*注意*

・これは2010年7月11日にブログにアップしたものです。
・多少の加筆・訂正があります。
・ナミ誕当日の、ツイッターでのゾロbotとナミbotのやりとりに萌えて書いたものです。
・botって何ぞや?という方はご自分で調べてください(丸投げ)。私もよく分かりません。

・というわけで、ゾロナミ@7月3日です。



レッツスクロール!














「ゾロ、こっち来て」
「あぁ?」


笑顔のナミは芝生甲板でちょいちょいとゾロを手招きした。
呼ばれたゾロは嫌な気配を感じつつも、口答えはせずに素直に近寄る。
なんせ今日は7月3日、航海士の誕生日である。
無駄に抵抗して機嫌を損ねるわけにはいかないのだ。


「なんだよ」
「誕生日プレゼント」
「う……」


金もなければ、サンジのような料理の腕があるわけでもない。
今夜のパーティーを前にして何のプレゼントも用意できていないゾロは、顔をひきつらせつつ冷や汗をかいた。
プレゼントは『好意』であって、それが無いからといってナミがクルーを責めることはない。
だがそれはあくまでも『物』に対してなのであって、その分肉体労働や借金追加などの『プレゼント』に変換されてしまうのである。

ゾロも今回はおそらくは肉体労働に変換されるんだろうな、と覚悟しつつ、一体どんな用事を押しつけられるかとナミからの次の言葉を待った。


「そこ座って」
「……そこ、か?」


機嫌良く微笑んだナミが示したのは、芝生の上である。
ゾロは意味が分からずもう一度繰り返したが、ナミは変わらぬ笑顔で頷くだけだった。
不思議に思いつつもゾロは芝生の上に腰を下ろしいつものようにあぐらをかくと、壁を背に寄り掛かる。


「足、それじゃダメ」
「……どうしろってんだよ」
「膝立てて、間空けて」


何がしたいのか分からないが、ゾロは言われたままに足を動かす。
するとナミはにっこり笑うと、ゾロの足の間にするりと腰を下ろした。
ゾロと同じように膝を立てたまま座り、広い胸に背持たれた。
突然のナミの行動にゾロは何も言えずに固まり、ナミはそれに一向に構うことなく片手に持っていた小説を開いて、呑気に読み始めた。


「……ちょ、おい、ナミ?」
「ん?」
「なんだよ、この状況は」
「だから、誕生日プレゼントよ」
「………これが?」
「これが」


ゾロの胸に体重を預けて寄り掛かり、少し顎を上げてナミはゾロを見上げる。
そのあまりの近さに、ゾロはどうにか距離を取ろうとしたがその体が逃げればナミも追ってすり寄ってくる。
だんだんと頬に熱を持ってくるのをどうにか誤魔化そうとせめて顔を背けたが、ナミはゾロの真っ赤になった耳たぶを引っ張ってクスクスと笑った。
それからまた小説に目を戻し、何も言わずに読み進める。

ゾロは横目でそれを見下ろしながら、小さくため息をついた。
こうなっては何を言おうがナミに勝てるはずもない。
やり場に迷った両手を結局立てた膝の上に置いて、ゾロは自分の足の間にナミを座らせたままでひたすら耐えた。

惚れた女が肌の触れ合うようなすぐ傍にいて、手を動かせば抱きしめられるような状況で我慢を強いられる。
どんな修行だ、と心中で呟いて、ふと不安になった。


「なぁナミ」
「なに?」
「お前、これ他のヤツらにもやらせたのか?」


ルフィやウソップも確か、プレゼントを用意できていなかったはずだった。
おそらくルフィは晩飯の肉を分けるというプレゼントになるだろうが、もし『物』が無いクルーへのプレゼント変換が全員コレだったら…と思うとゾロの胸に微かな嫉妬の炎が宿る。


「まさか。そんなわけないでしょ」
「………そうか」
「あんただけよ」
「………」


こちらを見もせずに、小説に目をやったままのナミの言葉をどう捉えるかでゾロはまた固まる。
他のヤツらにはさせていないということなのか、プレゼントが無いのが自分だけだったということか。
いくら考えても正しい答えは出なかったので、つまり他の連中にこの態勢は許していないという事実だけをゾロは受け止めることにした。

それからしばらく二人とも無言で、ゾロはナミが本を読み進めるのをじっと見下ろしていた。
時折吹く風がナミの髪をなびかせて、さわさわとゾロの頬を撫でる。
首筋あたりからやたらと甘い香りがして、ゾロは時折めまいのような感覚に襲われるが理性を総動員して耐えた。



ようやくナミが本を閉じた。
最初から半分以上は読んでいたらしく、ゾロが思っていたよりは早く読み終えた。


「……終わったか?」
「うん、なかなか面白かったわ」
「そりゃよかったな」


本を足元に置いて、だがナミは立ち上がる気配を見せずにさらにゾロの胸に半ば倒れるように寄り掛かった。
ピクリとゾロの腕が動くが、それでも自分の膝の上から動かそうとはしなかった。


「……おいナミ」
「なぁに」
「もういいだろ」
「ダメ」
「なんでだよ」


ゾロの声に苛立ちが混じる。
何も出来ないならこの状況は拷問でしかない。
さっさと解放されたいし、でなければいい加減何かやらかしてしまいそうだった。


「誕生日なんだから、いいでしょ」
「………」
「ここに居たいんだもん」


それはいつものからかう口調ではなくまるで独り言のような小さな小さな呟きだったので、そのたった一言がゾロの理性を吹っ飛ばした。

膝の上で固まっていた腕で、ナミを乱暴に抱きしめた。
そのまま自分の胸に抱え込むようにして、白い首筋に顔を埋める。


「っゾロ!?」


戸惑いを帯びたナミの声で、ゾロはほんの少し理性を取り戻す。
だがこの態勢から元に戻るつもりは毛頭無かった。


「ナミ」


いつもより低いその声に、ナミの肩がびくりと震える。
それに気づいても、ゾロは解放するどころかさらに強く抱きしめた。
嫌ならいつものように殴って逃げればいい。
力いっぱい抱きしめてはいるが、その気になればナミならいくらでもここから逃げられるはずだ。
ナミがそうしないのだから、ゾロも自分から力を緩めることはしなかった。


「……ねぇ、ゾロ」
「ん」


自分の体に回された逞しい腕に両手を添え、ナミは下を向いたまま小さな声で名を呼んだ。
ゾロは細い首筋から顔を上げることなく、くぐもった声で短く返事をする。


「誕生日おめでとう、って言って」
「………誕生日おめでとう、ナミ」
「……じゃあ歌、歌って」
「……あ!?」


唐突な要望にゾロはさすがに顔を上げて、真横にあるナミの横顔を見つめた。
ナミもゾロのほうへ顔を向け、目の前の男に微笑んで見せた。


「ハッピーバースデーの歌!」
「………本気かよ」
「じゃないと逃げるわよ」
「………」


今はここから逃げる意思は無いと?
歌えば、このままでも構わないと?
嫌ではない、と考えていいのか?

ゾロは動揺しつつもそう結論付けて、「あー」とか「うー」とか唸ったあとでまたナミの首に顔を押し付けた。


「くすぐったいよ」
「………ナミ」
「んー?」
「……………ハッピーバースデー、トゥーユー……」


普段からは考えられぬほどの小さなたどたどしい声で、ゾロは歌い始めた。
ナミは触れただけだったゾロの腕を、ぎゅっと握る。


「ハッピーバースデー、トゥーユー…、ハッピーバースデー…、ディア…ナーミー…」


ゾロは少し顔を上げ、ナミの耳元に口を寄せる。


「ハッピーバースデー……トゥーユー………」


歌い終わって、ゾロはまた顔をナミの首に押し付けて、真っ赤になっているであろうそれを誤魔化した。
だがふと気づいて顔を上げると、ナミの顔も同じかそれ以上に真っ赤になっていた。


「……お前、自分で言っといて何だよその反応は」
「いやー、結構クルわね」
「あ?」


ナミは答えず、もぞもぞと体を動かして、かつゾロの体勢も変えさせて無理矢理その太ももの上に移動した。
横向きに座ると、今度はゾロの胸にぎゅうと抱きつく。


「……ナミ?」


するがままにさせておいたゾロだが、ナミが抱きついてきたので素直にその細い体を抱きしめ返した。
ナミは抵抗しないし、むしろさらに強くすり寄ってきた。


「……ありがとう、ゾロ」
「……おぅ」
「すごくうれしかった」
「……こんなんでよけりゃ、いくらでも。あぁでも、歌うのはちょっともう勘弁な」


ゾロは抱きしめた手でナミの髪を撫でながら、軽く笑う。
この状況が夢ならそれで構わない、という若干開き直りも含めて、すぐ傍にあるナミの額に唇を寄せた。
それでも、やはりナミは抵抗しない。


「じゃあとりあえず、晩御飯までこのままね」
「……了解」


フフ、とナミは笑って目を閉じた。
どうやらこの態勢のまま眠るつもりらしい。
微妙に肩透かしをくらったゾロだったが、今自分の胸の中にナミが居るという状況は、触れることもできなかった先程に比べればかなりマシだ。
大分戻ってきた理性のおかげで、ゾロはいくらか落ち着いていた。
ナミはというとすでに半分眠っている。


「おやすみ…ゾロ……」
「あぁ、おやすみ」
「……好きよ、ゾロ……」
「あぁ、……あ? あぁ!?」


慌ててナミの顔を覗き込むが、既に夢の中である。
寝落ち直前にどんな爆弾落としてくれてんだ、とゾロはまた飛びそうになる理性を必死に繋ぎとめた。



それからパーティー開始の声が上がるまで、ゾロは飛びかけの理性と共にナミの無防備な寝顔を見ながら耐えるという新たな試練とただひたすらに戦っていたのだった。




2010/07/11UP、2011/04/24加筆訂正

というわけで、昨年ナミ誕の気分でブログにUPしたものです。
まさか1年後にもロクなナミ誕が出来そうにないとはね……。
誤魔化しつつ再アップ!

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