飲。











 「彼女づらすんな!!」











思わず口に出たその言葉。
おれたちの今の関係に、それは禁句だったのに。












おれが叫んだ瞬間、
キャンキャン喚いていたナミは、何かを言おうとしたがぎゅっと口を結んで、
泣きそうな顔で部屋を飛び出して行った。

キッチンには、蛇口から水が流れたまま、
ナミが洗っていた皿が残された。













あれから10日が経つ。
ナミからは何の連絡も無い。
おれも、電話やメールをするタイミングを逃してしまっている。






おれたちは、恋人同士ではない。
端から見ればそういう関係に思われるだろうし、
友人たちの中には、そう誤解しているヤツらもいる。


お互い、好意を抱いているのは分かっている。
分かっていて、いまだ友人のままなのだ。


あいつは、おれが言うのを待っていた。
避けてきたのは、おれだ。
この関係があまりに安定しすぎていて、
口に出してしまえば、何かが終わってしまうと、
おれはそう思っていたんだ。









女友達に告白されたことを知ったナミが、
おれに向かって嫌味を言ってきたのが10日前。

告白されて、正直悪い気はしない。
それが惚れた相手でなくても。
だが断った瞬間に、睨まれて『調子乗ってんじゃないわよ!』と怒鳴られちゃ、
ムカつくのが普通だろう。
それなのに、さらにあいつからの嫌味の嵐。



おれはいつものように笑って流せばよかったんだ。
あいつのああいう性格も含めて、
おれはあいつに惚れているのに。
どうしてあんな事を言ってしまったのか。



後悔したときには、もう遅い。
ナミは部屋を出て行った後だった。
すぐに追いかけるかメールをするなり、すべきだった。

でも、はっきりしないおれたちの関係が、それを留まらせた。

まだ付き合っているわけではない。
おれが一言、あいつに言えばいいだけの話なのに。
妙なこだわりが、おれの手を止めた。







つーか、何でおれがこんなに悩んでるんだ?
あいつから言ってきてもいいんじゃねぇか。


だがあいつは待っている。





おれの、好きだという一言を。

















散乱した部屋を見渡す。
いつもは、ナミが2日に1回は来て、掃除をしてくれていたから、
男の一人暮らしにあるまじき清潔な部屋だったのに。

10日前から、掃除機すらかけていないこの部屋の隅に、
あいつの買ってきた雑誌が転がっていた。


表紙の文字が目に留まる。
パラパラとめくって、そのページを開く。
占いなんて、信じちゃいない。
それでも今は、何となく見てみる気になった。



運命数だの何だの、ややこしい計算をして、はじき出されたおれとナミの相性。





・・・・・・・32%。





別に100%とか90%を期待していたわけではない。
が、結構ヘコんだ。

こんなに悪ぃわけねぇよ、クソ。











部屋の壁には、写真がベタベタと貼ってある。
ナミが勝手に貼っているものだ。

旅先のものや、友人たちと写した無意味な日常の写真にまぎれて、
おれとナミ、2人きりの写真がある。
よく見ればこっそりと何枚もあって、思わず苦笑する。

10日、見ていないナミの顔。

今改めて見ると、一緒に写っている女友達には悪いが、
ナミは美人だ。
加えてスタイルもいい。
まわりは引き立て役もいいとこだ。


あいつを狙っている男を、おれは何人も知っている。
おれたちが付き合っていると勘違いしているヤツらも、現実を知っているヤツらも、
この10日間の様子を知れば、チャンスとばかりにナミに言い寄ることだろう。

あいつは、つけいられてホイホイ乗るような女じゃねぇ。
だが、仮にもしそうなったとしても、
おれにそれを咎める権利など、無い。
今の、おれには。











ちくしょう、と呟いて、冷蔵庫を開ける。
中には、ビール1本しか入っていなかった。
食うものもロクに無い。
大概、ナミが買い物をして料理もしてくれていたのだ。
あいつがいなけりゃ、この部屋に冷蔵庫など、無用の長物。



最後のビールを取り出して、あける。
カシュ、と冷たい音が部屋に響く。





あいつは待っているのに、
おれはいつまでも言わなかった。
挙句の果てに怒らせて、
おれは汚い部屋で、食うものもなく、一人でビールを飲む羽目になっている。
情けないこと、この上ない。











安定が失われることを恐れて、
自分から言い出すことをためらって、
結局一番大事なものを失おうとしている。

プライドか、意地か。
どっちにしろ、くだらない。
お互いに意地を張り続けた結果が、コレだ。
これ以上我慢比べしてて何になる?
まだ始まってもいないのにケンカ別れなんて、冗談じゃねぇ。










ビールを一気に飲み干して放り投げ、
荒れた部屋をかき回して携帯を探し出す。



今頃あいつも、携帯握り締めて待っている。
謝って、飲みに来ないかと誘えばいい。



そしてあと一言。

たった一言を告げたなら、
おれたちはやっと、新しい関係をスタートできる。



お前はきっと、
やっと言ったねと
嬉しそうに怒るんだろう。




「スキマスイッチの『飲みに来ないか』でゾロナミ」
10/27に掲示板でリクくれた友子サマ。
まだデキてない2人になってしまいましたが・・いかがでしょう・・・。
でもゾロナミ!ゾロナミソング!!
かなり歌詞に+αしちゃってますが。

なんとなくね、友達以上恋人未満な2人に思えたので。
そんな方向で。
料理も掃除も買い物もしてくれてるのに、恋人じゃないんだってさ。
いい御身分ですこと、ロロノアさん(笑)。

2005/11/21

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