遊。





 「これは夢か幻か・・・・今このビーチに2人の女神が舞い降りた!!」

 「ふふ、ありがとうコックさん」

 「あれ、その水着新しいねナミさん?」

 「うん、この島にこういうビーチがあるって聞いてたから、万が一のために買っといたのv」




高級リゾート地として有名なこの島の、プライベートビーチ。
見渡すかぎりの透き通った碧の海と、抜けるような青い空、そして真っ白な砂浜。
浜辺には客人用に別荘が立ち並ぶ。

その『客人』として、何故だか麦わら一味はここにいる。
ゾロのおかげで。














昨日。

島についたクルーたちは、いつものように各々上陸して買い物をしていた。
今回は船番ではなかったゾロは、とりあえずブラブラと町に出てきていた。
かと言って買いたいものがあるでもなく、それ以前に金も無く、とりあえず通りをまっすぐ歩いていた。



そこで、いかにも悪そうな男3人にからまれている、
フワフワのブロンドの髪に高そうなワンピースを着た、これまたいかにもお嬢様な女を見かけた。

なかなかデカい図体の男たちで、周りの人間も見て見ぬフリを決め込んでいるようで、
勇気を出して注意した者も、男たちに胸倉を掴まれて慌てて退散するという始末だった。

ゾロは溜息をつき、4人の傍に近づいていった。



 『本当に、やめてください・・・・・』

 『いいじゃねぇか、ちょっと一緒にお話しようって言ってるだけだろー?』

 『誰も取って食やしねぇって、なぁ?』

 『あぁあぁ、だから安心して・・・・・』


 『取って食う気満々のツラで、よく言うぜ』


 『・・・・あぁ!?』



男たちの背後でポツリと呟いたゾロの言葉に、一人が凄みをきかせた顔で振り返った。



 『大の男が3人がかりで脅してんじゃねぇよ。ナンパすんならせめて1人でしろ』



クソコックなら逆に1人で3人の女に声かけそうだな、とふと思ったゾロは思わず笑ってしまった。
それが癇に障ったのか、男の一人が拳をポキポキと鳴らしながら前に進み出た。



 『よぉ兄ちゃん・・・随分生意気な態度だなぁ、あぁ?』



腕っ節には自信のあるらしいその男はゾロを見下ろしながら不敵に笑った。
だがゾロはそれをあっさりと無視して、男たちに囲まれて縮こまっている女に声をかけた。



 『あんた、さっさと行けよ』

 『無視すんなーー!!!』

 『してねぇよ・・・相手してほしいんなら、まぁしてやらなくもないぜ? ヒマだしな』

 『てめぇ・・・・っ!!!』



ゾロが頭を掻きながら適当な返事をすると、ついにキレた男が拳を振り上げてゾロに突進した。





女は思わず顔を両手で覆った。

無理もない、男たちはみなゾロの倍近くの体格で、
ゾロはと言うと刀を持っているとはいえ、それを手にする風でもなくズボンのポケットに手を突っ込んだままでいる。


周りの人間も、無茶なことを・・・といった目で様子を見守っていた。



だが、女が顔を上げたときには、地面に伸びていたのはゾロではなく3人の男だった。
野次馬連中も呆気に取られた顔をしている。


ゾロは最初に向かってきた男に近づき、初めて刀を抜いた。


スラリと光る剣先を男の喉元にあてがう。
男はひぃっ!と情けない声を出した。



 『勝てねぇ喧嘩を売る度胸は・・・認めてやってもいいぜ?』



ニヤリと笑ったゾロの顔を見て、
3人の男は声にならない叫び声をあげ、足をもたつかせながら逃げて行った。




 『・・・・あ、あの・・・・』

 『あ? あんた、まだいたのか』

 『あの、ありがとうございました!』

 『別に・・・一人でフラフラ歩いてっと危ねぇぞ、あんたああいうのに慣れてなさそうだしな』

 『あの、是非お礼を・・・・!!』

 『・・・あ?』







この島に別荘を持っている、見た目通りお嬢様だった女は、
ゾロを自分のビーチに招待すると言った。
ゾロが自分が海賊で港に仲間もいると言うと、それでも女は皆まとめて招待する、としつこく食い下がった。


仕方なくゾロはそれを受け、
翌日、一同揃ってこの場所にやってきたのだった。

















 「たまにはゾロもいいことするわねーーー本当キレイ!!」

 「たまにはって何だオイ」

 「気にしない気にしない♪」

 「毎日海の上にいんのに、何はしゃいでんだよ」

 「海とビーチじゃ違うわよー!!」



グリーンの水着を着たナミは、そう言って嬉しそうに駆けて行った。
ゾロはその後姿を見送って、眩しそうに目を細めてから欠伸をした。














満足いくまで泳いだナミがいったん上がろうと砂浜に目を向けると、
同じように浜に戻っていたゾロに、女が数人で話しかけていた。
一人はゾロが昨日助けた女らしい。
ここに着いたときに挨拶をして、案内をしてくれた女だった。
その友人なのか、同じような年齢のこちらも負けずとお嬢様風の女が2人、傍にいた。




 (・・・・・何よ、アレ)



一見、自分を助けてくれたのでビーチに招待した、と友人に説明しているようだが、
ナミが気に食わないのは、その2人の女たちの顔だった。

頬を染めて、うっとりとゾロを見ている。
ゾロは気付いているのかいないのか、相変わらず面倒くさそうに、だが律儀に会話をしているようだった。

ナミは一人でムカムカとその様子を海から眺めていた。




女の一人が、スルリとゾロの腕に手を伸ばす。



 (・・・・・!!!)

 (お嬢様風のツラのくせに、何よアレ!!!!)



もう一人の女まで、今度はゾロの反対の腕を取る。



 (・・・・・ムカツクムカツクムカツク!!!!)

 (アンタも少しは抵抗しなさいよ、バカマリモ!!)



ナミはザバザバと歩いていき、腰の辺りまで水に浸かった状態でゾロ!!と叫んだ。
引っぱられるまま部屋に連れていかれそうだったゾロはその声に立ち止まり、
女たちもつられて立ち止まって4人は振り返った。



 「どうしたナミ」

 「・・・・・・・・・なんか、足切ったみたい」

 「あぁ?」



ゾロは女たちの手を振り解き、ナミの傍に寄った。
女たちは嫉妬の混じる目でナミを見る。



 「どこだ?」

 「わかんないけど、何か痛い」



傍に来てくれたゾロの腕に、ナミは自分の両腕をからめてもたれかかった。



 「歩けるか?」

 「わかんない」

 「しょうがねぇな・・・」



そう言ってゾロはひょいっとナミを抱えた。
いわゆるお姫様抱っこの状態で、ナミは両腕をゾロの首にまわしてしがみつく。



 「オイあんた、悪ぃがどっか部屋貸してくんねぇか。あと救急箱」

 「え、あ、ハイ、あそこから入って右手の部屋が空いてますから・・・救急セットもあるはずです・・・・」

 「悪ぃな」



そのままゾロは、水着姿のナミを抱えたまま部屋へと向かって行った。
女たちの刺すような視線を感じながら、ナミはこっそりと勝利の笑みをこぼす。


















 「で、どっちの足だ?」

 「・・・・・・ウソ」

 「・・・・・・あ?」



ソファに座らせ、ナミの足元に屈みこんでいたゾロは片眉を上げる。
ナミは目を逸らして居心地悪そうに呟いた。



 「ケガなんて、してない。・・・ごめんなさい」

 「何だよそりゃ・・・・」



ゾロが呆れた顔をしたので、ナミは頬を膨らませてプイと横を向く。



 「だって、ゾロがあの子たちとどっか行っちゃいそうだったから!」

 「どっかって・・・・酒用意したからって言われただけだぜ?」

 「でもあの子たち、確実にゾロに気があるもん!!」

 「あったところでそんなのどうでもイイだろ・・・とにかく、ケガはしてねぇんだな?」

 「うん」

 「ならイイ」



ゾロは、ナミの足首を支えていた手をするりと上へ滑らせていく。



 「・・・脱がせやすいし、着やすいな」

 「・・・何の話かしら?」

 「気の利く水着を選んだな、と」



ゾロはナミに被さるように移動し、2人分の体重を受けて高級そうなソファがフワリと沈む。



 「別にあんたのために選んだわけじゃないわよ」

 「おれの色じゃねぇか」

 「・・・まぁ、そうなんだけど。 ていうか人の家よ、ココ?」

 「知るかよ」

 「誰か入ってきたら・・・・」

 「鍵かけた」

 「・・・・・・用意周到なこと」

 「任せろ」










ビーチでは、戻ってこないゾロに見切りをつけたお嬢様3人が、今度はターゲットをサンジに変えていた。




2006/07/13 UP

『ビーチに行ってナンパされるゾロ(原作)』
6/4にリクくれたマキさん、あんまりナンパっつーか、なんつーか・・・すまん!(先手で謝る)

女の見た目に騙されるなよ、と。
サンジくんはこのあとお嬢様3人に迫られますが、彼はロビンちゃんにメロメロなのです(こっそりサンロビ)。
さらにはルフィやウソップにも相手にされないお嬢様3人でありました。
タイトルがまったくもって浮かばない。
何でもええわいもう!!!(笑)

生誕'06/NOVEL/海賊TOP

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