素。






 「ゾロ!! いつまでも寝てるのこの穀潰し!!」

 「なんだとてめぇ!?」

 「何よ、本当のことでしょ? そう言われるのがイヤなら借金のひとつでも返してみなさいよ甲斐性無し!」

 「・・・・・」






ルフィの盗み食いが発覚したため、今のナミの機嫌はMAXで悪い。
いつもなら甲板で昼寝している程度のゾロに、あんな言葉を吐きかけたりはしない。
だが今日のナミは、ゾロの腹を蹴飛ばして散々怒鳴った挙句、
一人ですっきりしたのか女部屋に戻って行った。







 「・・・・・・」

 「・・・・ゾ、ゾロ、大丈夫か・・・・?」



額に血管を何本も浮かび上がらせ、ゾロは胡座をかいて耐えていた。
近くでその様子を見ていたウソップは、恐る恐る声をかける。



 「あぁ、いつもの事だ・・・・」

 「お前もあんな怒鳴られて・・・苦労してんだろうなぁ」

 「・・・そうでもねぇぜ?」

 「へ?」



隣に座り込み、ウソップは同情混じりの表情でうんうんと頷いていると、
ゾロはニヤリと笑って呟いた。





 「夜は素直だからな」

 「・・・・・あ、そーですか・・・・」





ガクリと肩を落としてウソップは項垂れる。
慰めてやろうと思ったのに、逆に惚気られるとは。







 「おいクソ剣士、そのへん詳しく・・・・・」

 「あ?」

 「聞かせてくだっさい!!」



倉庫から出てきて偶然会話を聞いていたらしいサンジが、野菜を脇に置いてゾロたちの隣に座り込んだ。



 「何だお前」

 「いいから話せよ、たまには男同士でそういう話も悪くない」

 「真昼間の甲板でか」

 「気にすんな! な、ウソップ?」

 「あ、あぁ・・・でも相手が相手だけに・・・・」



同意を求められて、ウソップはギクシャクと拒絶の意を伝えようとする。
ナミにもしこんな会話を聞かれたら・・・と考えると、恐ろしくて呼吸も止まりそうだった。



 「これはある意味健全な感情だ。考えすぎはよくねぇんだよ」

 「・・・てめぇ、ナミで何を考える気だ」

 「・・・気にするな・・・で、夜のナミさんはどんななんだ?」

 「・・・・」

 「教えてくださいお願いしますっっ」



目を輝かせているサンジに、ゾロは必死だな・・・とポツリと呟いて、
それから口を開いた。



 「・・・素直だぜ」

 「だから! どんな風に?」

 「そうだな・・・まず口調が変わるな、割と大人しい」

 「へーーーー」

 「猫みたいにひっついてくる」

 「ほーーーーーーー!!!」



素直に感嘆の意を漏らすサンジたちに、ゾロは若干の優越感を持ちつつ
ついつい口が軽くなる。



 「まぁ抵抗は多少しても、結局おれの言うこと聞くしな」

 「たたたたたたとえば?」



話に熱中し始めたゾロとサンジは、ウソップの姿が消えたことに気付かなかった。
危険を察知する能力に長けた彼は、誰よりも早くその気配に気付いていた。


ゾロの背後に迫る、鬼の気配に。




 「そりゃ・・・ケツ上げろっつったら上げるし、上乗れっつったら乗るし、しゃ」





そこでゾロの言葉は切れ、同時にものすごい音を立てて顔面から甲板にめり込んだ。






 「ゾロ・・・・・あんた何の話してんの・・・・?」

 「・・・・・・クソ剣士、ここでおれを一人にするな・・・・・」



しゅうううう、と後頭部から煙を出しながら、甲板に埋まったゾロはピクリとも動かない。
サンジは真っ青な顔でそれを見下ろして、そしてゆっくりと顔を上げた。






そこには、鬼がいた。






 「サンジくん、あなた・・・ゾロから何が聞きたかったのかしら・・・・?」

 「ごごごごごごごごめんなさいぃーーーー!!!!!!」















 「あら、のろしが上がってるわ」

 「え? 本当だな、島があるのかな?」



後甲板でカードゲームを楽しんでいたロビンとチョッパーは、
前方から立ち上る2本の煙を仲良く眺めていた。




2006/07/20 UP

『昼はナミゾロ、夜はゾロナミ』
6/8にリクくれた奈月さん、あっさりしてますがこれじゃダメ?

エロを求めた方、ウチにゃあございませんよ(笑)。

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