命。






生き抜くためには、『裏』の道に進むしかなかった。
元々そういう素質があったのかもしれない。
どっちにしろ、この世界で得た技術が私を生かしてくれていた。



自分の体が健康ではないことはその頃から分かっていたが、どうすることもできなかった。
『裏』の仲間に紹介された藪医者に治せるわけもなく、
自分が一体どんな病気なのかも判らないまま日々を過ごしていた。

殺されて死ぬか、それとも病気で死ぬのが先か。
どっちでも構わないと思っていた。
結局死ぬんなら、同じこと。






ゾロに出会ったのは、17の時。

ファミリーの幹部クラスの男が、私の殺しの腕を話に聞いたらしく、
ボスであるゾロシアの前に私を連れて行った。
それまで私はフリーの殺し屋で、この地域の三大ファミリーからの仕事を請けることも稀にあったが、
大抵はそれらの傘下の組の仕事をこなしていた。
口コミで徐々に広がりつつあった私を、ゾロシアファミリーが一番に買い取ったというわけだ。

それからは、ゾロシアファミリーの殺し屋として仕事をこなし、
組の連中の、そしてゾロの信頼を確実に得ていった。







ゾロと男女の仲になるまで、そう時間はかからなかった。
私はゾロに惹かれていたし、ゾロも私を自分の女として見てくれていた。
私をナミと呼ぶのはゾロだけだったし、ゾロをゾロと呼ぶのも私だけに許されていた特権だった。


両親を早くに失って、まわりの全てを敵と思わなければ生きていく事などできなかった子供時代。
信頼できる人間も、安心できる存在も、誰一人いなかった。
人を傷つけ命を奪い、時には自分の体をも傷つけて、それでも私は生きようとしていた。
他人の命の上に存在した、それは目的の無い生。
単純に、死ぬ理由が無かったから生きていた。
生きる理由も、必要じゃなかったから求めなかった。



そうして出会った、信頼できる、安心できる男。
彼の傍に居る間、私は初めて生きる意味を感じていた。

この男に会うために、私は今まで生き抜いてきたのだ。
死んでもおかしくない状況で生きようともがいたあの頃の私は、
今この男の隣に在るために存在したのだ。


私に全てを与えてくれ、全てを受けいれてくれたゾロと彼のファミリーのために、
私はこれから生きていくのだと、心に決めた。






ゾロが連れて行ってくれた医者に薬をもらい、体に関しては問題は無かった。
仕事に支障をきたすこともなかったし、自分でも病気のことなど時々忘れてしまうほどだった。

仕事は、ゾロはやめてもいいと言ってくれた。
人を殺すこの仕事に、私が心を痛めていると思ってくれたのだろう。
だが、私はそんなことは構わなかった。
それが私の生きてきた道だったし、ゾロの隣に居るためにはそうすべきだと思っていた。

ただゾロに守られるだけの女にはなりたくなかった。
ゾロが私に信頼と安心を与えてくれるように、私もゾロに与えたかった。
仕事を成功させて、ゾロが褒めてくれるのが嬉しかった。
ファミリーの殺し屋としても、女としても、ゾロの求める存在でありたかった。





















発作が起きてから、薬を飲んでいないことに気付いた。

今さら、しかもこんな日に忘れるなんて。
もう、遅い。




こんなところで死ぬわけにはいかないのに。
ゾロに報告しなきゃ。

サンジーノを殺ったわ。
それに、宝石もこんなに。
だからいつもみたいに、褒めてくれるよね、ゾロ?







あなたのために生きて、あなたのために死にたい。




あなたと一緒に生きて・・・・・・・・・。




あなたと一緒に死にたい、という願いは叶いそうにない。




体の中から悲鳴が聞こえてくる感じ。
でもそれも、だんだん小さくなっていく。










ゾロ。


独りで死ぬけど、許してね。





今さらですが、ゾロシアファミリーネタです。
ナミバージョンです。
ナミさん、原作(?)では『幸せ死』なんでね・・・勝手に設定つけました。

2006/06/10

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