*注意*

・これは2010年9月17日にブログにアップしたものです。
・多少の加筆・訂正があります。
・ツイッター診断のお題ネタです。

・『攻めが料理をして、受けがパンツを盗まれる、ドタバタな話、蜘蛛の糸を登場させるべし』です。









「何でおれがこんな事…」
「あんたにも責任があるからよ。しっかり止めなかったじゃない」

そう言ってナミはにっこりと微笑んだ。
それが魔女の笑みだと知っているゾロは、はぁと大きなため息と共にフライパンを握る手に力を込めた。

「ほら、早く。おなかすいた」
「うるせぇな…」

ナミが美しい笑顔の下に怒りを隠している理由と、ゾロがコックの聖域であるはずのキッチンで料理をしている理由は共通したものだった。


遡ること30分ほど。
メリー号の甲板では紐にぶら下げられた洗濯物が太陽の光を浴びながらフワフワと風になびいていた。
良い天気が続く、というナミの判断の元でいっせいに洗濯が行われ、男性陣女性陣揃って各自の洗濯物をやっつける中、サンジは一枚の布を前にしゃがみこんで悩んでいた。
甲板の上に落ちていたその小さな布は、男なら誰でも目を留めるであろう代物だった。
つまり、女性物の下着である。
やたらに小さくてやたらにレースがついていて、そしてやたらに男心を刺激するその布切れを、サンジはしげしげと見つめそれから意を決して手に取り握りしめた。

「……何してんだよ、お前」

手にした瞬間に背後から降ってきた声に、サンジは思わず叫び声をあげそうになるのを必死に抑えて立ち上がった。
振り返るとそこには洗濯かごを抱えたゾロがいて、呆れたようにサンジの手を見下ろしている。

「変な気起こさないほうが身のためだぞ」

ぎゅうと握りしめられ、本当にただの布切れにしか見えないそれをサンジはグッとゾロの眼前に掲げた。

「…つってもお前、下着だぞ!?」
「下着だろ」
「落ちてたんだぜ!」
「落ちたんだろうなそりゃ」
「頂くだろ普通!?」

開き直って言いきるサンジの姿に、ゾロは何も言えずただ深いため息をこぼす。
サンジは周りの人影を確認したのち、ぴらりとそれを広げてみた。
明るい太陽の下で見る薄いオレンジ色の下着はやけに眩しくて、サンジは無意識に息を漏らした。

「悪いことは言わねぇ、元に戻しとけ。もしくは干しとけ」
「…なぁ、これどっちのだろうな…」

ゾロの忠告をガン無視して、サンジは下着を見つめたままポツリとつぶやく。
言っても無駄だと諦めて、ゾロはボリボリと頭をかきながらそっけなく返事をした。

「ナミだろ」
「…なんで即答だ」
「見たから」
「………」

これ以上は聞くまい、聞いたらむなしくなるだけだ…と自分に言い聞かせて、サンジはまた下着を握りしめた。

「で、どうすんだ」
「もらう! だって落し物だ! いやきっと神様からの贈り物だ!」
「落し物なら届けるのが筋じゃねぇのか」
「知るか! おれは海賊だ」
「………」
「…ナミさんには言うなよ、お前も男なら分かるだろ!?」
「………」

どうすべきか、ゾロが言葉を選んでいると、急に背筋が冷たくなった。
それはサンジも同じだったようで、二人は同時にゆっくりと同じ方向へと顔を向ける。
ミカンの木の間からどす黒いオーラと共に鋭い視線を送ってくる人物に気付いたのも同時で、サンジは慌てて下着を背中に隠し、やましいことのないはずのゾロも身を固くした。

「何やってるのかしらサンジくん…?」
「え、いや、何も」
「いいから隠したものを出しなさい」

氷よりも冷たい声でそう言われて、サンジはおそるおそる両手を前に出した。
ふわりと甲板へ降りて、ツカツカとヒールを鳴らして二人の前にやってきたナミは、サンジの差し出した下着をむしるように取ると、にっこり微笑んだ。
その笑顔で一瞬気が緩んだ瞬間、ゾロとサンジの脳天に強烈な拳骨が落とされる。
二人は同時に頭を押さえて甲板に崩れるようにしゃがみこみ、ナミはフーッと自分の拳に息を吹きかけた。

「ご…ごめんなさい…」
「何でおれまで…」

ナミは仁王立ちで二人を見下ろし、どこぞかの将軍のように沙汰を言い渡した。

「バツとして今日のお昼ご飯はゾロが作ること。サンジくんはキッチンに入室禁止。夕方までメリーにぶら下がっててもらいます」
「え!?」
「はぁ!?」

どこから取り出したのか、ナミは太いロープを両手で握りピンと張ると、魔女の笑みを二人へ向けた。



そして今。
キッチンではゾロの作る野菜炒めが完成しつつあり、ナミは珍しいその後ろ姿を面白そうに見つめている。
どうにか4人分まで作ったところで、ゾロはナミを睨みつけた。

「おい、これじゃ全員分とルフィの分作るのに夜までかかるぞ」
「いいじゃない」
「…勘弁してくれ。コック元に戻せ」
「い・や」

本来ここで腕をふるっているはずのサンジは、現在メリーの首に括りつけられたロープで、海へ向かって逆さづりになっている。

「頭に血ぃのぼって死ぬぞ」
「下半身に血が行ってるんだから、ちょうどイイじゃない」
「………」
「それよりも、サンジくん的には自分以外の人間がキッチンでめちゃくちゃやってる方が堪えてると思うわよ」
「……頼むから、本当もう勘弁してくれ」

懇願するようなゾロの目をちらりと見たあとで、ナミは小さくため息をついた。

「あーもう、しょうがないわね。あ、刀かして」
「あ?」



刀を一本ぶら下げて、ナミとゾロはメリーへと向かった。
二人並んで手すりから身を乗り出して見下ろすと、グルグル巻きのロープに拘束された半泣きのサンジがそこにきれいに逆さでぶら下がったままでいた。

「コック、もう死んだか?」
「生きとるわアホ! てめぇ、キッチン壊してねぇだろうな! 包丁咥えたり食材無駄にしたりすんじゃねぇぞ! ボロボロにしやがったら承知しねぇからな!!」

ぶら下げられている状況よりも、サンジはキッチンの様子を心配して逆さづりのままキャンキャンと吠えている。
確かにナミの言うとおりだとゾロは思いつつ、死んでないならまぁいいかと乗り出した身を戻した。

「サンジくーん、反省したー?」
「んナミさん! しました!すごくしました!!」

笑顔のナミが覗き込んでいることに気付いたサンジは、目をハートにしながら器用に腹筋を使ってナミに近づこうとじたばたしている。

「じゃあ、もしまた下着が落ちてても盗らないわね?」
「…………はい!」
「不合格」

微妙な間の開いたサンジの答えにナミは冷たい声でそう言い放つと、ゾロから借りた刀を振った。

その身を吊るしていたロープが切れ、ああああと叫ぶサンジはしぶきを上げて海へと落ちた。
ナミのまさかの行動に慌ててゾロも覗き込んで、メリー号のコックが海中へと消えるのを見て「あーあ」と声を漏らした。

「お前、さすがにこれは無ぇだろ。あんな縛られてちゃ泳げねぇぞ」
「やだ切れちゃったわ。あれロープじゃなくて、蜘蛛の糸だったのかしらね?」

肩をすくめながら平然と言ってのけるナミに「魔女め」と呆れたように呟いて、ゾロは今日の昼飯・夕飯確保のために海へと飛び込むのであった。



2010/09/17UP、2011/06/12加筆訂正

まぁベタなネタですよね…。
でも下着落ちてたらとりあえず拾うだろうよ。

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