06バトン




風も波も穏やかで、絶好の航海日和。
ナミは甲板にデッキチェアを出して、優雅なティータイムを過ごしていた。
前の島で手に入れた本数冊を脇に置いて、時折空を見上げてその青さに微笑みながら読み進んでいく。

ふと上空で鳥が鳴いて顔を上げると、
赤い帽子を被りバッグをぶらさげたカモメが、バサリと羽を畳みながらメリー号の手すりに下りてきた。



 「あら、ご苦労様」



ナミはにっこり微笑んで、郵便カモメから手紙を受け取る。


宛名にナミの名が書かれた白い封筒には、金の封蝋が施されていた。
裏返すと、滑らかな字体で差出人の名が書かれていた。



 「“Baby Factory”…?」




封を開けて取り出して見ると、2枚の紙が入っていた。
1枚は丁寧に書かれた文章と、
もう1枚には10問程度の質問項目と、おそらく回答を記入するらしい余白が残されていた。

1枚目の文章にさっと目を通し、ふーんとナミはチェアにもたれかかった。

どうやらアンケートのようなものらしく、
記入して送り返せば抽選で10万べリー!と謳っていた。

ナミは最初は怪しんでいたが、その10万ベリーという単語を見て、
即座に手紙を持って女部屋へと戻った。




******



1.誰に回すか06人を選んで下さい。

ルフィ
ゾロ
ウソップ
サンジくん
チョッパー
ロビン

……あれ、ちょっと、足りないわコレじゃ。
何で06なの?
まぁいっか、とりあえずこのメンツで。



2.その06人との関係は?

麦わら海賊団の仲間…よね、簡単に言うと。
何かこの言い方だと『ルフィと愉快な仲間たち』みたいで気が抜けるわね。
これでも私たち、海賊よ?
全員賞金首なんだから!
高額賞金首ばかりだから、破産間際になっても大丈夫ねv



3.06人との共通点は?

ルフィとは…まぁ『お宝』に対する興味は似てなくも無いわね。
あの食欲とは共通点を持ちたくないけど。
それでなくても最近ちょっと体重が増えてきてるんだから…。
サンジくんにダイエット食を頼まなきゃ!

ゾロとは…はっきり言って共通点なんか無いわよ。

ウソップは…ま、一番気が合うのかもね。
この船、化物ばっかりなんだもん。

サンジくん…そうね、食事の好みは結構合うわね。
まぁあっちが合わせてくれてるんだろうけど、さすが一流レストランの元コックは違うわよねー。

チョッパーは…うーん、可愛いところかしら?
……別に私、おかしいこと言ってないわよね?

ロビンは…好奇心旺盛なトコは似てると思うけど。
でも彼女怖いもの知らずだから、付き合うの大変なのよね結構。



4.06人の良いところは?

改めて言うとなると…照れるわね…。

ルフィは…何故だか分からないけど、頼れるところかしら。
普段あんなでも、ウチの大事な船長ですもん!

ゾロは…寝てばっかりの穀潰しだけど、ちゃんと約束は守るし意外と気が利くし、
副船長っぽく皆を引っぱってってくれるトコをもあるし、意外と優しいとこあるし…。
……と、とにかく!『野獣』って言われてたわりにはいいヤツよ!

ウソップは…怖がりで嘘ばっかりついてるけど、もしかしたら一番男前かもねって一瞬思うことがたまにあるわねー。
あの手先の器用さは言うまでもなく長所だし、ただあんまり褒めると調子に乗るからわざと控えめにしてやるんだけど(笑)。
そうだ、そろそろ武器のメンテ頼まないと。

サンジくんは…サンジくんの場合も料理の腕は言うまでもないわよね。
私たちの前ではヘラヘラしてるけど、決める所は決めてくれる人よね、彼は。
あとミカンの木の監視をしてくれるのがいい所ねv

チョッパーは…何はともかく、あの可愛らしさよね。癒されるわ…。
それに加えて医学の知識と動物との会話能力!
すごいのよウチの船医は!!!

ロビンは…あの冷静さね。豊富な知識と経験もステキだわ。
冷静なツッコミも最近覚えたみたいだし、もっとはじけてもイイと思うんだけど。



5.06人との出会いは?

ルフィとの出会いはオレンジの町ね。
最初は海賊だなんて思わなかったから気軽に声かけちゃったけど…、
ま、今にしてみれば結果オーライってとこかしら。
今でもあいつが海賊だなんて、たまに疑うわよ。
あの呑気に遊びまわってる姿見たら…ね。

ゾロとはルフィと同じ町で、バギーとの戦いの最中。
海賊狩りに助けられることになるなんて、実は結構ドキドキしたんだけど、これはゾロには内緒ね。
まさか『海賊狩りのゾロ』がルフィの仲間だなんて思わなかったけど、いいコンビよねあの2人。

ウソップとは、あいつの故郷シロップ村で。
カヤさんとかあのちびっ子3人は元気かしら。
メリーさんにも報告しないといけないこともあるしね…。
気になるんだけど、カヤさんとウソップって付き合ってるのかしら?
今度手紙出して聞いてみよっと。

サンジくんとは海上レストランバラティエで。
また食べたいなぁあそこの料理…。
もちろんサンジくんのオゴリでね。

チョッパーとはドラム島で。
喋るトナカイなんてびっくりしちゃったわ。そのうえ医者なんだから!
本当、口説いてよかった!!!

ロビンとは…リトルガーデンの手前だったわよね?
最初は敵としてだったからね。
でも今は正真正銘、麦わら海賊団の仲間よ!!
そういえば私の服を勝手に着た代金、請求しようかしら。
あの宝石はまた別物よ、別物。



6.06人がいてよかったと思うことは?

うーん、難しい…ていうか恥ずかしい質問ね。
次から次に色んなことに巻き込まれてるから、何かしみじみ思う暇も無いのよね実際…。
でも、出逢えてよかったって思うわ。
………言わないけど。



7.06人とは今後どうしていきたい?

6人とはっていうか。
海賊稼業やりながら世界中の財宝探して世界地図描けたらいいな。
それをみんなと一緒に出来たらもっともっと楽しいって思う。
……私も大分、ルフィに感化されてるわね。
ゾロとのことは…。
…………まぁ、アッチがあんな感じだし…。
なるようになるんじゃない?



8.06人は自分のことをどう思ってる?

麦わら海賊団の頼れる美人天才航海士でしょ?
違うだなんて言わせないわよ!



9.06人とケンカしたことある?

毎日ね。
特にゾロとは…。
でも9割方はあっちが悪いのよ!
だって寝てばっかりなんだもん!!
部屋の掃除とか模様替えとか手伝ってほしいのに。
島に着いたって船番ばっかりで、しかもほとんど寝てるしね。
つまんない男!



10.06人は一生の友達?

そ、そうね…友達っていうか…。
仲間だもの。
家族に近い感じかな。
一生かどうかは分からないけど、このまま誰も欠けずにやっていけたらいいわね。



******




全てを記入し終えたナミは、ペンを置いて椅子に背もたれる。
アンケートにしては奇妙な質問ばかりだったが、10万ベリーとなれば無視はできない。
答えたところで害は無さそうだし、あとは自分の運がいいことを祈るのみだ。




 「で、さっきから何やってんだお前?」

 「!!??」



自分しかいないはずの女部屋から男の声がして、ナミがガバリと振り返った。

無人だと思っていたその部屋には、どうやら先客がいたらしい。
ナミが見たものは、ソファに寝転んだまま大あくびをかましているゾロの姿だった。



 「な、何でココにいるのよ!!」

 「眠かったんで」



ナミは後手で回答用紙を本の間に挟んで隠した。
ゾロはそれに気付かない様子で、頭を掻きながら体を起こしソファに座りなおす。



 「じゃあ甲板で寝ればいいじゃないのよ!」

 「ルフィらが五月蝿い」

 「……もう!!」

 「ところで、お前…」

 「な、何よ…」



ゾロにじっと見つめられ、ナミは何も後ろめたいことなど無いのに少し言葉に詰まった。



 「誰がつまんない男だって?」

 「…え?」





 「全部口に出てたぜ」





 「…………え」




一瞬ゾロの言葉が理解できず固まっていたナミは、すぐに顔を真っ赤にした。



 「…うそ」

 「マジ」

 「……ずっと、聞いてたの…」

 「聞いてたんじゃなくて、聞こえたんだ」

 「同じよバカ!!!」



ものすごく気恥ずかしくて、ナミは赤い顔のままゾロに本を投げつけた。
それはゾロの頭に直撃し、でかい音を立てて床に落ちた。
挟んでいた回答用紙がハラリと落ちる。

あ!!と気付いたナミが駆け寄る前に、額を撫でながらゾロがそれを拾い上げた。
ナミは慌てて奪い取る。



 「勝手に見るなーー!!!」

 「どうせ全部丸聞こえだったぞ」

 「うっさい!!」

 「あとな…」

 「まだ何かあるの!!?」



ナミは奪い返した用紙を机の引き出しに放り込んで、勢いよく締めた。
怒鳴りながら振り返ると、ゾロが何故か申し訳無さそうな顔をして立っていた。




 「…なに」

 「それ、期限が7月3日だってよ」

 「……え?」



慌てて引き出しを開け、回答用紙の一番下に目を走らせる。


 『なお、回答用紙はお手数ですが7月3日までにご返送ください(当日消印有効)』


ナミはあんぐりとと口を開ける。



 「え、だって、これ今日届いたのよ」

 「配達ミスだろ、船の上じゃよくあることだ」

 「………」




10万ベリーどころか、恥ずかしい本心をゾロに聞かれただけで終わってしまった。

ナミはグシャリと用紙を丸めて、思い切りゾロに投げ飛ばした。
ゾロはそれをひょいと避ける。



 「八つ当たりすんな」

 「うっさいバカ!! 全部忘れて!! 誰かに言ったらタダじゃおかないわよ!!」

 「言わねぇよ」



ゾロはニヤニヤと笑いながらナミに近づいて、その頭を胸に引き寄せた。
相変わらず赤い顔のまま、ナミは大人しく立っていた。



 「『なるようになる』が不満なようで?」

 「………」

 「…ま、悪いようにはなんねぇだろうよ」

 「……あんま変わらないじゃない、それじゃ」



ナミは小さく抗議しつつも、ゾロの背中に手を回してしがみついた。
ははっとゾロは笑って、ナミの頭を撫でた。



この日、ゾロの借金が少し減った。




………はい!
Baby Factory』の真牙さんから頂いていた『06バトン』、
変化させてナミさんに答えさせてみました!
回答だけじゃ寂しかったので、急遽SSっぽく。
“06バトン・改”ということでひとつお許しをw

てなわけで真牙さん、バトンありがとうございましたーvv
何か変則させちゃったり勝手に名前出しちゃったりだけど、許してねw!!(可愛く言ってみる)

07/07/08 回答

生誕'07/NOVEL/海賊TOP

日付別一覧

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送