくいことこの上ない、とゾロは心中で呟いた。



 「いいじゃないの、あんたといるとナンパ避けになんのよ」

 「それなら別に隣歩いてりゃいいだろうが・・・」

 「何よ、役得でしょ?」

 「・・・・・・」



ナミはさらにゾロに体を密着させ、微笑む。



 「・・・魔女め」

 「何?」

 「何でもない」



確かにな、と小さく呟いたゾロは結局腕を振り払うこともせず、
その態度にナミも嬉しそうに笑って、2人で船まで一緒に戻った。




クソコックがうるせぇだろうな、と思いつつも、
胸の中の妙な優越感を否定できないゾロだった。




2006/08/10 UP

『ナンパされまくるナミ』
'06ナミ誕生リク13番の逆で、今度はナミさんがナンパされる側に。
6/20にリクくれた方、されまくってるシーンをカットしたヘタレmarikoをお許しください(笑)。

この2人はデキてませんよ。
普通の仲間なんですよ。
まだ、かな?
これからも、かな?

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