遣。
『大好きよお姉様っ!』
『おいおいおいおい』
本当に、何てかわいいのかしら。
「ねぇ貴方・・・・剣士さん」
「・・・・何だ」
話しかけてきた黒髪の女に、ゾロは凶悪な目とともに返事をする。
あれよあれよと言う間にこの船の乗員となった黒髪の美女、ニコ・ロビンは、
にっこりと微笑みながらゾロに近づいていく。
既に他のクルーはロビンにほだされてしまい、
唯一ゾロだけが、突然の乱入者に警戒の眼差しを送っていた。
だがロビンはそんなゾロの様子を気にかけるでもなく、
何故だか嬉しそうに笑顔を寄越してくる。
「貴方は、航海士さんの恋人なの?」
「・・・・・・・・だったらどうした」
まだ顔を合わせて数時間しか経っていないのに、ロビンはゾロとナミの関係に気づいていた。
2人のことはクルーも承知のことだが、会ってすぐの人間に勘付かれるほどのことをした覚えはゾロにはなかった。
暗殺を得意と言うだけはある、人間観察はお手の物らしい。
ゾロはそう思って、さらにロビンを睨みつける。
「そう・・・それなら貴方でいいのね」
「何が」
「宣戦布告」
「・・・・・・何だと?」
物騒な発言を聞いて、ゾロは刀に手をかける。
それでもやはりロビンはにこにこと笑ったままで、手を咲かせてゾロのその手をはじいた。
「私も航海士さんのこと、好きだから」
「・・・・・・・・・はぁっ!?」
ロビンがこの船に乗るということは、女部屋はナミとロビンのものになる。
つまり、ゾロが夜に女部屋に行くことはできなくなった。
狭い船の上で唯一2人きりになれる場所であっただけに、
ゾロは八つ当たりも混じった視線でロビンを警戒することになった。
しかもナミ自身がロビンに懐いてしまっている。
故郷の姉を思い出したというのもあるのか、また自分よりも豊富な知識を持っているロビンに対して、
ナミは時間を見つけては質問や相談を持ちかけていた。
結局ゾロはロビンが来て以来、女部屋に行くどころかナミと2人きりになることすらできないでいた。
真夜中の森の中。
サウスバードを求めてクルーたちはひたすらに歩いていた。
「彼女と組になれなくて残念かしら?」
「・・・・・・うるせぇな」
ゾロは網を肩に抱えてズンズンと木々の間を進んでいく。
途中、何故か挑んでくるデカイ虫たちに八つ当たりしつつ、ゾロは舌打ちをする。
「私だって残念だわ、彼女とペアになれなくて・・・・」
「・・・・・・・・てめぇ、本気かよ?」
「何が?」
「・・・ナミを好きだ、っての」
「本気よ?」
怪訝そうに振り返ったゾロに、やはりロビンは笑顔を返す。
奥の読めないその顔に、ゾロはまた舌打ちをした。
それから数時間後、夜明け前。
モック・タウンへ戻ったルフィを待ちながら、クルーたちはメリー号の修繕に励んでいた。
「航海士さん・・・彼を行かせてよかったの?」
「ルフィのこと? しょうがないじゃない、あいつが行くって言ったら聞かないもん」
「間に合わなかったら?」
「間に合わなかったらぶっ飛ばすわ! 何のためにこっちが必死になって船の修理してると思ってんの」
「ふふ・・・そうね、ところで航海士さん・・・・」
「なに?」
板を抱えてメリー号に向かっていたナミはその足を止める。
「あとで森の中に来てくれない? 空島に行く前に、渡したいものがあるの・・・」
「ここじゃダメなの?」
「えぇ、ここじゃちょっと・・・ね」
「・・・・? 分かったわ、これ運んだら行くから」
「えぇ、待ってるわ」
ロビンはそう行ってその場を去った。
ナミは首をかしげつつも、板を抱えなおして足を速めた。
「剣士さん」
「あ?」
「ちょっといいかしら?」
「見て分かんねぇか、今忙しい」
大きな板を軽々と抱え運んでいたゾロに、ロビンが後ろから声をかける。
「大事な話があるの」
「あぁ?」
「航海士さんのことで・・・・」
「・・・・・・・」
ゾロは足を止めて、意味深に微笑むロビンを振り返った。
「ちょっと、本気で話し合わない?」
「・・・・・・・」
「さっきの森で待ってるから、来てもらえるかしら」
「・・・・・わかった」
そう言って森に向かったロビンの背中を、ゾロはただじっと睨みつけていた。
「・・・ナミ?」
「え、ゾロ?」
ロビンから呼び出されてしばらくして、ゾロとナミは足を運んだ。
相手の姿が見当たらずにキョロキョロしていると、2人はばったりと鉢合わせた。
「どうしたのこんなトコで」
「お前こそ・・・・」
「私はロビンから話があるって・・・」
「・・・・・・おれもだ」
「え?」
きょとんとして顔を見合わせる2人の傍に、ゆっくりと人影が近づく。
「あ、ロビン」
「てめぇ、ナミまで呼び出して何のつもりだ」
「ふふ、ごめんなさい」
「ロビン、何? 渡したいものがあるって・・・」
「話って何だ」
ナミは戸惑った様子で、ゾロの方は相変わらず凶悪な顔で、
それぞれロビンを見つめる。
ロビンはその2人に微笑みかけながら近づいていく。
「航海士さんに渡したいものっていうのは、今あなたの目の前にあるもの。
剣士さんへの話は、ここなら2人きりになれるでしょう、ということ」
「「・・・・・は?」」
ロビンの言葉の意味が解らず、ゾロとナミは揃って間の抜けた声を出した。
それに構うこともなく、ロビンは続ける。
「私のせいで、2人きりになれなかったでしょう?
これから空島に行くんなら、今よりもっとそんな機会なくなっちゃうかもしれないわ。
出航まではまだ2時間はあるし、みんなも船の修理で忙しいからここまで来ないから・・・ね?」
「ロ、ロビン・・・・」
意味を理解したナミは顔を真っ赤にする。
その隣でゾロはやはりロビンを睨みつける。
「何考えてんだお前・・・・」
「私ね、航海士さんのこと大好きだけど、
航海士さんは剣士さんのことが大好きみたいだから、泣く泣く身を引くわ・・・」
芝居がかった口調のロビンに、ナミは慌てて口を挟む。
「なっ、ばっ、ロビンったら何言い出すの!?」
「だってあんなに惚気話されちゃ・・・私だって切ないのよ?」
「そ、そんなっ!! 惚気話なんて私!」
「剣士さんったら、・・・・すごいのねぇ・・・・?」
意味深なロビンの視線にたじろいだゾロは、隣であたふたしているナミをチラリと見下ろす。
目が合ったナミはさらに顔を赤くしてすぐに逸らした。
「じゃ、私はあなたたちの分まで修理を頑張るから、あなたたちはここでゆっくりしてて」
「「・・・・・・」」
「・・・・あ、声は海岸までは届かないから気にしないで」
「っっロビン!!!!」
湯気が出そうなほど顔を赤くしたナミを見て、ロビンはクスクスと笑いながら森から出て行った。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・てめぇ、あの女と何の話してんだよ・・・・」
「・・・何って、別に、・・・・・女同士の相談事よ!!!」
「あんまり妙なこと話すなよ・・・」
「・・・は、話してないわよ・・・」
「目を逸らすな、目を」
「そ、それよりっ! どうすんのよこれから・・・・」
「どうって・・・・決まってんだろ」
「や、ちょ、ちょっとっ!」
「何だよ、何日ぶりだと思ってんだ」
「だって、船の修理っ・・・急がないと!」
「あの女にまかせとけ。こういう状況はありがたく頂いとくモンだぜ」
「・・・・っ」
こっそりと咲かせた耳を消して、海岸へ戻る途中でロビンはまたクスクスと笑う。
本当に、何てかわいいのかしら。
あの子たち。
2006/07/14 UP
『ニコナミ、ナミが大好きなロビン・出し抜かれるゾロ』
6/5にリクくれたReeさん、いまいちリク内容に沿ってませんが・・・。
何かニコナミになってない・・・。
すまん!
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