噤。





サンジは誰が見ても分かる通り、彼女を心底愛していて。
ルフィも仲間に入れた張本人なだけあって、彼女のことが大好きで。
そしてゾロも、無意識か否か、その視線には確かに他とは違う感情が混じっていて。


当の彼女は、その3つの視線に気付かないフリを決め込んだ。






 「だって、選べとか言われても・・・そんなのムリよ」

 「あら、そうなの」



ニコニコと笑うロビンに、ナミは頬を赤くして答えた。



 「みんな大事な仲間だし・・・3人とも私、同じように好きだから」

 「そう・・・」




彼らがが聞いたら泣くわね、などと思いつつロビンはナミを優しく見つめるのだった。













抜け駆けは無しだと、3人の間では暗黙の了解があった。
だが互いの感情を探り合うような時間が流れ、それぞれの関係が少しずつ綻び始める。

そしてそれは、あってはならない形で壊れてしまった。



敵襲を受けたとき、メリー号が誇る戦闘員たちは相も変らず最強ぶりを示していた。
ナミやウソップたちも、今回は戦闘に参加していた。
雑魚とは言え、とにかく数が多かったのだ。


倒しても倒しても湧いてくる敵たちをふっ飛ばしながら、3人は同時に気付いた。

タクトをかざして敵と対峙しているナミの背後で、別の敵がその照準を定めていることに。





 「「「ナミ!!!!」」」





3人が叫んだのはほぼ同時だった。
地面を蹴ってそれぞれナミの所へ飛んでいく。

だが、それがいけなかった。

視界の端に互いの姿を見つけ、3人が揃って一瞬躊躇してしまった。





乾いた銃声が響く。




















 「てめぇが邪魔だったんだ!」

 「人のせいにすんじゃねぇクソコック! てめぇがあんな遠くから来る必要はなかっただろうが!」

 「おれが腕伸ばせばすぐだったのによ!」

 「お前はお前で何十人も相手にしてたくせに、ンな暇あったのかよ!」

 「あるに決まってんだろ!! 第一ゾロはナミのことになると見境無くなんだ!!」

 「何だと!?」

 「ナミさんを助けるのはおれの役目だぞ!!」

 「勝手に決めんなサンジ!」



 「いい加減にしなさい貴方たち!!」



キッチンで不毛な言い争いをしていたサンジ、ゾロ、ルフィの3人をロビンは一喝する。

舌打ちをして、3人は離れて乱暴に椅子に腰掛ける。


沈黙が流れ、止めることもできずに見守っていたウソップは小さく溜息をついた。











 「大丈夫だ。 貫通してるし、すぐ塞がるよ」

 「そう・・・」



女部屋から戻ってきたチョッパーが、ふーっと息を吐きながら言った。
ロビンはほっと安堵して、それからまたキッチンの中を見渡す。



3人はいまだ顔も合わさず、不機嫌な顔で黙りこくっていた。

その様子に、ロビンは今度は怒りの混じった溜息をつく。



 「・・・まったく、どうしちゃったの?」

 「・・・・・・」

 「あの場合は、一番近くにいたルフィが手を貸すところでしょう?
  第一、航海士さんなら一人で対応できたわ」

 「・・・・・・」



ルフィたちは気まずそうにロビンから目を逸らしている。
ウソップとチョッパーは、下手に口を出すこともできずに見守っていた。
ロビンの声がかなり怒りに満ちていたせいだ。



 「あなたたちが取り合うのは勝手だけど、
  そのせいで今度また彼女が怪我するようなことがあったら・・・許さないわよ?」



3人に冷たい視線を送ってから、ロビンは女部屋へ向かうためキッチンから出て行った。














 「航海士さん、大丈夫?」

 「あ、ロビン。 今は麻酔も効いてるし平気よ、痛くない」



ベッドに横になっていたナミは、下りてきたロビンの姿を見つけて微笑んだ。
椅子を引き寄せて腰掛け、ロビンはオレンジ色の髪を撫でる。




 「今日はゆっくり休んで」

 「うん、ありがと。・・・・・・あいつら、大丈夫?」

 「・・・えぇ、とりあえずはね」



ロビンが苦笑して、ナミもそれに続く。




 「全く、あの子たちったら貴女にこんな怪我させて・・・」

 「これはまぁ、私が鈍かっただけだから」

 「・・・剣士さんも、あんな遠くから駆けつけちゃって」

 「・・・・・・」

 「空島でも貴女のこと必死に探してたみたいだし、ね。 意外だわ」

 「・・・ゾロって」





ロビンは意味深にゾロの話をする。
その顔をじとりと見ながら、ナミはシーツを引っぱり上げて口元を隠しながら呟いた。




 「ゾロって・・・、本当に私のこと好きなの?」

 「あら、そんなの貴女が一番分かってるでしょ?」

 「・・・だって、あんな筋肉バカが女を好きになるなんて・・・」



ナミは顔を赤くして、頭までシーツに隠れた。
ロビンはその様子に笑いながら、シーツを引っぱってナミと目を合わす。



 「貴女だから、でしょ? それに貴女も・・・」

 「な、なによ」

 「いいえ、何でもないわ」





自分が誰を選んでいるのか、もう分かっているはずなのに。



ロビンはそう言おうとして、止めた。




ゾロの話をするナミの顔は、嬉しそうだ。
それは他のどのクルーの時とも違う。
彼らとの出会いの話を、ナミはロビンにしたことがある。
その口調から、ロビンはおそらくはナミ自身よりも先にその感情に気付いた。

その、自覚のない恋心に。






 「・・・この船で、そんなことになっちゃダメなのよ」

 「・・・」

 「仲間なのに、みんなの船なのに」

 「・・・戸惑いはしても、きっと気にしないと思うけど?」

 「私が気にするの。 みんな、“仲間”なのよ・・・」




ナミはくるりと体を横にして、ロビンに背中を向ける。




 「だから、私は気付かない」

 「・・・・・・」




ロビンは優しくナミの頭を撫でる。





この船は居心地がいい。

少人数の海賊船だが、皆が家族のようで。

互いのことを信頼して、互いのことが大好きで。



だからこそ言い出せない。
そのうちの一人に、特別な感情を持ってしまったなど。






 「・・・貴女のすることに、誰も文句なんて言わないわ」

 「・・・・・・」

 「貴女のしたいことを、していいのよ・・・?」

 「・・・・・・いつか、ね・・・」






いつか、

その想いを受けいれて、


いつか、

その想いを口にして。




ロビンはその日を願って、ただひたすらナミの髪を撫でていた。





2006/08/09 UP

『ナミ総受、ゾロvsルフィvsサンジvsロビン』
シリアス痛め、裏ボスはロビンちゃんだそうです(笑)。
6/18にリクくれた安季さん、こんな感じじゃ・・・ダメかな・・・?

私、シリアスとかイタイの大好きなんだけど・・・何か書けない!!!
甘いオチになりそうで大変だった!!
何とかシリアスに・・・なった・・・・・・・?
なってないかな・・・。
しかもあんまり3人が対決してねぇな。
いや、ね、VSにしたら甘くなったんだ・・・(遠い目)

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