過去拍手・其の十六 (2006/09/08〜2006/10/02)

初歩的恋愛で10のお題 6〜10




06.名前を呼ぶだけで緊張するのは何故?

好きな言葉はたくさんある。

お金。
みかん。
海。
いのち。


生きること。
家族。
ベルメールさん。
ノジコ。

仲間。


それから、それから。


いつの間にか、大事な言葉になっていた。

それを口にできることが、嬉しかった。

何度も言いたいと思った。


それなのに、どうしてこんなに緊張するのだろう?



『ゾロ』


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ナミさん視点で5本行きますよ。


07.昨日とは違って見える世界

早起きの料理人すらまだ起きていない、薄暗い甲板に出て空を見上げた。
今日はいい天気になる。
そう思いながらまだひんやりと冷たい空気を思い切り吸い込んで、それからゆっくりと吐き出す。

ずっとずっと胸の中に溜めていた想いを、ようやく吐き出した。
自分がこんな感情を持つ日が来るなんて、と一人で笑った。
それを告げたことがよかったのかは分からない。
同じ船で旅する仲間に、持っていい感情なのかは分からない。

それでも、告げたかった。
知っていてほしかった。


ゴトリ、と背後で足音がした。
誰のものなのかはすぐに分かる。
いつもいつも、その人の姿を探していたから。

振り返って、笑いかける。
男は気まずそうに、それでも律儀に「おはよう」と言った。
「昨日言ったこと、本当だからね」
その声が震えていたことに、男は気付いただろうか。
男は少し考えたように視線を巡らせて、それから私を見て、口を開いた。


私の世界は、確かに昨日とは変わった。


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『男』はもちろん、ゾロです。
あのゴツイ足音はゾロしか当てはまらないですよね。


08.繋いだ手が溶けるように熱い

静かにドアを開けて、中に入る。
消毒薬の匂いがツンと鼻につく。
軽く中を見渡して、ベッドの上に横になる人影に目をやった。
胸の上にグルグルと巻かれた白い包帯が目に痛い。
その男は眉間に皺を寄せて目を閉じ、眠っていた。
ベッドの脇に置かれた椅子に座って、その顔をじっと見つめる。

『海賊狩り』ともあろう男が、こんなにも無防備な姿を晒すなんて。
だらりと体の横に投げ出された手に触れてみた。

熱い。

どれほど出血したのか、蒼白なその顔をじっと見つめる。
『海賊狩り』が来てくれることを、夢に見たこともあった。
それが現実になって、今その男は目の前に居て。
こんな傷を負っていたというのに、此処まで来てくれた。

何だか泣きそうになった。


ピクリと男の指が動いたかと思ったら、触れたままだった私の手をぎゅっと握り締めてきた。
「・・・なんつー顔してんだ、お前」
「・・・ゾロ」
眉間に皺を寄せたまま、ゾロは私を見上げてくる。
「お前がその顔は、オカシイだろ」
「何でよ・・・」
「笑えよ」
「・・・・・・」
「おれは寝るからな」
「ゾロ」
そう言って、ゾロはすぐに目を閉じた。
お礼を言う暇も無いじゃない、と思って少し笑った。

繋がれたままの私の手まで、熱くなった。


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アーロン後の診療所内にて。
まだデキてはいない2人です。


09.お前にだけだと言われたら

何だか窮屈で、うーんと唸って体をねじった。
目を開けると、太い腕が私の体にからみついている。
首をねじって背中を覗くと、大口を開けて寝こけている男が一人。
その両腕でしっかりと私の体を抱きしめたまま、何とも気持ち良さそうに眠っている。
正直、まだ残暑厳しいこの時期にコレはやめてほしい。
こっちはじっとりと体に汗をかいて寝苦しくて目が覚めたというのに、この幸せそうな顔。
少しムカついたので、向きを変えてその顔を正面から覗き込み、鼻をつまんでやった。
ふが、と間の抜けた声を出して首を振った男は、それでもなお眠り続ける。
こうなったら意地でも起こしてやる、と思って両手を使って鼻と口を塞いだ。
しばらく動かなかった男だが、次第に顔が赤くなってきたかと思ったら、
何やら変な声を発しながらバチっと目を開けた。

「・・・・何しやがる・・・!」
「寝てたから」
「寝てる人間を窒息させるのかお前は」
「だって、気持ち良さそーーに寝てたから」
「・・・何が気に食わないんだよ・・・」
ぶーーと頬を膨らませて睨むと、男は苦笑してまた私を抱き寄せる。
まるで、お気に入りの抱き枕のように。
だから、暑いんだってば。

「・・・あんた、いつも女と寝たらこうやってるの?」
「・・・あ?」
「昔の彼女とかさ、こうやって抱きしめて寝てたの?」
「何言ってんだお前?」
「何って」
男はさらに強く私を抱きしめて、髪に顔を埋めてクンクンと鼻を鳴らす。

「お前だけだ」
そう言って、あっという間に寝息を立て始めた。


あんなに寝苦しかったのに不思議、何だか妙に心地がいい。


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甘いね!
愛があれば暑苦しさも吹っ飛ぶらしい(笑)。


10.額に触れる優しい温もり

体が熱い。

息を吐くたびに喉が焼けるように熱くなって、
息を吸うたびに杯が悲鳴をあげる。
朦朧とした頭では何も考えられず、
今自分が何処にいるのか、それすらも分からない。

死んでしまうのか。

死ぬものかと、死んでたまるかと、今まで必死に生きてきた。
どんなに罵られてもどんなに傷つけられても、生きてやると。
それなのに、こんな訳の分からない病気で死ぬのかと思うと情けない。

自分の体が自分で動かせない。
言うことを聞かない。
針路を見たいのに。
この船を、進めなければいけないのに。
どうして私はこんなところに。
情けなくて悔しくて、苦しくて、気付かないうちに泣いていた。

誰かの手が、額に触れた。
ひんやりと冷たい。
低い声が私の名を呼ぶ。
返事をすることはできないと分かっているだろうに、何度も呼ぶ。
私の熱を奪って、触れる掌の温度が私のそれと同じになる。
何故だかそれが嬉しかった。


その声とその温もりに必死にしがみついて、死ぬものかと心に誓った。


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ケスチア感染時のナミさん。
これもデキてはいない2人です。


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