拗。








確か、今日だよな?








数日前にナミが読んでいた新聞の日付。
もうそんな時期か、と思ったのを覚えている。
それから計算しても、やはり今日のはずだ。


おれの誕生日は。






いや、別に祝ってほしいわけじゃないが。
この年で盛大なパーティーを開いてもらいたいわけでもない。


ただ、ここまで放置されると、逆にムカつく。


まさかこいつら、本気で忘れてんのか?
それともおれにそんなものは必要ないと、却下か?


どっちにしろ、気に入らねぇ。





・・・・別にひがんでるわけじゃねぇ。

とりあえず、気に入らねぇ、それだけだ。





















というわけでこの日、ゾロの機嫌は非常に悪い。
夕方になるにつれどんどんと悪くなっていった。

夕食の時間、キッチンに入るなりゾロの眉間の皺が深くなる。

テーブルには、いつもと変わらぬ食事が並んでいた。





 「どうしたのゾロ、突っ立ってないで座りなさいよ」

 「さっさと座れよ、無くなんぞ」




ゾロの後からキッチンに入ったナミは、
入り口で立ち止まっているゾロの横をすり抜けて、不思議そうに聞いた。
サンジは忙しく動き回りながら、
目障りだと言わんばかりに目つき悪くゾロを睨む。




 「・・・・・いらねぇ」




 「・・・は?何言ってんだ?」

 「どうしたのよ、まさか体調悪いの?」

 「別に。いらねぇ」



無愛想にそう言い残して、ぷいっと向きを変えてゾロは出て行った。






 「何だぁアレ」

 「何だか怒ってるみたいだったわね彼」

 「具合でも悪いのかな」

 「まさかゾロに限って。酒の呑みすぎで腹いっぱいなんじゃねぇの?」

 「また勝手に盗りやがったかアイツ・・・」

 「・・・・・・?・・・」
















翌日、ゾロは男部屋から出てこなかった。

ぶっちゃけ、不貞寝していたのだ。



クルーたちは別にゾロの様子を見に来るわけでもなかった。
一度チョッパーが覗きに来たが、
体調不良では無いと言うと、あっけなく出て行ってしまった。



 (薄情モンだな意外にあいつも・・・・)



ゾロはさらに不貞寝しまくって、気付けば夕食の時間になっていた。
いつもならばナミあたりが、仕事しろー!と起こしに来るだろうに、
結局それすらもなかった。



 「ゾロ!夕食よ!」



ナミが呼ぶ声が、扉の上から聞こえた。

ムカムカしつつ、さすがのゾロも腹が減ったので
部屋を出てキッチンへと向かった。










そしてキッチンの扉を開けた瞬間。








 「誕生日おめでとーーー!!!」



ウソップが作ったらしいクラッカーが大きな音を立て、
同時にカラフルな紙ふぶきがゾロに降りかかる。




 「・・・・・・は?」



目を丸くして固まるゾロをクルーたちが取り囲む。



 「おめでとうゾロ!」

 「今日一日あんた寝てたから、準備しやすかったわー」

 「まぁ座れ、今日だけは酒もたらふく飲ましてやる」



 「・・・・・・・・・・・」



ナミが腕を取って席に連れて行こうとしても、
ゾロの体は動かなかった。
口をぼんやりと開け、いまだ目を見開いて固まっている。



 「ゾロ?」

 「どうしたんだゾロ?やっぱり体調悪いのか!?」



ナミやチョッパーは心配してゾロの顔を覗き込んでくる。



 「・・・いや、つーか、昨日じゃねぇか?」



ゾロもようやく気を取り直して、
口元を手で隠しつつ、ボソリと呟く。



 「え?何が?」

 「・・・誕生日・・・」

 「何言ってんのよ、今日でしょ?11日」

 「・・・・今日、11日か?」



困惑した表情のゾロに、サンジは苦笑する。



 「お前、寝すぎて日付の感覚すら忘れたか?」

 「今日は11日よ」



ナミもクスクス笑いながら答えた。



 「・・・いや、ナミの新聞の日付が・・・」

 「新聞?最近届いてないわねそういえば」

 「2、3日前に読んでたじゃねぇか」

 「だから届いてないってば。前の月のじゃないの?
  暇だったからコラムとか読み返してたもん」

 「・・・・・・・ほー・・・・・・」





微妙な表情で皆から目を逸らすゾロを見て、
ロビンが思いついたように口を開いた。



 「剣士さんたら、もしかして拗ねてたの?」

 「・・・・・・」

 「あ、ゾロったら、だから昨日機嫌悪かったのねー!?」

 「・・・・違ぇよ・・・」

 「何だ何だ、お前もかわいいトコあんじゃねぇかよー」

 「だから違う!!」



サンジがからかうようにそう言って、
ニヤニヤと笑いながらゾロの肩を叩く。
その手を振り払いながら、ゾロはサンジを睨みつける。
しかしサンジは気にもせず、とうとう我慢できずに噴き出した。



 「笑ってんじゃねぇよクソコック!!」

 「誤魔化すなって!そんな顔で否定したって誰も信じねぇぞーゾロ?」

 「うるせぇ!!!」

 「照れるな照れるな」

 「照れてねぇ!!!」



ルフィやウソップまでもが、ゾロの様子を見て楽しそうに笑う。
うっすら顔の赤くなったゾロは、皆の腕を振り解いて刀に手をかける。



 「ちくしょう!!てめぇらソコ並べ!!叩っ斬ってやる!!」



チャキ、と刀を光らせても、
クルーは笑うばかりで身構えもしない。






 「もーゾロったら照れ屋さんvv」

 「お?何だ?嬉しくて泣きそうか?あぁ?」

 「うるせぇうるせぇ!!クソ!さっさとメシ食わせろチクショウ!!」

 「アセんなって、夜はこれからだぜー?」

 「そうそうvv」










色んな意味で、
マジでちょっと泣きそうだったのは、
こいつらには絶対言わねぇ。




「皆に誕生日を忘れられて拗ねるゾロ」
10/17に拍手でリクくれた方。
勘違いゾロになりました・・・。

照れる剣豪。
ふふ。
ベタな展開ですがね。

2005/11/03

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