惚。






前回島に着いてから4日。
早くも次の島に到着した。

ここのログが溜まるのは数時間。
コックであるサンジはともかく、
ナミは前の島で大体の買い物は済ませていたので、
今回はゾロと2人、デートを兼ねて町に出ることにした。




雑貨屋やケーキ屋など、
女の子が好みそうな店の並ぶ通りを歩きながら、時折チラチラ覗く。



 「結構カワイイ店、多いね」

 「まぁ、女は好きそうだな」

 「あ、上にも何かあるのかな」

 「行くか?」

 「うん!」



通りの脇に階段があり、その上にも何やら店があるようだったので、
そのまま並んで上がった。

上からはちょうど下りてくる人間が1人いたが、
別に狭い階段でもないので避ける必要も無い。

下りてくる若い女は、エプロン姿で両手で前が見えなくなるほどのダンボール箱を抱えていた。
どこかの店員で、商品でも運んでいるのだろうが、
足元も見えないようで探りながら一段ずつ下りている姿は、
どう見てもムリがあり、フラフラと危なっかしかった。


そして2人とすれ違った直後、
あっ、と女が小さく声を上げた。
同時に、その体がフワリと宙に浮く。


その声と気配に気付いてナミが慌てて振り返ると、
女の抱えていた箱の中に入っていたらしいテディベアの人形をそこらに散乱させながら、
大きな音を立ててダンボール箱が階段の下に落ちた。







 「・・・・・大丈夫か」





ナミは一瞬背筋が凍ったが、
よく見るとその女の腰を、隣にいたゾロがしっかりと抱えていた。
女は呆然と、ダラリと力も抜けてゾロに捕まえられていた。



 「・・・あ・・・・・・・・」

 「おい」



ゾロに再び声をかけられて、固まっていた女はようやくはっと気付いた。



 「あ・・・・あ!あ、ありがとうござました・・っ!!」



顔を真っ赤にして慌てながら、女はゾロの腕から逃れようとじたばたし出した。
女の両足がしっかりと階段についたのを確認して、ゾロは手を離した。



 「気ぃ付けろよ」

 「は、はいっ!」



女はペコリと頭を下げ、階段を小走りに下りて箱を拾い、
散らばったテディベアを集め始める。

ゾロも下りながら、足元のクマを拾っていく。



 「あ、すいません!ありがとうございます・・・」

 「持ちすぎなんだよ、無理しねぇで1箱ずつにしとけ」

 「はい・・・」



ポイポイと箱の中にクマを投げ込みながら言うゾロを、
女は頬を染めて見つめる。



 「じゃあな」



全て拾い終わって、ゾロはまた階段を上り始める。



 「あ、あの!!」

 「何だ」



数段上ったところで、女は裏返った声でゾロを呼んだ。



 「あの・・・これ、お礼に・・・・」



そう呟いて女は、可愛らしいテディベアをゾロに差し出した。



 「・・・・・・・・」



ゾロにしてみればお礼にそんなモノを貰っても困るだけなのだが、
女は腕をまっすぐに伸ばしてゾロにクマを突きつける。



 「・・・・・・じゃ、まぁ、貰っとく」



仕方なく、ゾロはそのクマを受け取った。
上がっていくゾロを、女はいまだに熱い目で見送っていた。






拾うのも手伝うこともできず、ただその一部始終を眺めるしかなかったナミの隣に、
ゾロは追いついて隣に並んだ。



 「これ、いるか?」

 「・・・・・あんたには、似合わないわよね」

 「似合うと言われても困る」

 「・・・・えらく、優しいじゃない」

 「・・・・階段はな、お前も気ぃつけろよマジで」





見知らぬ女性に対する、ゾロの思いがけない優しい態度。

基本的に、ゾロは優しい。
特に女子供には、優しいのだ。
ナミもそれは知っているし、階段での事故にゾロが敏感なのも知っている。
だが、その優しさを独り占めしたい、という思いがあるのは否定できない。

自分の恋人が、あんな風に女性を助けることができるのだ、
自分の恋人は、あんな風に女性が惚れてしまうほどの男だ、
そうやって自慢したい気持ちも、もちろんある。

だけど、
自分以外の女に、あんな風に接しないでほしい。
本人に言えば絶対に『アホか』と返されるので、口にこそはしない。

それに、ゾロがナミ一筋なのは、ナミ自身が一番知っていた。











途中で大きな本屋があり、ナミはゾロを振り返ってじっと見る。



 「・・・・行ってこいよ、おれ外にいるから」

 「できるだけ早くすませるから!!」



嬉しそうにナミは中に入っていった。
ゾロはその様子をチョッパーみたいだな、と思いつつ苦笑する。











1時間はたたないころ、ナミが本を数冊抱えて外に出ると、店先にゾロの姿はなかった。
『迷子!?』と思って回りを見渡すと、
右手に広場があり、その人ごみの中にゾロの姿はあった。

待ち合わせの場所に使われているのか、
ゾロと同じように広場のオブジェらしきものによりかかったり、
ベンチに座って人を待っている姿が多く見られた。

ゾロの眉間に皺が寄っているのを見て、
待たせすぎたかな、とナミは走りよって声をかけようとした。
人ごみを避けながら進んでいき、少女2人連れの横を通り過ぎようとしたとき、
その2人の会話が耳に入った。



 「あの人、かっこよくない?」



少女たちの目線から考えて、『あの人』とはおそらくゾロのことである。
ナミはゾロに声をかけるのをやめて、自然を装って立ち止まり、隣の会話に耳を澄ます。



 「どの人?」

 「あそこに立ってる、髪の毛が緑の人。」



100%、ゾロのことだ。



 「えー?わ、ほんと」

 「どーしよ!私すっごいタイプなんだけど!!」

 「でもあれって待ち合わせなんじゃないの?彼女と」

 「やっぱそーかなー・・・・でもかっこいー・・・・」

 「どーすんのよ、声かけるの?」

 「えー!恥ずかしー・・でもなー・・・」



ナミよりも若干年下の少女は、ゾロを見ながらキャーキャーと盛り上がっている。
確かに、今日のゾロはあの腹巻をつけていない。
服も、『デートだから』とナミが揃えてきたのだ。
その分、ナミから見てもかっこよさ倍増となっていた。

その男は私の恋人よ、とナミは名乗り出てやりたかったが、
さすがに大人気ないのでやめた。

様子をしばらく見ていると、
ゾロの傍を通り過ぎる女は、全員と言ってもいいほど、一度振り返る。
そしてゾロを見て、頬を染めつつ、友人らしき連れの人間に話しかけたりする。
一人で歩いている女も、チラチラと何度もゾロを振り返る。

今のところ声はかけられていないようだったが、
この調子ではいつ女にひっかけられるか分からなかった。
ゾロのことだから付いていくわけはないのだが、ナミからすれば気分のいいものではない。
先程のテディベアの女のように、
自分の男が、世間の女から頬を染めて見られることに優越感を感じないわけではないが、
タダで見られているのもシャクだった。





 「あ」



色々とナミが考えているうちに、ゾロと目が合った。

ゾロは不機嫌そうな顔で、ナミに向かって歩き始める。



 「うそ、やだ、こっち来るよ!!」

 「どうすんのよ!声かけるの?」

 「わ、わ」



隣の少女たちは勘違いして、慌てている。





 「遅ぇんだよ」

 「・・・・人が多かったのよ」

 「まぁいい、買い物は済んだんだろ」

 「えぇ」

 「腹減った、何か食いに行こうぜ」

 「そうね」



そう言ってゾロは、ナミの本を取って歩き出す。
少女達が、呆気にとられた表情で自分たちを見ていることに気付いたナミは、
わざとゾロの腕に自分の腕をからませた。
そのままひっついて歩く。



 「やっぱ彼女いたじゃん!!しかも超美人!!」

 「ショックー・・・でもかっこいーー・・・」

 「あんたに勝てるわけないでしょ!」



後ろで聞こえるその会話に、ナミは小さく笑ってしまった。



 「何笑ってんだ」

 「いや、ね?私たちって、美男美女みたいよ」

 「はぁ?何言ってんだお前」












遅めの昼食をとるために入ったレストランで、
ナミは食事をするゾロの顔をじっと見つめる。

今までじっくり考えたことはなかったが、
確かにゾロはいい男だった。

もちろん知ってはいたが、惚れた人間の贔屓目かとも思っていた。
ああも世間からウケるほどの男前だったか、とナミはしみじみと観察する。



 「・・・さっきから、何ジロジロ見てんだ」

 「んーー、・・・ゾロって、モテたでしょ」

 「・・・・あぁ?」

 「今さらだけど、あんたってかっこいいわよね」

 「・・・・・・・何だ、気持ち悪ぃな・・・」



真面目な顔でそう言うナミを、ゾロが不審気に見返す。



 「正直に言ってみただけ」

 「あのなぁ、男は顔じゃねぇぞ」

 「はいはい、あんたは中身も男前よ」

 「・・・・本当、今日は気味悪ぃぞ」



何かとんでもない請求でもされるのか、とゾロが身構えるが
それを無視してナミは店員に『水くださーい』と声をかける。



 「失礼します」



女の店員が近づいてきて、ナミのグラスに水を注ぐ。
続いてゾロのグラスにも注ごうとした。



 「あっ」



店員は手を滑らし、派手な音を立ててグラスは床に落ちた。
割れた破片と、中に残っていた水がゾロの足元に飛んだ。



 「もっ、申し訳ございません!!!」

 「大丈夫?」



ナミの声にも気づかず、店員は真っ青になってしゃがみこみ、
ゾロの靴の上の破片を拾い始める。



 「お怪我はございませんか!?」

 「いいよ、別に大して濡れてもねぇ」

 「ねぇ貴女、手で集めたら危ないわよ?誰か道具を・・・」



バイトか、まだ新人なのだろう。
動転して店員は周りが見えなくなっているようで、
涙目で必死に手で破片を集めていた。





 「おい、指切ってんぞ」



ゾロはそう言って、しゃがみこんでいた店員の腕を掴んでグイとひっぱりあげた。
店員は指を切ったことに気付いてもおらず、自分の失敗にただただ泣きそうになっていた。
だが腕を掴まれて、顔を上げた瞬間ゾロと目が合って、
一気に真っ赤な顔になった。



 「ナミ」

 「はい」



ゾロの一言だけでナミは理解して、
バッグから絆創膏を取り出し、ゾロに渡す。

ゾロは傷口に破片が残っていないのを確かめ、それを店員の指に巻いてやった。





 「・・・・おい、大丈夫か?」



ゾロの処置を赤い顔のまま固まって見つめていた店員は、
急いで立ち上がった。



 「は、はい!すいません!!」



ようやく他の店員が道具を携えてやってきて、破片をかき集めて、
店長らしき人間がゾロとナミに深々と頭を下げた。

店長に連れられて、チラチラとゾロを振り返りながら、
店員は店の奥に戻って行った。









 「・・・何だよ、どうした」


ゾロが食事を再開しようとして、ナミの視線に気付いて言った。
ナミはまたもじっとゾロを見つめていた。



 「今日って、何なの」

 「何が」

 「あんた、モテすぎよ」

 「はぁ?何言ってんだお前」

 「ていうか無駄にかっこよすぎよ!何、惚れ直させる気!?」

 「訳分かんねぇぞお前」



















 「いい日だったな今日は」

 「何でよ」

 「メシ、ただになっただろ。あとクマもタダだぞ、お前の好きな『タダ』だ」

 「・・・・いい日なんだか、ね」

 「何だよ、不満か」

 「とにかく、気合は入ったわ」

 「何の」

 「もっとイイ女にならないと!!」

 「・・・・は?」

 「甘やかしちゃダメだわ!まだまだイイ女になるために努力しないと!」

 「それ以上なってどうすんだ?」

 「・・・っ、だから何で今日はさらっと男前なのあんたはーー!!」





「女の子にモテモテでとにかくめちゃくちゃかっこいいゾロ」
10/23にメルフォでリクくれたねーこサマ!
・・・これ、かっこいいかなぁ・・・?

『かっこいい男』について考えてたら、
頭が『ぼしゅぅっ!』となりまして。
うぅむ、難しい。
ゾロはあんなにかっこいいのに!私に文才や能が無いばっかりに!
まぁ基本は天然タラシ(笑)。

2005/11/20

生誕'05/NOVEL/海賊TOP

日付別一覧

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送