過去拍手・其の十五 (2006/07/01〜2006/09/07)

あなたの生まれた日に捧ぐ7題



『貰った言葉、いつまでも忘れないから』

「ゾロ、今日は戻らないで」
「あ?」
「こっちにいてよ」
「いいけどよ・・・・・」

男部屋に戻ろうとしたゾロの腕を、ナミはぎゅっと掴んだ。

「どうした」
「誕生日なの」
「・・・・あぁ、明日は3日か」
「うん。だから、居て」
「お前がそう言うんなら、別に」

そう言ってゾロは再びシーツにもぐりこんだ。

「何か、らしくねぇな。どうした」
「別に」

ゾロの胸にすりよって、ナミは顔を隠す。

「ゾロ」
「何だ」
「傍に居てね」
「・・・どうしたんだよ、本当に」
「どうもしない」
「・・・・・傍に居るよ」
「・・・」
「おれはお前の傍に居る」
「・・・・・ありがと」


「・・・日付変わったぜ」
「うん」
「誕生日おめでとう、ナミ」
「・・・・ありがと」

子供のようにしがみついてくるナミの頭を撫でながら、ゾロはつむじのあたりにキスをする。

「今後もよろしく」
「・・・・よろしく」

ゾロの言葉にくすりと笑って、ナミは目を閉じた


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ナミ誕特別拍手。
ゾロとナミ。


『手のひらサイズのプレゼント』

「なぁナミ、おれ何をあげていいのかわかんないから、考えたんだ」
「なにって?」
「誕生日プレゼント!」
「そんなの・・・気持ちでいいのよチョッパー」
「おれお金も宝石もあげられないから、だから、今日一日ナミの手伝いするよ!」
「手伝い?」
「おれに何してほしい?肩もみでも掃除でも、海図描くのでも、何でもするよ!」
「何でも言うこと聞いてくれるの?」
「あぁ!」
「・・・・じゃあ、ちょっと来て」
「? ・・・わっ!」

ナミはチョッパーを抱え上げ、甲板に腰を下ろした。

「ナナナナナナミ?」
「今日は私ゆっくりしたいから、だから一緒にお昼寝して?」
「それっておれ、手伝いになってる?」
「なってるわ、最高よ?」
「ふーん・・・・ならいい! じゃあ昼寝しよう!」
「おやすみ、チョッパー」

膝の上で早くもウトウトし始めたチョッパーの頭を撫でながら、ナミは微笑む。
柔らかい毛が手に心地良い。
共に歩んでくれるこの温もりが、安らぎを与えてくれる。
出逢えた奇跡に感謝して、ナミはチョッパーを抱きしめて目を閉じた。

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ナミ誕特別拍手。
ナミとチョパ。


『蝋燭の灯火がまるで宝石のよう』

あれナミさん!入ってきちゃダメだよー!」
「だって、どこ行っても追い出されるんだもん。ゾロ寝てるし」
「そりゃみんな色々準備が・・・・」
「ここにいちゃダメ?」
「・・・そんな顔されちゃ・・・!!」
「ふふっ、いてもいいのねっ?」
「夜のお楽しみにしときたかったのになぁ〜・・・」
「何を? あ、そのケーキ?」
「えぇ、おれの愛がこれでもかってくらい詰まったバースデーケーキですvv」
「おいしそうv」
「あとはろうそく立てて・・・・・」
「ふふ、子供みたいね」
「小さいときはこんな風にしてました?」
「え? えぇそうね・・・・ベルメールさんがいたころはね、3人で・・・・」
「・・・・すいません」
「何謝ってるの」
「いや、その・・・・」

ナミは昔を思い出すように、目を細めてケーキを見つめていた。
薄暗くなり始めたキッチンで、サンジはシュッとマッチを一本擦った。

「サンジくん?」
「フライングだけど・・・・」

サンジはそう言って、ケーキにろうそくを一本一本丁寧に立て、ゆっくりと火を点けていく。

「・・・・・10本までしか、私は知らないわ・・・・」

サンジの手の動きを見つめながら、ポツリとナミが呟く。

「・・・またこんな風に、誰かが私のためにろうそくに火を点けてくれる日がくるなんてね。
 あの頃は・・・・考えてもなかった・・・・・」
「ナミさん・・・・」
「誕生日って、嬉しい日だったのよね・・・忘れてたわ」
「来年は、ろうそくが1本増えますから」
「来年・・・・」
「またみんなでこうやって、お祝いですよ」
「・・・そうね、ありがとう」

ろうそくの明かりに照らされたナミの笑顔は、サンジにはこの世の何よりも美しい宝石のように見えた。

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ナミ誕特別拍手。
ナミとサンジ。


『いつもより、暖かくて』

「何だ、どうしたナミ?」
「うん、日誌がひと段落ついたから。休憩」
「夕飯楽しみだなーーサンジのことだからめちゃくちゃ豪華だぞーー」
「そうね、さっきケーキ見ちゃった」
「・・・なんだ、元気ねぇな?」
「・・・そう?」
「誕生日だろ?笑ってろよ」
「・・・幸せすぎると、逆に怖くなることってあんたは無いの?」
「ねぇな」
「そう・・・」

「ナミ」
「え、」


ルフィは腕を伸ばして、ナミの体にからめて一気に引き寄せた。

「きゃ!」

そのままメリーの頭の上にストンと着地させられたナミは、はーっと息を吐く。

「もう、急にこういうことするのやめてってば!」
「ほら、日が沈む」
「え・・・」

ルフィに拳を振り上げようとしていたナミは、言われて振り返る。
メリー号は、沈んでいく太陽に向かって進んでいた。
オレンジ色の太陽に照らされて、雲も海も朱に染まっていく。

「キレイね・・・・」
「あの太陽が、明日は反対側から昇るんだよなぁ」
「まぁ、そうね」
「んでまた沈む」
「そうよ」
「お前がどれだけ不安になってても、今日は終わるし明日は来る」
「・・・・・・」
「でもな、ナミ。おれたちはメリー号にいるんだ」
「・・・・・・」
「ずっと一緒だ」
「・・・そう、ね・・・・」
「泣くなよ。誕生日なんだから、笑ってねぇとダメだ」
「・・・分かってる。今だけよ、今だけ・・・・」

ルフィに麦わら帽子を被せられて、ナミは少しの間泣いていた。


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ナミ誕特別拍手。
ナミとルフィ。


『明日からはまた、新しい私に』

キッチンでは、航海士の誕生日を祝うパーティーが始まっていた。
既にほろ酔い気味のウソップが、遅ればせながら・・・と呟いてグラス片手に立ち上がった。

「えー、誕生日おめでとうナミ!」
「ありがとウソップ」
「新しいナミに、乾杯!」
「新しい?」
「ん? お前は今日、生まれ変わるんだぜ」
「・・・生まれ変わる?」
「誕生日がくるたびに、みんな新しい自分になるんだ」
「・・・じゃあ過去は? 過去は忘れちゃうの?」
「違うぜナミ。
 昨日までの1年間の上に、今日からの1年間を重ねていく。そうやってお前は大きくなっていくんだ」

ウソップは目を閉じて、一人でうんうんと頷きながら続けた。

「窓の外を見ろ! 今夜は満月だ。
 あの月に届くまで、おれたちはどんどん自分を積み重ねていくんだぜ。
 これまで過ぎたそれぞれの1年間が無くなるんなら、到底届きゃしねぇだろ?
 だから全部重ねて、その上に新しい自分を乗せてくんだ!」
「・・・来年も?」
「ん? あぁ、当然だ」
「再来年も?」
「あぁ、ヨボヨボのじーちゃんばーちゃんになるまでだって、まだまだだ!」
「・・・・・ありがと、ウソップ」
「へ? あ、あぁ。 よーし、それじゃ主役が嬉し泣きしてるうちに、かんぱーーーい!!」
『かんぱーーい!』



私が生きてきた過去に、不必要なものなど何一つない。
すべてのことが今の私を作り上げ、これからの私を作っていく。
そして新しく生まれ変わる私を、きっと彼らはいつまでも共に祝ってくれるのだろう。

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ナミ誕特別拍手。
ナミとウソップ。


『生まれてこれて、幸せよ』

「元気になった、航海士さん?」
「え?」
「今日一日、誕生日なのに何だか元気がなかったから」
「・・・・前はね、誕生日嫌いだったの」
「・・・・?」
「私だけが一人で年をとっていって・・・。まだ何もできていないのに、どんどん時が過ぎていく。
 ひとつ年を取るたびに、自分が過ごしてきた1年間が何の意味もなかったような気になって。
 あいつらと出会って、まぁ色々あって、そんなのを思うことはなくなったんだけど。
 今度は逆に未来が怖くなったの」
「そう・・・・」
「今のこの生活が、いつかなくなるのかと思うと。
 来年の誕生日が、今年みたいに来なかったらどうしようって」
「・・・・・」
「・・・でも、みんなと話して、ふっきれたわ。
 私、来年も再来年も、ずっとずっとみんなと居る。
 絶対に」
「・・・・航海士さん」
「なに?」
「生まれてこれて、幸せ?」
「・・・・・・それを悔やんだときも確かにあったけど、でも、私幸せよ」
「そう・・・・それはとても素敵なことよ」
「そうね・・・ロビンは?」
「え?」
「ロビンは、幸せ?」
「・・・・・えぇ、幸せよ。みんなや・・・あなたに出逢えたから。
 ・・・誕生日おめでとう航海士さん、あなたが生まれてきてくれた事に感謝するわ」
「・・・ありがとう」

2人は微笑み合って、グラスをカチリと合わせた。

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ナミ誕特別拍手。
ナミとロビン。


『何年経っても特別な、日』

子供のころは、いつも彼女たちに祝ってもらっていた。
豪華ではなくとも、暖かいバースデイパーティーだった。

10代の頃は一人で過ごすことばかりだったけど、
それでも、誕生日からどんなに日にちが経って帰ろうと、
彼女はいつも私にプレゼントを用意してくれていた。
それはシンプルなアクセサリーだったり、航海術の本だったり。
経済的に余裕があるとも思えなかったのに、
毎年、彼女は用意してくれていた。
でも私は、プレゼントなんていらなかった。
誕生日に、誰かが祝ってくれる、
誕生日に、私が帰る場所であってくれる。
そのノジコの存在が、私には何よりの贈り物だったのだ。

今の私には、帰る場所が2つある。
あの村と、そしてこの船の上。
私の誕生日を心から祝ってくれる仲間たち。
遠く離れてしまった姉も、きっと今祝ってくれている。


私はこの日に感謝する。
私を育ててくれてありがとう。
ともに生きてくれてありがとう。
出逢ってくれてありがとう。

ここに居ていいよと言ってくれる。
ここに帰ってきてと言ってくれる。
そんな彼らに私はきっと、来年も再来年も、
感謝の気持ちを捧ぐだろう。

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ナミ誕特別拍手。
誕生日おめでとう、ナミさん。


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