過去拍手・其の三十六 (2010/11/30〜2011/06/03)

某詩集から勝手にお題拝借シリーズ 041〜042



041:雪のおくりもの

「できた」

誰もいない後甲板で、真っ白に積もった雪の上に自分の足跡だけを付けながら、
ナミは手の平の上の小さな雪のかたまりを見つめた。
クルーのほとんどはまだ夢の中だ。
だがキッチンにはサンジの気配がある。
こんな時間から起き出して、みんなのための朝食の仕込みをしているのだろう。

甲板上にはうろうろと歩き回った男の足跡があったから、
おそらくは先程までの自分と同じように「最初の足跡」を堪能したに違いない。
ナミは微笑んで、手に乗せた雪だるまが溶けないうちにキッチンへと向かった。


「おはよう、サンジくん」
「おはようナミさんw 雪、すごいね」
「うん、足跡いっぱいつけちゃった。ルフィのことガキだって笑えないわ」
「おれもおれも」

二人は笑いあって、それからサンジがナミの手の上の物に気付いた。

「作ったの?」
「うん。ねぇこれ、冷蔵庫に入れてもいい?」
「もちろん」

サンジは優しく微笑んで、二人は冷蔵庫の前に移動した。
食材を少しよけて、空いたスペースに小さな雪だるまをそっと座らせる。

「あいつに?」
「ゾロが起きるころには外の雪、溶けちゃうかもしれないから」
「あー、なるほど」

バタン、と扉を閉め、ナミはサンジに微笑みかける。

「ルフィに食べられないように、見張っててね」
「貴女への愛に誓って、死守します!」
「よろしく!」

そう言ってキッチンを出ようとするナミを、サンジは呼びとめた。

「ナミさん」
「なに?」
「ナミさんって、本当かわいいね」
「あらありがと。お礼に雪うさぎでも作ってきてあげようか?」
「おれの愛が燃え過ぎて溶けちゃうかも」

真面目な顔で言うサンジに、ナミはクスクスと笑った。

「大丈夫よ、あの雪だるまでも溶けないんだから」
「あー、それはごちそうさまです」
「ふふ」

苦笑しているサンジにナミはもう一度笑いかけて、ゾロの眠るベッドに戻るためにキッチンを後にした。


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某詩集より、2月10日。



042:みちしるべ


甲板上に、雪だるまの道しるべ。
大小様々なそれは、デザインも仕上がりも個性あるものだった。
綺麗に丸く作られたものや、ぐちゃぐちゃの形のもの。
小物がきちんと揃っているものもあれば、手足が適当に刺されていたり、何故か本数が多かったり。
誰がどれを作ったのか予想しつつ、ナミはその道しるべを辿っていった。

ゴールと思われる地点には、雪だるまが溢れていた。
その中心には一人の人物。
この雪の中、昼寝をするような人間は一人しかいない。
ゾロはたくさんの雪だるまに囲まれて眠っていた。

おそらくはルフィらがしかけた悪戯なのだろうが、ゾロを囲むように雪だるまが並べられていて、
さらにその緑の頭の上に小さな小さな雪だるまが乗っていた。
気温が低いためどうにか溶けずにいるそれは、完成度から見てウソップ作と思われた。

しかしここまでされて起きないなんて、もしかして死んでるんじゃない?と思いながら、
ナミは器用に雪だるまをよけながらゾロの傍にしゃがみこんだ。
頬に触れてみるとちゃんと温かったのでほっとする。
そのまま頬に手を当てたままでいると、温もりに気付いたのかゾロはうっすら目を開いた。

「おはよう」
「あぁ…て、何だこれ…」
「多分ルフィたちからのおくりもの。壊しちゃダメよ」
「すげぇ数だな」

ゾロは驚いた表情で自分の周囲を見渡し、それから頭の上の違和感に気付いた。

「待って」

ナミはゾロを制止して、頭の上の雪だるまを取ってやった。
少し溶けかけているそれをゾロに渡すと、小さなそれの完成度の高さにゾロも思わず笑った。

「器用だな、あいつら」
「冷蔵庫の中にもあるのよ」
「へぇ」
「私からのおくりもの」
「…へぇ」

小さな雪だるまは、ゾロの手の上で完全に溶けてしまった。

「あー、溶けちゃった」
「ま、雪で作りゃそんなモンだ」
「ねぇ、中入ろ。こんなとこにいたら、自分が雪だるまになっちゃうわよ」
「そんときゃお前が溶かしてくれ」
「いやよ」

ナミは立ち上がり、ゾロに手を伸ばすと微笑んでみせる。

「そのときは、冷蔵庫の中で永久保存してあげる」
「…物騒だな」

苦笑して、ゾロはナミの手を取った。


冷蔵庫の中の小さな雪だるまは、二人が戻ってくるのをちょこんと座って待っている。


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某詩集より、2月11日。


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