緒。






 「・・・っはーーー、できた・・・・」





なかなか強敵だった証明問題を解き終えて、ナミはうーんと伸びをした。
時計に目をやると、そろそろ日付が変わる時間。

少し休憩をしてからあと1時間くらい頑張ろう、とナミは決めて
凝り固まった背中の筋肉をまた伸ばす。


あ、と思い出して、バッグから手帳を取り出した。
今日の日記をまだ書いていなかった。




ナミは毎日、スケジュール帳に日記を書いている。
小さな文字で5行程度の、簡単な日記。
友人たちの間ではブログだのmixiだの、ネット上で日記を書いている子が多いのだが、
ナミはそれがどうも性格に合わなかった。
自分の手書きの文字で、白い紙の上に日々の出来事を綴っていく。
パソコンの画面での、機械的な文字では思い出という感じがしないのだ。






隅に小さな絵柄が入っているだけの、シンプルな手帳を開く。
この1年の、もう半分以上が埋まっている。

日記を書こうとして、何気なくパラパラと昔のページをめくってみた。


 『ビビと喧嘩した。最悪。――』


あれ、ビビと喧嘩なんてしたっけ? とナミは首をかしげる。
中学からの親友であるビビと喧嘩した覚えは、そうは無い。

その翌日の日記には、『ビビとケーキバイキング。美味しかった!来月また行こう。――』 とある。
どうやらあっという間に仲直りしたらしい。

自分で笑ってしまい、またページをめくる。


 『ゾロの大会。もちろん優勝。かっこよかった。――』

 『ゾロと遊園地。テスト前だけど息抜き。雨が降ったけど楽しかったv ――』



大半の日記に登場する、ゾロの名前。



ふと思い立って、クローゼットの上の棚から箱を取り出す。
少し大きめのその箱には、学校で友達から貰ったメモのような手紙や、昔のスケジュール帳がしまってある。

その中をゴソゴソと漁り2冊の手帳を取り出して、机に戻る。
1冊を開いて、目的の日のページを開く。


2年前の明日、ゾロが『幼馴染』から『彼氏』に変わったその日。







ゾロはナミの近所に住んでいる、幼馴染だった。
父子家庭だが、ゾロが中学の頃から父親は海外出張に出ることが多くなり、
そのためナミの母であるベルメールはよくゾロを夕食に招待した。

と言っても、料理をするのは主にナミの仕事であった。
ベルメールはあまり料理が『得意』ではないのだ。


いつからだったか、ゾロに食事を作ってあげるのをナミが心地良いと思い始めたのは。











 『ゾロとキス。』


たったそれだけの日記。


覚えてる。
この日はもっと色んなことがあったし、書きたいこともたくさんあったのに。
それなのに、たった5文字。

よっぽど嬉しかったのね、と当時の気持ちを思い出してナミはクスクスと笑った。


またページをめくっていく。


 『ゾロの家に泊まった。・・・幸せ???恥ずかしい??? やばすぎる。』


これまたシンプルな日記。
色々誤魔化すようにつけられた?マークに、
私ったら初々しい、などと思いつつナミは思わず頬を染める。





それからもしばらく昔の日記に目を通して一人で笑って、はっと気付くともう日付は変っていた。

日記書かなくちゃ、とナミがペンを握りなおしたその瞬間。
携帯電話が小さな音を鳴らす。

画面に目を落として、ナミは急いで通話ボタンを押した。



 「もしもし」

 『・・・おれ』

 「うん」

 『寝てたか?』

 「ううん、勉強してた。ゾロは?」

 『あ? あぁ、おれも勉強・・・・』

 「うそー、寝てたでしょ」



寝起きの声は、電話越しでも分かる。
ナミは手の上でペンをクルクルと回しながら笑う。



 『・・・仮眠だ、仮眠』

 「はいはい」



それからゾロは、何か言いたげだがはっきりせず、携帯片手に戸惑っているようだった。
ナミはしばらくゾロが話し出すのを待っていたが、ポツリと呟く。



 「ゾロ、もう今日で・・・2年だね」

 「・・・あぁ」



ふふ、とナミは笑う。
どうやらゾロも覚えていたらしい。
もしかしたら偶然かもしれないけど、
それでも、嬉しかった。

明日の日記にちゃんと書かなくちゃ、と思いながらナミは手帳に目を落とす。


手帳の隅には、さくらんぼの絵。

2つの赤い実がひとつの房にひっついて、寄り添っている。



 「・・・ねぇゾロ、明日の晩御飯、デザートはさくらんぼにしよっか?」

 『あ? 何だ急に』

 「うん、何かね、急に食べたくなっちゃって」

 「ふーん、まぁイイんじゃねぇ?」

 「うん!」






まだあと半分残ってる白紙の手帳にも、
きっとあなたの名前がたくさん出てくるんだろう。

いつも笑って
いつも一緒にいられたら。

きっとそれだけで、私は毎日幸せだよ。






  愛し合う2人 いつの時も

  隣どおし あなたとあたし さくらんぼ







2006/08/02 UP

『大塚愛【さくらんぼ】でゾロナミ(甘々ラブラブでゾロ←ナミ)』
6/12にリクくれたizumiさん、・・・・・・ダメ?

あぁもう色々となんかゴメンナサイ。
こんな甘い女の子な歌詞で書くなんてキツイ!
私の性格的にキツイ!!(笑)

生誕'06/NOVEL/海賊TOP

日付別一覧

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送