冒。






 「ゾロ、御指名だ・・・・」






女部屋から出てきたサンジは、ガックリと肩を落としてそう言った。










キッチンで食後の酒を飲んでいたゾロは、片眉を上げてサンジを見やった。
周りでお茶を飲んでいたクルーたちもきょとんとしている。



 「サンジ、御指名って何だよ」

 「うるせぇ長っ鼻・・・今おれに話しかけんな・・・・」



弱々しく答えたサンジは、キッチンの隅に膝を抱えてしゃがみこんでしまった。



 「チョッパー、どうした?」

 「あのな、ナミが・・・・」



続いてキッチンに入ってきてチョッパーにゾロが説明を求めると、
チョッパーはチラリとサンジに気を遣う視線を送りつつ、答えた。















ナミが熱を出したのは今朝のこと。
顔を真っ赤にして朝食の席に現れたナミを、チョッパーは問答無用で女部屋に押し返した。

ここ数日は嵐が続き、気温の変化も激しかった。
単なる疲れからくるものだろう、という診察結果だったが、
念のため女部屋はチョッパーと、あとはサンジだけが入室を認められた。
風邪を引いたことはないから平気、それに病人食をどうするかは直接状態を見てから決める!と
サンジが必死に訴えたためだ。

ナミは薬のせいもあって、昼過ぎまで寝ていた。
3時ごろに診察でチョッパーが女部屋に入ったときには目を覚まして、
ベッドサイドに置いていたスープを何口か飲んだという。
サンジが食事を持っていったときは完全に眠っていて、『食べさせてあげるよナミさんv』作戦を実行できなかったサンジは
夕食こそ!と気合を入れて、先程女部屋に向かったのだった。



ナミは目を覚ましていた。
サンジの持って行ったおかゆも食べると言う。
だが・・・・・・














 「嫌だって、言うんだ」

 「何が」

 「サンジが食べさせてあげようとしたら・・・・」

 「あー、断られたのか・・・・それであの状態か」



話を聞いていたクルーは、どよーーんと縮こまっているサンジに目をやる。



 「じゃあメシはどうした? 自分でちゃんと食ったのか?」

 「ゾロがいいって」



フリフリと首を横に振ったチョッパーがそう言った。
サンジに集まっていた視線が、今度はゾロに飛んでくる。



 「・・・はぁ?」

 「ゾロに食べさせてもらいたいんだって。だからおれ、呼びに来たんだ」

 「あの女・・・メシくらい一人で食えよ・・・・」



ゾロは溜息をつきながらも、すぐにキッチンから出て行った。














残ったクルーたちは、声を潜めてチョッパーの傍に近寄る。



 「な、なぁチョッパー、ナミが『ゾロがいい』って言ったのか?」

 「あぁ、『サンジくんじゃイヤ! ゾロじゃないとイヤ!』って・・・」



チョッパーがナミの口真似をすると、サンジはビクリと体を震わせて泣き始めてしまった。



 「あぁああああナミさん、どうしておれじゃなくクソマリモ・・・・・・」

 「アレはほっとくとして・・・・何、ナミってゾロのこと好きなのか?」

 「ナミはゾロのこと好きだぞ!」

 「あっさり言うなチョッパー・・・」

 「だって本当のことだし・・・」



2人がそういう関係であるとは誰も知らないし、そんな雰囲気を今まで出したこともなかった。
おそらくまだ恋人同士というわけではないのだろう。



 「風邪引いて朦朧としてると、本音が出るのかやっぱ」

 「『サンジがイヤ』って?」



ルフィのとどめの一撃に、サンジはとうとう床に伸びてしまった。

さらっとそれは無視して、ウソップたちは話を続ける。



 「ゾロはどうなんだ?」

 「さっきやけに素直に出てったよな」

 「ゾロもナミのこと好きだよ」

 「てかチョッパー、何で分かるんだよンなこと」

 「匂いが違うんだ、お互いが傍に来ると。2人も分かってると思うんだけど・・・」

 「ふーん・・・・」



何だか一気にラブワゴン状態になってしまったメリー号で、
ウソップたちは意地っ張りなあの2人がこれからどうなるか、
オモシロ半分不安半分で見守ることに決めた。


















 「具合どうだ?」

 「・・・ゾロ」



女部屋に下りたゾロは、ベッドに近づいてナミの額に手を乗せた。



 「大分下がった、な」

 「うん」

 「なら一人でメシくらい食えるだろ」

 「・・・・食べれない、だから食べさせて」

 「・・・・・・・・世話のやける・・・・」



シーツの端から顔の上半分を出してそう言うナミに、
ゾロは呆れながらも椅子を引き寄せてベッドサイドに座った。
テーブルに置かれていた皿を手に取り、スプーンで軽く混ぜた。
それを見てナミは嬉しそうに起き上がる。



 「ほれ」

 「・・・・熱くない?」



おかゆを軽く掬い取り、ゾロはナミにスプーンを差し出すと、ナミはそう言った。



 「自分で冷ませよ」

 「ムリ、そんな息吐いたら頭痛くなっちゃう」

 「・・・・・」



ヒクリと口端を歪めてから、ゾロはスプーンに向かってふーーーっと息を吐きかける。



 「ほらよ、もう熱くねぇだろ」

 「ふふっ」



ナミは嬉しそうに差し出されたスプーンをパクリと咥える。



 「おいしっ」

 「だろうな、ちなみにコックはキッチンで拗ねてるぜ」

 「あら、そうなの」

 「そりゃ『イヤ』とか言われちゃな」

 「だって・・・・」



話す間にも、ゾロはおかゆを冷ましながらスプーンでナミの口元に運んでいく。





 「・・・・・・・何で、おれなんだよ」

 「・・・・・別に・・・熱で訳分かんなくなってんのよ私」

 「ふぅん」

 「そうよ・・・」













少なめに盛られたおかゆを、ナミはきれいにたいらげた。



 「ごちそうさま!」

 「こんだけ食えりゃまぁ大丈夫だろ」

 「サンジくんに美味しかったって言っといて」

 「おぅ」



ゾロは皿をテーブルに戻して、立ち上がろうとする。



 「もう行くの?」

 「・・・・・・」



思わず、という風に出たナミの言葉に、ゾロはしばらく考えていたがまた座りなおした。
ナミは少し頬を赤くして、嬉しそうな顔をする。



 「お前はおれにどうしてほしいんだよ」

 「・・・・・別に、だから熱でおかしく・・・・」

 「もう下がってんだろ」

 「・・・下がってないわ」

 「どれ」



ゾロはまたナミの額に手を当てる。
そのままナミの目を覗き込む。



 「下がってるぜ」

 「下がってないわ」

 「どこが」

 「ずっとよ、ずっと熱が出てる・・・・」

 「・・・・・ふぅん」



そのままゾロは、その手をナミの髪の中に滑らせた。
ナミは抵抗しない。



 「汗、かいてんな」

 「うん、でもお風呂はダメだって。そこのタオルで拭くだけにしろって、チョッパーが」



ゾロがベッドの足元に目をやると、お湯をはったボウルにタオルが入れて置かれていた。
それを引き寄せて、タオルを取る。





 「拭いてやろうか」

 「・・・・抵抗できないわよ私、熱があるから」

 「おれもどうやら熱っぽいらしい」

 「・・・じゃあ風邪もうつらないかしら」

 「あぁ」

















 「遅いな、ゾロ」

 「お風呂かな」

 「は?」



キッチンに残ったままで、ウソップがポツリと言うと、
隣でお茶を飲んでいたチョッパーが答えた。



 「ナミに、お風呂はまだダメだから濡れタオルで体拭いとけって言ったんだ」

 「・・・・で、ゾロが遅いのと関係が・・・?」

 「だから、ゾロが・・・・・・」

 「・・・・・・いくら何でも展開早いだろう・・・・」



と言いつつも、ウソップはチラリとロビンに目をやる。
ルフィやチョッパーもつられてロビンを見る。

それに気付いたロビンは、仕方なく両手を交差させる。

だが目を閉じるとすぐに「あら」と呟いて、手を解いた。



 「ロ、ロビン?」

 「汗はすぐ拭かないとね・・・」



ロビンがにっこり微笑んでそう言ったので、ウソップたちは顔を赤くして騒ぎ出す。
ちなみにキッチンの隅のサンジは、これで再起不能となった。



2006/07/11 UP

『甘えたナミとゾロでラブラブ』
6/3にリクくれた方、ラブラブ・・・・かな・・・・?
とりあえず風邪に乗じて甘えてみました、ナミさん。

まだデキる前のゾロナミです。
そのわりには甘め?
隠れ家におけるロビンちゃんの能力は、主に覗き用に使われています(笑)。

生誕'06/NOVEL/海賊TOP

日付別一覧

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送