競。
「ゾロは誕生日は誰と過ごすんだ?」
夕食の途中、唐突にチョッパーが聞いてきた。
ゾロは何のことかと思ったが、
ここ数日、皆がそれぞれ『何が欲しいか』と探りをいれてきていたので、
自分の誕生日が近いことを知っていた。
チョッパーのこの質問もその類か、とゾロは考えて、
いつものように笑ってチョッパーに答えた。
「誰って、お前らとだろそりゃ」
「へへ、そっか」
「何だ、どうした?」
チョッパーが嬉しそうに笑っているので、ウソップが口を挟む。
「あのな、誕生日って、好きな人と過ごすんだろ?
だからゾロは誰と過ごすのかなーと思って」
「その『好きな人』てのは、恋人って意味だろ?じゃあさっきの答え違うんじゃねぇのか?」
ウソップがクルリと顔の向きを変え、ゾロに言う。
「・・・・・何だよ」
「今のをふまえて、ゾロは誰と過ごすんだ〜?」
「殴られたいか、ウソップ?」
「冗談です〜・・・」
ニヤニヤと笑いながら聞いたウソップだったが、
ゾロに睨まれて首をすくめる。
「今のをふまえるなら、私でしょ?」
堂々と言ってのけたナミを、皆が見つめる。
ゾロもそれを否定はしなかった。
ウソップは「そりゃそうだな」と納得し、食事を再開する。
だがここで、黙々と食事をしていたルフィが、突然立ち上がった。
「今のをふまえるなら、おれだろ!!」
「・・・・・はぁ!?」
その発言に、皆が呆れたように鼻息荒く仁王立ちしているルフィを見る。
「何であんたが恋人なのよ!!」
「恋人ってのは大事な人って意味だ!おれはゾロが大事だ!!」
「なっ!そういう意味でも私よねゾロ!?」
「・・・・・・・」
メリー号において、ゾロは皆から愛されていた。
いろんな意味で。
ナミとは男女の仲である。
それはクルーにも公認されていることだったし、
ゾロも自分とナミは恋人同士であると認識していた。
チョッパーはゾロを父親か兄のように慕っているし、
ウソップもそれに近いものがある。
ロビンも、冗談めかしてはいるが、おそらくはゾロのことを好いている。
ルフィはあの性格なので、
『ゾロが好きだ』という発言をしても、
それが『仲間』としてなのか『恋愛対象』としてなのかは、傍目には分からない。
だがそれでも、ゾロを好き、というのは確かな事実だった。
そして、コックですらも。
出会ったころは喧嘩ばかりで、それは今も変わらないのだが、
サンジはいわゆる『好きな子をいじめる』タイプだった。
それにゾロが気付いても、コレ幸いとばかりにサンジはゾロにちょっかいを出した。
ゾロも貞操の危機とは思いつつ、(本人には言わないが)決して嫌いな相手ではないため、
邪険に撥ね退けることができなかった。
ウソップたちからすれば、それは『いつかヤラれるな・・』という危惧を抱かせるものだったが。
そんなわけで、『誕生日を好きな人と過ごす』というチョッパーの言葉から端を発し、
キッチン内ではゾロにとっての『一緒に過ごす好きな人』という立場を巡り、
盛大な口論が発生していた。
「誕生日に過ごすんなら、『彼女』の私に決まってるでしょー!」
「船長のこのおれだ!!」
「おいゾロ、おれなら酒を腐るほど用意できるぜ?」
「あら、年上の女には興味ない?」
「サンジくん!モノで釣るなんて卑怯よ!ロビンも冗談やめて!」
「モノだなんて、これがおれの武器だよナミさーんv」
「冗談なんかじゃないわよ?」
「船長命令だ!ゾロはおれの!!」
「そんな船長命令があるかー!!」
4人の意味不明なやりとりを、ゾロは頭に痛みを感じつつ見つめていた。
(こいつら、何やってんだろうな・・・)
普通に考えれば、相手は『ナミ』しかいないだろう。
ルフィの言う『大事な人』というのも間違ってはいないが、
誕生日に過ごすだの何だの、というなら、やはりルフィたちではなくナミになる。
いくらルフィやサンジが、ゾロに恋愛感情で『好きだ』と言っても、
それは言葉だけで、実際に体の繋がりをもつほどの関係ではない。
ゾロが抱くのはナミだけで、他の人間に抱かれてはいないし、もちろんその気もない。
ゾロにとっての『恋人』であり、『一緒に過ごす好きな人』は、
4人がいくら討論しようとも、ナミしかありえないのだった。
もちろん仲間としてなら、皆同じように『大事な人』ではある。
しかし、4人はゾロの頭の中の結論には見向きもしない。
ナミなど喧嘩する必要は無いのに、必死にルフィらに口撃している。
「よーし!じゃあみんな、ゾロのいい所を言っていけ!勝ったヤツがゾロと過ごす!」
「望むところだ!」
「上等よ!」
「楽しそうね」
ルフィの提案に、3人は疑問に思うこともなくノる。
勝敗の判定は誰がどのようにするのか、そもそも基準すらないではないか、と
ゾロは言いたかったが、
今これ以上自分が口を挟むとまたエライことになりそうだっので、静観することにした。
「笑うとカワイイ!!」
「意外に照れ屋!!」
「たまにサンジくんより甘いセリフ吐く!!」
「髪が柔らかいわね」
「シャンプーのとき目ぇ閉じる!!」
「たまにカモメと話してる!!」
「町に出たら野良猫が後ついてくる!!」
「犬もついてきてたわこの間」
「寝言がカワイイ!!」
「昼寝してたら頭に鳥が止まる!!」
「酒瓶が空になったらちょっと寂しそうな顔する!!」
「爪きりが上手くできないみたいね」
「耳掃除も自分じゃ上手にできない!!」
「昼寝中によくビクっ!てなってる!!」
「冬になると枕抱いて寝てる!!」
「たまに鼻歌うたってるわよね」
はーはーと肩で息をしつつ睨み合う、ルフィ・サンジ・ナミ。
そして余裕の笑顔ではあるが、きっかり参加しているロビン。
おれの『いい所』を言い合うんじゃなかったのか、
しかも何でお前らそんなコト知ってんだ、とうんざりしつつ、
ゾロはとにかく4人の気がおさまるのを根気よく待っていた。
と思っていたら、4人の視線が急にゾロに集まった。
「な、何だよ」
「ゾロ!勝者は誰だ!誰と一晩過ごす!?」
「何だその一晩ってのは!!??いつ決まったそんなこと!!」
「さっき」
ルフィの問題発言に、ゾロは慌てて反論するが、
おそらく既に拒否権はない。
「「「「ゾロ!!」」」」
4人がゾロに詰め寄る。
「・・・・・・・ナミ」
ぼそりとゾロが答えると、ナミは嬉しそうに、かつ満足気に笑う。
残る3人はあからさまに不服な顔をゾロに向ける。
「てめぇ!!自分の好みで決めんな!ちゃんと判定しろ!!」
「好みで決めるのが当然だろうが!つーか何でおれがそんなこと言われなきゃなんねぇんだ!」
「サンジくん、見苦しいわよ?」
「ナミ!勝ったからっていい気になんなよ!」
「何よルフィ、文句あったら選ばれてみなさい」
「くそーーー!!!!」
「残念だわ・・」
得意げなナミに、全身で悔しさを表現するルフィとサンジ。
ロビンは変わらぬ余裕っぷりだが、こちらも本気で残念がっているようだった。
「・・・つーかお前ら勝ったとしても、おれと一晩何すんだよ。楽しいか?」
「「あぁ楽しい!!」」
ゾロの呆れ気味の問いにも、ルフィとサンジは声を張って堂々と答えた。
「することっつったら、ひとつだろ」
「・・・・何だよ」
サンジの言葉に、ゾロは嫌な予感を抱きつつも聞いてしまった。
すぐに後悔したが。
「そりゃ、セ」
「あーーーー言うな、何も言うな」
ゾロが耳を押さえて続く言葉を拒否している間に、
ルフィが新たなる提案を出した。
「じゃあ、順番でどうだ」
「は?」
「そりゃ名案だ」
「平等でいいわね」
「ちょっとー!ゾロが選んだの私よ!?」
「船長命令だ!」
「何よそれ!」
「まぁまぁ、で?順番は?じゃんけんするか?」
ルフィの新案で決定しつつあるこの場で、
ゾロの拒否権はまたも存在しなかった。
「おれの意見はナシか?」
「ナシだ」
「・・・おれの誕生日の話を、してるんだよな?」
「あぁ!」
「・・・・・・・・」
いつもの笑顔で応えるルフィだったが、
ゾロにはそれが悪魔の笑顔に見えた。
「ちょっとあんたら、元々ゾロは私のなんだからね!」
「何だと!最初に会ったのはおれだぞ!」
「私はあんたが会うもっと前からゾロのこと知ってたもん!」
「おれだって知ってたよナミさん」
「私も知ってたわ」
「知ってても、最初に会ったのはおれだ!!」
「早いモン勝ちなんて、卑怯よ!」
「何でだよ!正当な主張だ!!」
「なぁゾロ、当日はおれらと夜通しゲームでもするか・・・?」
「あぁ・・・・そうする・・・」
ウソップとチョッパーに肩をポンポンと叩かれて、
ゾロは『誕生日なんぞ来なくていいのにな・・・』と溜息をついた。
「メリー号の皆でゾロ争奪戦」
11/5に拍手でリクくれた方。
完璧にゾロ総受になってしまいました。
あははー。
多分ウソップとチョッパーのポジションが一番イイ。
2005/11/26
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