照。




こんな風に恋愛したことは今まで無かったし、実際そんな余裕もなかった。




私はゾロのことが好きだし、それを言葉にすることを恥ずかしいとは思わない。
自分の思いを自由に伝えることが出来るのは幸せなことだし、恵まれているのだと思う。

私がゾロのことを好きなように、ゾロも私のことを好きでいてくれる。
それはちゃんと分かっているし、ゾロがサンジくんのように甘い言葉を口にするような人間でないことも分かってる。



仲間と、好きな人と、一緒に同じ船に乗って旅をする。
これ以上の幸せを望むのは我儘なのかなと、思うこともある。





それでも、望んでしまうのだ。


ゾロからの言葉が欲しい、と。













ゾロは人前でベタベタするのを嫌う。
町に出ても、手も繋いでくれない。
寂しいとは思うけど、それがゾロの性格なのだと諦めるしかなかった。

狭い船の上で2人きりになれる時間も場所も、そうは無い。
だから時々私たちはミカン畑で会う。
そのときはゾロは私がいくらひっついていっても、拒絶はしない。
だから私はその時間が好きだ。
ゾロに触れていられるし、ゾロも私に触れてくれる。
ゾロの暖かさを感じていられるその瞬間で時が止まればいいのに、と何度も思った。















 「んナミすゎぁ〜〜〜んvvv おやつですよぉ〜〜〜vvvv」



ミカンの木の下のほうからサンジくんの声がする。



 「・・・・・・・」

 「・・・・おやつだとよ」



ゾロに抱きついたまま動かない私の肩を押しのけながら、ゾロが呟く。



 「・・・・おやつなんていらない。もう少し」

 「お前が行かなかったら他のヤツらが食わせてもらえねぇだろ。どっちにしろクソコックがココに呼びに来る」

 「・・・・・来たって、いいじゃない。どうせみんな私たちのこと気付いているんだから」

 「・・・・知ってるかどうかの問題じゃねぇだろ」

 「じゃあ何なの」

 「・・・・モラルの問題だ」

 「・・・・そんなの知らない」

 「いいから、行くぞ」




しがみつく私を無理矢理引き剥がして、ゾロは立ち上がり一人でキッチンに向かって行った。
それとすれ違いでサンジくんがやってくる。




 「ナミすゎんvv おやつですvv 今日は苺のミルフィーユを・・・・・ナミさん?」



目をハートにして階段からミカン畑を覗き込んできたサンジくんが固まる。

きっと私はすごい顔をしている。
泣くまいと我慢しながら、ムカつくんだか悲しいんだか分からない感情が胸の中で爆発しそうだった。

話しかけようとしたサンジくんを押しのけて、キッチンに向かったゾロの後を急いで追いかけた。













キッチンにはもうみんな揃っていた。
ゾロはちょうど椅子に座るところで、私が入ってきても顔を向けることすらしなかった。



 「遅ぇぞナミーー!!! おいサンジ、ナミも来たからおやつスタート!」

 「うるせぇクソゴム! ナミさんが何か・・・・・」



私を追ってきたサンジくんがキッチンに入ると、ルフィはガタガタを椅子を鳴らしておやつを強請る。
サンジくんは様子のおかしい私を気にしながら、それでもみんなのおやつの準備をし始める。





 「・・・・・ゾロ」

 「・・・何だよ」



キッチンの扉の前に立ったまま、ゾロを睨みつける。



 「・・・・ゾロ、私のこと好き・・・?」

 「・・・・・あぁ? 何言い出してんだてめぇ・・・」



小さな私の声に、ゾロは思いっきり眉間に皺を寄せて嫌そうな顔をした。
私は両手でぎゅっと拳を握る。

泣きそうだった。





 「ねぇ、好き?」

 「場所考えろよ」

 「場所なんてどうでもいいでしょ。好きならそう言ってよ」



おやつおやつ、と騒いでいたルフィも、私の様子に気付いて大人しくなった。
サンジくんの給仕の手も止まり、みんなしんとして見守っている。


私は周りが全く見えていなくて、ただひたすらゾロだけを見ていた。



 「ゾロ、言ってよ」

 「ふざけんのも大概にしろ」

 「・・・・ふざけてなんかない!!!」



溜息をついて答えたゾロに思わずカッとなって、大声を出した。
その時になってようやくゾロはまっすぐ私の目を見てくれた。





 「・・・好きじゃないのね」

 「・・・・・・お前なぁ・・・」



またゾロが溜息をつく。
今度は深く、長く。
それがすごく悲しくて、とうとう我慢できなくなって、涙が出てきた。




 「・・・迷惑だったんなら、早く言ってくれればよかったのに」

 「・・・おい、ナミ」

 「私ばっかり好きで、勘違いして」

 「ナミ」



いったん溢れると止まらなくなってしまう涙を両腕で拭いながら、私は自嘲気味に笑う。

怖くてゾロの顔が見れなかったので、俯いて必死に涙を止めようとしたけど一向に止まらない。
ナミさん・・・・、とサンジくんの哀れむような声が聞こえて、自分のみっともない姿にまた泣けてきた。


立ち上がったゾロが目の前に来ていたのにも、気付かなかった。






 「ナミ」

 「っ、ゾロ・・・」



突然腕を取られ、顔を上に向けさせられる。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔をゾロには見られたくなかったので背けようとしても、また無理矢理に向かされる。
それでも必死に抵抗した。



 「何よ・・・・もういいから」

 「よくねぇだろ」

 「だって!」




そう言ってゾロに顔を向けた瞬間、焦点の定まらなくなった視界に、ゾロの睫毛が見えた。


あ、結構長いんだ。


ふとそう思って、それからようやく自分がゾロにキスされていることに気付いた。




 「!!!!????!!??」




私自身も、そして周りで見ていたみんなも、声も出せず固まっていた。











時間にすればほんの数秒。
それなのに、このまま体の内側から食べられてしまうのではないかと思うほどのキス。














ようやく解放されて、
呆然とする私をゾロはジロリと睨みつける。



 「これで満足か!?」



そう叫んだゾロは、耳まで真っ赤にしてドカドカと足を鳴らしながらキッチンから出て行った。




 「ひゅーーー、やるなぁゾローー」

 「クソマリモの分際で・・・・・っっ!!!!」

 「すげぇ真っ赤だったな、顔・・・・」



クルーたちが各々騒ぎ立てるなか、私はただただそこに立ち尽くすのみだった。








満足か、ですって?

足りないわよ、バカ。




2006/07/05 UP

『ナミ→ゾロで、言葉で表現できないゾロに不安を感じる』
6/1にリクくれたみさサン、こんなんじゃダメっすか?
えーと、・・・・恥ずかしがりな剣豪なんです。
この2人はまだまだプラトニックvvv えへvv(笑)

ナミさんは可愛いキャラで行きたかったけど、
最後の言葉はどうしても言わせたかったので、
最終的なキャラ付けがおかしくなったのはもうムシです、ムシ。

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