頬。



 「読書日和ねー」

安定した海域に入って、メリー号は順調な航海をしていた。
航海士・ナミは、
とりあえず誰もいない甲板にデッキチェアを置き、
風を読みつつも、溜まっていた本を読破することにした。
チェアに寝っ転がって、サンジの準備してくれたアイスティーを横に置き、
さて、と気合を入れて1冊目を手に取った。


1冊を読み終え、2冊目をめくったが
穏やかな波の揺れと風の気持ちよさで、
彼女は本を胸の上に置いたままで眠りに落ちた。






 「ナミさんおかわりはー・・・・・・・、と」



ナミのドリンクを確認しようと、サンジはキッチンから出てきた。
見下ろすと彼女は本を持ったままで熟睡していた。
階段を下りてナミの傍まで行く。
ナミの持っている本をそっと取って、チェアの脇に置く。
床にある、半分ほど空になったグラスを取って、サンジはキッチンに戻ろうとした。
・・・戻ろうとした、が。






小さく寝息を立てて眠るナミの姿は、普段の強気な大人びた態度とは違い、
年齢よりも幼く見えた。


 (・・・やっぱ可愛いなぁ・・・・)


やわらかそうな頬に、無意識に手が伸びる。
煙草を持っていないほうの手をその頬に寄せる。


 (っ、やべ)


触れた肌のあまりの気持ちよさに、手を引っ込めようとするが、
それはできなかった。
自分の頬にあるサンジの手を、ナミが掴んだのだ。







固まるサンジ。
心臓がバクバクと早鐘を打つ。

そんなサンジの心情も知らず、ナミはさらなる追い討ちをかける。
愛しいものにそうするかのように、その手に頬を摺り寄せてきた。







 (マジかよちょっとマジでやべぇってコレ洒落なんねぇ)


 (これってナミさん脈ありなのか!?)


 (いくか、おれ!?いっとくか!?)


 (据え膳食わぬは何とやら、って言うしな!)


 (でもナミさん起きたら殴られるかな・・・)


 (いやでもすげぇ気持ちよさそうに寝てるし当分は起きねぇかな・・・)


 (じゃちょっとくらい・・・・・・・)


 (ほっぺたにキスするくらい・・・・)


 (あれだ、親愛のしるしだ)


 (それならナミさんだって笑って許してくれるさ!)







コンマ何秒の間に自分へ無理矢理言い聞かせ、煙草を足でもみ消す。
ゆっくりと身をかがめて、顔を寄せていく。












が、
唇が触れる寸前、一番聞きたくない単語を彼女の口から聞いてしまった。








 「・・・ゾロ・・・・・・・」






ものすごーーーーく幸せそうに眠る彼女が
愛しそうに呼ぶ男の名は、ゾロ。



 「・・・・・・・・・」

再び固まるサンジ。

 「・・・・・・・・・・・・・・・くそっ」


姿勢を戻し、ゆっくりとナミの手をほどく。


 「おれってかわいそうなヤツだよなぁ・・・・」














 「残念だったな」








突然上から声がした。
見上げると、キッチンから出た正面の手すりに、
片肘をついたゾロが居た。

ニヤリ、と意地の悪い笑顔を浮かべている。




 「フラれたな」

 「盗み見盗み聞きとはイヤラシイ奴だなてめぇは」

 「これ取りに来たんだよ」

手に持っていた酒瓶を掲げる。

 「そしたらてめぇが襲ってるのが見えたんでな」

 「人の許可なく持ってくな!それに襲ってねぇ!」

 「大声出すとナミが起きるぞ」

 「っ、」

慌ててサンジは口を押さえてナミの方を振り返った。
が、ナミは相変わらず幸せそうに眠っている。

そんな顔をする夢にはゾロが出てるのか、と思うと腹が立ってきた。






 「よし・・・・、おい!マリモ!」

 「誰がマリモだコラ」

 「おれはナミさんとキスしてぇ」

 「ストレートに言ってんじゃねぇよ」

ゾロが呆れたように言う。

 「こうなったらてめぇとやって、ナミさんと間接キス、ってのはどうだ?」

 「・・・・・・・・・・・・・あぁ!?何言ってんだてめぇ!?」

 「大声出すなって」

ナミの方をチラ、と見てサンジがニヤリと笑う。



 「眉毛に飽き足らず脳みそまで渦巻いたか?」

 「おれは至って正常だぜ?」

新しい煙草に火をつけて咥え、煙を吐き出す。

 「・・・・・・冗談はいい加減にしとけよクソコック」

 「結構本気だぜぇ?そっちに行くから待ってろ?」

そう言って階段へと足を向けた途端、
脱兎の如くゾロはミカン畑へと消えた。








 「ふん」



してやったり、という笑顔を浮かべて、
サンジは煙草を咥えなおした。


 「さて、眠れる美女のためにケーキでも焼くかな」



あら、サンゾロ?
サナゾサナゾ!
でもゾロ受も好きさ。
ゾロとナミが愛されてりゃ何でもいいの。
あ、全ての基本はゾロナミですが。
ところでナミさん、甲板なんかで寝るかな。
後甲板とかならまだしも。
まいっか。
てかサンジくん、えらい純情になっちゃった。
手ぇ握られて動揺しまくってますが。
そしてゾロは耳が良すぎです(笑)。

でもサンジくん、相変わらず切ないね。
いつか報われる話を書いてあげたいものです(笑)。
この続きを書くような書かないような。

2005/01/21

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