拘。
「ゾロ!!??」
「チョッパー! ゾロどうしたの!?」
「大したことねぇ」
「動脈を切ってるんだ! 動くなゾロ!!」
降りようとするゾロに怒鳴りつけて、チョッパーはゾロを背中に乗せたまま、
メリー号の甲板にヒラリと着地した。
チョッパーはその場でいつもの人獣型に戻り、
ゾロを甲板に寝かせて、倉庫から医療セットを持ってくる。
「おいチョッパー、何があった? 海軍か?」
「違う、ただのチンピラだ!! ちくしょうあいつら、子供を人質に・・・!!」
チョッパーは目に涙を浮かべて、ゾロのズボンを破って傷口を露にする。
ゾロの太腿のパックリと割れた傷口から、どくどくと血が溢れ甲板を赤く染めていく。
顔にも殴られたような痕があり、チョッパーの方も大分傷を負っていた。
「だから、大したことねぇって・・・」
「どこがだよクソマリモ! いいから大人しくしてろ!」
クルーたちは手当てをするチョッパーと、顔をしかめて大人しくなったゾロを囲む。
だがナミだけは、その輪から離れたところに立っていた。
「コイツがチンピラ相手にこんなケガするなんて、珍しいな・・・」
「あいつら、小さい子供を盾にして! どうしようもなくて・・・」
「・・・つまりは、因縁つけられたけど子供人質にとられたから手を出せなかった、て事か?」
「あぁ、仕方ないからおれたち大人しくしてたんだ・・・・そしたらあいつら、刺しやがって・・・!!」
「でもまぁ、そのあとノしてやったから、結果オーライだ」
「そういう問題じゃねぇだろ! 血ぃ流し過ぎだてめぇは!!」
血の気の失せた顔で笑うゾロを、サンジは怒鳴りつける。
ゾロは舌打ちをしつつも、自身でも貧血なのを自覚していたので、
大人しく体を倒して甲板に横になる。
その間にも、チョッパーは無言でゾロの傷を縫っていた。
ウソップに助手を頼みつつ、チョッパーはゾロの傷の手当てを終えた。
人型になり、ゾロを抱えあげて女部屋に向かう。
その頃にはゾロは、失血のために意識を失っていた。
「ナミ、今夜熱出すだろうし、ゾロは女部屋に寝かせるな?」
「・・・・え、えぇ・・・・」
「・・・・ナミ? ・・・ゾロなら大丈夫だぞ! 血は足りないけど、ゾロなら寝てれば平気だから!」
「そう・・・そうね・・・・」
何だかぼんやりとしたナミを気にしつつも、チョッパーはまずはゾロを、と急いで女部屋に下りて行った。
「・・・・大分、よくなった?」
「あぁ・・・・」
ベッドの上で横になるゾロに、ナミは声をかける。
傷を負ってこの部屋に運ばれてから、ゾロは丸1日眠り続けた。
目を覚ましたときには既に顔の血色も戻ってはいたが、発熱は続いていた。
熱のせいか、それともいつものように眠いだけなのか、
ゾロは横になったまま、またウトウトとし始める。
「・・・・・ゾロ」
「・・・あぁ?」
小さく名前を呼ぶと、ゾロは律儀に目を開いてナミの顔を見た。
「何でこんなケガしてんのよ」
「・・・・しょうがねぇだろ、あいつら、保育所か何かのガキ丸ごと人質にしやがったんだ」
「何でそんなヤツらに関わっちゃうのよ」
「知るか、先にちょっかい出してきたのはアッチだ」
「そんなの無視しなさいよ」
「頭数揃えりゃ誰にでも勝てると思ってるヤツらにゃ、逆効果だぜ」
「・・・・・あんたは、」
「あ?」
ベッド脇に置いた椅子に腰掛けて、ナミはゾロを見下ろしながらポツリと言った。
「きっといつか、あんたは一人で死ぬわよ」
「・・・・あぁ、だろうな」
単調なその言葉に、ゾロは口端を上げて笑った。
ナミはスカートの端をぎゅっと握り、俯く。
「私を置いて、独りで勝手に死ぬわ」
「・・・・・・そうかもな」
吐き捨てるようなゾロの答えを聞いて、ゆっくりと立ち上がる。
「それならいっそ、私に殺させてよ」
「・・・・・・」
「私もすぐいくから」
「・・・・・・」
ナミはゾロの首に手を回す。
そしてゆっくり、力を込めていく。
きゅう、と気管が締まるのを感じながら、ゾロは自分を見下ろしてくるナミを見つめていた。
今にも泣き出しそうな顔で、自分の首を締めてくる女。
人を殺そうとしているくせに、まるで自分が殺されかけているかのような辛い顔。
ナミにこんな行動を起こさせているのは自分のせいだと、ゾロは自覚していた。
「ナミ!! 何やってんだ!!!?」
女部屋に下りてきたチョッパーは、目の前の光景に一瞬固まり、それから慌てて2人の傍に駆け寄った。
チョッパーに引き剥がされて、ナミはその勢いのままペタンと床に座り込んだ。
ゾロはゲホ、とムセながら体を起こす。
「ゾロ、大丈夫か!?」
「あぁ・・・平気だ。 ・・・悪ぃチョッパー、2人にしてくれ」
「・・・・・でも・・・」
ナミの方にちらっと目をやりながら、チョッパーは心配そうな顔をする。
ゾロはそれに頷いてみせる。
「大丈夫だから、頼む」
「・・・・分かった、またあとで来るよ」
向きを変えたチョッパーは、ナミに声をかけようか迷ったが、結局無言で部屋から出て行った。
ゾロは多少フラつきながらもベッドから起き上がり、
座り込んだままのナミの隣に腰を落とした。
「ナミ」
「・・・・ごめん、なさい」
「お前に殺されるんなら、構わねぇよ」
「・・・・そんなこと、言わないで」
ナミはゾロと視線を合わせず床をぼんやり見つめたまま、ボロボロと涙をこぼした。
ゾロは無言で、ナミの頭を自分の胸に抱き寄せる。
「死なないで、って言ってるのに」
「死なねぇよ」
「ウソ」
「お前がいるなら、おれは死なねぇ」
「ウソよ・・・」
ナミはゾロの腕をぎゅっと握り、その胸に顔を押し当てて嗚咽を漏らす。
「おれが死ぬのは、お前が死んだときか・・・お前に殺されるときだ」
「・・・・・」
聞きたくない、とばかりにナミは自分の両手で耳を塞いだ。
ゾロはその手を取り、引き剥がす。
「聞け、ナミ」
「いや」
「おれがこの世で最期に目に映すのは、お前だ」
「・・・いやよ、そんなの・・・・」
「我儘言うな」
「私は、そんなことを望んでるんじゃない」
「分かってる」
「ウソ」
「分かってるよ・・・・」
ゾロはぎゅうとナミを抱きしめた。
ナミもゾロの背中に手をまわし、すがりつく。
続く言葉は、互いに無かった。
いつも強気なこの女を、こんなにも脆いモノにしてしまう。
自分のせいだと分かってはいても、ゾロは自分の生き方を変えることはできなかった。
刀と共に生きると決めたその日から、これは逃れることのできない運命。
ナミをそれに巻き込んでしまうことを心苦しいとは思っても、それでも手放すことはできなかった。
死のその瞬間まで、この腕の中に。
互いの命の熱を感じながら、2人はただ抱き合っていた。
2006/07/27 UP
『ゾロの首を締めるナミ、でもラブラブ』
6/10にリクくれた方・・・ごめん、どシリアスに・・・・・・orz
ナミさん弱っっっ!!!
リク的にはほのぼのとかソッチ系を期待されてたと思うんだよなぁ・・・。
ごめんよ、シリアスしか浮かばなかった・・・・・。
これもひとつのバカップルの形ということで・・・・。
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