過去拍手・其の二十五 (2007/10/01〜2007/02/01)

涙の滲む10のお題 1〜5



01:あなたが初めて笑った日


森が燃え、田畑が焼かれ、家が焼け落ち、
それに人の焼ける匂いと血の匂いが混じる。
耳に届くのは止まぬ発砲と爆発の音。
それ以外に聞こえるのは、決して与えられることは無い微かな慈悲を求める人の声。
あえぎ、叫び、そして絶望の中で息絶える。

地獄絵図のような戦場で、あんたと出逢えたのは神様が与えてくれた奇跡。

泥に汚れ血にまみれ、必死に生きようともがいてそれでも死んでいく人たちの中で、
純真無垢な笑顔を見せたあんたを生かすのが、私がこれから生きることの意味になった。

どんな薬よりもどんな手当てよりも、あんたの笑顔が私を生かしてくれた。

あの笑顔を忘れないで。
どんな荒地でも、どんな逆境でも、たとえそこが地獄でも、
あんたの笑顔は誰かをそこから救い出して、
そしてあんた自身も生かしてくれる。

どうか笑っていて。
私は忘れない。
あんたと初めて出会って、あんたが私に向けてくれた笑顔を。


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ベルメールさん語り…のような感じで。
さて、1本目はとりあえず置いといて、
2本目からは一応続き物風に…。


02:それでもあなたは凛として、


「ねぇ、人を殺したことある?」

唐突にそう尋ねると、ゾロは眠そうに片目を開いた。

「…何だよ、急に」
「聞いてみただけ。 答えたくなかったら答えなくていいわ」
「……別に」

ゾロはそう言って、頭の後ろで枕代わりにしていた腕をほどき胸の前で組んだ。
それからまるでこちらの頭の中を読むかのように、じっと見つめてきた。

「……人を殺したこと、ある?」
「……ある」
「……そう」
「…何なんだ、急に」
「ずるいわ」
「……は?」

ぼそりと呟くと、ゾロは予想外の反応とばかりに目を丸くする。

「人殺しのくせに、それなのに」
「………」
「何であんたはそんなにキレイなの」
「……何だって?」
「全然汚れてなくて、どうしてそんなに」

ゾロに抱き寄せられるまで、自分が泣いていることには気付かなかった。

「ナミ」
「どうして私は」
「ナミ」

うなじのあたりを撫でられて、すんと鼻をすすってゾロの胸にしがみつく。

「…キレイだとか汚れてるとか、そんなのは知らねぇけどよ」

耳元で、ゾロの低くて優しい声がする。

「おれにはお前が汚れてるようには見えねぇぞ」
「……ありがと」

フっと笑って、背中に手をまわすとゾロは強く抱き締めてくれた。


あんたはいつだってまっすぐで、凛として。
そんなあんたに汚れていないと言われれば、そうなのだろうかと思いそうになるけど。

でもあんたは、本当の私を知らない。
キレイなあんたの背中を見るたびに、私がいつも泣きそうになっていることも。


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アーロン前のゾロナミですよ。
既にデキてますが…。


03:私、嘘をつきました


「お前最近どうしたんだ」

いつもは必ずといっていいほど誰かがいる甲板で、
偶然か必然か2人きりになった瞬間にゾロが声をかけてきた。

「どうって?」
「……」

ゾロが言いたいことは分かっていた。
この1週間、ゾロと寝ていない。
それどころか2人きりで恋人同士のように時を過ごすことすら無かった。
他のみんなと同じ、ただの仲間と変わらぬ態度。
別に邪魔をされたわけではない。
私が、私の意志でそうしたのだ。
2人の間に何かあったわけでもない。
ゾロはもしかしたら自分が何かしたのかと考えているのかもしれないが、何も無い。

ただ私が、耐えられないのだ。

どんなに刀や手を血で染めても、まっすぐで強くてキレイなゾロが、
私といると汚れてしまう気がして。

きっと気のせいなんだろう。
ゾロに話せばバカらしいと笑われるに決まってる。
それでも、それでも。

どうせ此処には長く居られはしないのだ。
それなら少しでも早く、終わらせたほうがいい。
単なる自己満足でも、それでもそうするしかできなかった。

「もう飽きちゃったのよ」
「……何だと?」
「別れよっか」


鋭い視線を寄越してくるゾロの目をまっすぐ見返すことなど、きっとこの胸の痛みに比べれば簡単な事。


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まだまだアーロン前。
時間の長さが原作と違うけど…まぁそれは諸事情ということで(笑)。


04:どうして何も言ってくれないの?


一方的な別れの言葉のあと、ゾロは何も言わなかった
理由を問うことも、責めることも。
翌日からのゾロの態度は、傍から見ればまったくいつとも変わらないものだった。
ゾロにとって私と別れることなど、大した問題ではなかったのかもしれない。
そのことに傷ついている自分に気付いて、
自分にはそんな権利は無いことを思い出して自嘲した。

でも、
せめて罵ってほしかった。
ワガママばかり言ったのに、飽きたからとふいと関係を終わらせる。
迷惑な女だと、怒って欲しかった。
そうすれば、少しは救われたかもしれないのに。

この期に及んで救いを求める自分の愚かさが、みじめで虚しくて、
でもそれが私が受ける罰なんだろうと思った。


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短くてごめんなさい。
とりあえず別れたあと。


05:見えないところで傷ついていた君の後姿


深夜の女部屋で日誌を書いていて、何となく船の揺れ方が気になった。
念のため、ペンを置いて甲板に向かう。

月明かりの差す甲板に出て、海と空を見つめる。
肌で感じる海の様子には、何ら異常はなかった。
気のせいだったのだろうと思って、そのまま手すりに両腕を置いて月明かりに浮かぶ波の形を眺める。

「まだ起きてたのか」

その声に振り返ると、首からタオルをぶら下げたゾロが倉庫の前に立ってこちらを見ていた。

「…あんたこそ、こんな夜中にどうしたの」
「風呂入ってた」
「ふーん」
「嵐でも来んのか?」

ゾロはそう言いながら私の隣にやってきて、同じように海面を覗き込んだ。
それから自分には分からないというように首をかしげて、向きを変え手すりに寄りかかる。

「え? いいえ、大丈夫よ」
「そうか」
「……」
「……」

何となく沈黙になって、でもゾロはその場から離れようとしない。

「…明日にはきっとレストランに着くわよ」
「そうか」
「美味しい料理食べれるといいわね!」

ゾロに向かってそう言って微笑んだ。

「………」
「……ゾロ?」

目を合わせているのに返事をしないゾロの様子に、少しだけ首をかしげる。

「…お前は、上手く笑うな」
「え?」
「いや…それともおれだけか」
「…何が」
「何でもねぇ」

ゾロはそう言って、タオルを頭からすっぽりとかぶってごしごしと乱暴に動かした。

「…ゾロ…?」
「悪ぃ、ナミ」
「え」

ゾロは髪を拭く手を止め、だがタオルは外さなかった。
そのせいで顔が見えない。

「おれはまだ当分」

腕が伸びてきて、私の頭をくしゃりと撫でた。

「お前に笑ってやれねぇよ」

それからそのまま顔が近づいて、つむじあたりにキスを落とされた。

「おやすみ、お前も早いとこ寝ろよ」

ゾロは背中を向け、男部屋の入り口へと足を向ける。
呆然と立ち尽くして、でもすぐにゾロの方を振り返った。
キレイな背中が目に飛び込んでくる。

「ゾロ!」
「おやすみ」

ひらひらと手を振って、だが一度も振り返ることなくゾロは男部屋に降りて行った。


「…ゾロ」


笑いかけて、なんて言わないよ。
あなたを傷つけたのは私だから。


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ゾロは泣いてたのかしらね。
みなさんのご想像にお任せします。
ナミさんのことが大好きなゾロです。
まだまだアーロン前で後半に続く…。


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