値。







 「なぁ、この子電伝虫、何だ?」












集合時間を迎えて、麦わらのクルーたちは続々とメリー号に戻ってきていた。

買出しを終えたサンジとウソップ、一緒に町に出ていたゾロとチョッパー、
そして自由に行動していたルフィとロビン。
ナミに言われた門限を守って、みなきちんと船に戻った。


船番はナミだった。

いつもなら戻ってきた者をちゃんと迎えに来てくれるのだが、今回はその様子がない。




 「ナミさぁんvv 貴女のサンジが帰ってまいりましたよー?」

 「ナミ関係ねぇだろ」

 「うるせぇマリモ。 ナミすゎーーーん!?」

 「ナミーー?」




いつまでたっても出てこないナミを探してルフィがきょろきょろと見渡すと、
船の手すりに子電伝虫と小さなメモ紙が置かれているのを見つけた。



ナミさーん!と声をはりあげていたサンジも他のクルーも、ルフィのまわりに集まった。




 「何だ? 誰のだ?」

 「知らねぇ。おれ持ってねぇぞ」

 「ナミさんのかな?」

 「さぁ・・・・」



皆が甲板に座り込み、ルフィの手の中の子電伝虫を見つめていると、
唐突にそれが鳴り出した。



 「うわ!」

 「どうする? 取るか?」

 「とりあえず・・・・取るか・・・」



しばらく顔を見合わせていたクルーたちだったが、とりあえずルフィが受話器を手にする。



 「誰だァ!!」

 「何で喧嘩腰だお前」

 「何となくだ」



ルフィの答えに苦笑しつつ、ゾロたちは子電伝虫に注目する。
電伝虫の向こうからは、わざとらしく低くした男の声が聞こえてきた。



 『・・・・・お、お前らの船の女は預かった』

 「・・・何だと? 誰だお前!」

 『返して欲しいなら、3000万ベリー用意しろ!』

 「あぁ!?」



ナミが攫われたこと知ったクルーたちは、みな顔色を変えて額に血管を浮かばせる。



 『船のどっかに隠してるんだろ? いいか、下手なマネしやがったら女の命は・・・・』

 『ちょっとアンタたち! 私の値段がたったのそれっぽっち!?』

 『う、うるせぇぞてめぇ!』



男の後ろで、ナミの威勢のいい声がした。
ぎゃーぎゃーガタガタと騒ぐ音がして、
それから、殴る音。



 『あっ!』

 『・・・・・わ、わかったなてめぇら・・・さん・・・・ご、5000万ベリー用意しねぇと女の命は無ぇ!
  1時間後に、そこに置いてある地図の場所に金持って来い!』



慌てた男はそう叫んで、乱暴に電話を切った。





無言になった子電伝虫の受話器を、ルフィはバキ、と握り潰した。
周りのクルーたちも、無言のままだが顔は怒りに満ちていた。




 「あいつら、ぶっ飛ばしてやる」

 「ルフィ」



パキパキと指を鳴らしながらルフィが立ち上がると、
ゾロがその腕を取って止めた。



 「何だよゾロ」

 「おれが行く」

 「・・・・・」

 「5000万だろ? おれでも釣りがくる」



そう言って、ゾロは凶悪な顔で笑った。



















地図に示された宿屋に、ゾロは(奇跡的に)辿り着いた。

メモにあった番号の部屋の前で、ゆっくりとその扉を開く。





部屋の中央にポツンと置かれた椅子に、ナミの姿があった。
後手に縛られ、電話口で暴れたせいか足も椅子にくくりつけられている。
猿轡を噛ませられ、物音に気付いたナミが顔を上げ、ゾロと目が合う。
遅い、とナミの目が抗議していた。
ゾロは軽く笑って、それからまわりに目をやる。

少し離れてナミを囲むように3人、そしてドアのすぐ傍でゾロの頭に銃を突きつけている男が1人。
決して趣味がいいとは言えないシャツを着た、ガラの悪いチンピラたちだ。





ゾロは無言のまま、一歩踏み出す。



 「う、動くな!!」

 「・・・・・」



ゾロの動きに合わせて、銃を持つ男も動いて変わらずゾロを警戒する。



 「金はドコだ!」

 「ちゃんと持ってきたぜ」

 「どこに・・・」

 「お、おい、待て・・・」

 「何だよ!」



ナミの隣に居た男が、妙な汗をかきながら銃の男の言葉を遮る。



 「・・・・まさか・・・・てめぇ、【海賊狩り】・・・・?」

 「・・・・・・・・へ? こいつが・・・・?」



残りの3人の男たちが、ぎょっとしてゾロを見つめた。
ゾロは平然と、銃口を頭に当てられたままで立っている。



 「待てよ・・・じゃあこの女の船は・・・・」



男たちは怯えたようにゾロから距離を取る。
銃を持った男はそれでも必死に銃口をゾロから外さない。
だがその先はカタカタと小刻みに震えていた。





 「身代金・・・5000万だったか?」

 「・・・・・・」

 「おれの懸賞金額は6000万だ。釣りは取っとけ・・・」



そう言って、ゾロは刀を一本抜いた。
刀身を光らせて、ニヤリと笑う。




 「てめぇらにおれの首が獲れるモンならな」




























ピッ、と刀の血を振り払って、それを鞘に収めた。

ゾロは倒れている男たちをまたいで、ナミの前まで歩み寄る。




まずは猿轡を外し、足の拘束を解く。

膝をついて、ナミの背中に腕をまわし手の縄も解いてやる。


それから、ナミの頬にそっと触れた。



 「殴られたか」

 「電話のときの一発だけよ、大丈夫」



口元を赤く腫らしながらも、ナミは微笑んだ。
ナミの無事を確かめるように、ゾロはその頬や首や体に触れる。



 「他にケガは」

 「平気。あいつら手ぇ出す勇気もなかったみたい。よく海賊船から誘拐なんて考えたわよね」

 「そのようだな」



赤くなった手首をさすり、それからゾロはもう一度ナミの頬に触れる。
ナミは笑って、ゾロに抱きついた。
ゾロもナミの背中に手をまわし、強く抱きしめる。



 「みんなに心配かけさせんなよ・・・。 てめぇが誘拐なんざ、よっぽどだぜ」

 「しょうがないでしょ、乗り込んできていきなりナイフと銃を突きつけられたらどうしようもないじゃない。
  大人しくしといた方が無難かなー、と思って」

 「まぁイイ、無事ならそれで」



ナミの背中を撫でながら、ゾロはふーっと息を吐く。

クスと笑って、ナミはゾロの頭を撫でた。



 「心臓止まりそうだったかしら? 6000万ベリーの剣豪さん」

 「・・・・そうだな、ちょっと止まったかもしんねぇ」

 「もう大丈夫よ、大丈夫」

 「・・・それは普通、こっちのセリフじゃねぇか?」

 「だってアンタの方が疲れた顔してるじゃない」

 「・・・・・」



目と目を合わせ、2人は同時に笑う。



その背後で、倒れていた男がうめき声を上げた。





 「ロープか何かあるか?」

 「ここに」



ナミを拘束していた縄の残りで、2人は男たちをまとめて縛り上げた。
血を流しながら、男の1人がかすれ声を出す。



 「・・・海賊狩りの仲間だなんて・・・・聞いてねぇ・・・」

 「知らないあんたたちが悪いんでしょ。海賊旗のマークで気付きなさいよ」

 「この女は麦わら一味の航海士だぜ? ソレに3000万ベリーなんざ、お前ら見る目が無ぇよ」

 「・・・・チクショウ・・・・」




それから男たちは動かなくなった。

部屋にあった子電伝虫で海軍に匿名通報をしてから、ゾロとナミは部屋を出た。









 「ねぇゾロ、私の身代金って幾らぐらいが妥当だと思う?」

 「あー? ・・・・・・・まぁ、3人分の賞金額足しても、足んねぇかもな・・・」

 「・・・・ふふ、そっか」

 「何だ、喜ぶトコなのかそれ」

 「結構ね」

 「ふーん」

 「まぁ、今はまだ6000万で充分よ、私」

 「ふーん」

 「6000万の女って、ことで・・・ね?」

 「・・・まぁ、それでイイんじゃねーの」

 「んーー、今日はなかなか面白い一日だったわ」

 「誘拐されたのに、か」




船への帰り道を2人で歩きながら、ナミはゾロの腕によりかかってあははと笑った。




2006/07/24 UP

『敵に捕まったナミをゾロが助ける(原作設定)』
6/9にリクくれたマキさん、かっこよく助けるシーンは省いたヘタレmarikoをお許しください(笑)。

仲間が助けに来ると信じていたので、大人しく捕まってたナミさん。
とりあえず自分のヘソクリから遠ざけたかったという噂もありますが(笑)。

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