約。








 「おいゾロ」

 「何だ」

 「付き合え」






見張りを終えたゾロは、キッチンに夜食の皿を戻しに来た。
サンジはまだ明日の仕込みをしていて、
ゾロはいつものように「ごちそうさん」と呟いて皿を渡し、キッチンを出ようとした。


そこをサンジが呼び止めた。
振り返ったゾロは、サンジが両手に持っている酒瓶を見てニヤリと笑った。





 「珍しいな、お前から酒呑ませてくれるなんてな」

 「うるせぇな、呑むのか呑まねぇのかどっちだ」

 「・・・・・呑むに決まってんだろ」




いつものようなサンジの無愛想な言い方だったが、
何となく棘を感じてゾロは片眉をあげた。
だが酒の誘惑には勝てず、素直にサンジが座った正面に腰を下ろした。


















 「おい、ペースが早ぇぞ」

 「うるせぇ」




今日のサンジはやたらとペースが早く、酒豪のゾロに負けないレベルであった。






 「・・・・おいゾロ!!」

 「・・何だよ」




目のすわってきたサンジは、どんとテーブルに拳を打ちつけゾロを睨んだ。
一瞬たじろいだゾロだったが、自分のグラスを煽りながら返事をする。





 「何でお前みたいなマリモがモテるんだぁ!?」

 「・・・・あぁ?」

 「何であんな美女二人がお前なんかを・・・・っ!!」

 「・・・・・・・知るか」

 「何だその態度は!! もう少し有難く思え!!」





サンジはチクショウと呟きながら、手酌でグラスに酒を注ぐ。
ゾロはグラスを突き出し、自分の分も注がせた。
ちょうどそこで瓶が空になり、ゾロは舌打ちして立ち上がり、キッチンの横の扉の奥から新しく1本取り出してきた。
いつもなら勝手に取るとサンジはギャーギャーと文句を言うのだが、今日は何も言わなかった。





 「お前もお前だ。どっちつかずの態度でいやがって・・・」

 「・・・・・お前はどうなんだよ」




その言い方にカチンときて、ゾロは負けじと応戦した。
新しい瓶の栓を歯で抜いてそのままゴクゴクと呑む。
半分以上空けたあと、ジロリとサンジを睨む。





 「おれが何だよ」

 「ナミとロビン・・・どっちにもイイ顔しやがって。人のこと言えんのか」

 「・・・・うるせぇな。てめぇにだけは言われたくねぇ!」

 「結局どっちにも逃げられるタイプだよな、てめぇは」

 「うるっっせぇ!!!」




サンジは怒鳴りながら立ち上がろうとした。
が、いつもなら有り得ない量の酒のせいで、立ち上がった瞬間サンジはよろけ、
結局、再び椅子に座り込んでしまった。







 「・・・・・分かってんだよ・・・・」

 「・・・・・」

 「彼女たちはお前じゃないとダメなんだって・・・」

 「・・・・・」

 「おれがどんなに頑張っても、あの2人は今はお前しか見てねぇんだよ・・・」





サンジはテーブルに突っ伏して、ようやく聞こえる程度の声で呟く。
ゾロはそんなサンジの様子を無言で見ながら、静かに酒を呑み続ける。







 「なぁゾロ」

 「・・・・何だ」

 「頼むから、ナミさんとロビンちゃんを泣かすなよ・・・」

 「・・・・・・」




ゾロのグラスを持つ手が止まる。






 「ロビンちゃんを、泣かすなよ・・・・・」

 「・・・・・・」

 「約束だぞ・・・・・」







最後にそう呟いて、サンジはスースーと寝息を立て始めた。










 「・・・おい、ココで寝る気か」

 「・・・・・・・・・・・・・・」

 「・・・・ちっ・・・」


















 「あら、サンジくん寝ちゃったの」



ゾロがこいつをどうすりゃいいんだと悩んでいると、
ナミがキッチンにやってきた。


スヤスヤと寝ているサンジを見て微笑みながら、ナミはシンクにマグカップを置いた。




 「お前、まだ起きてたのか」

 「うん、日誌をね。で、どうするのコレ」




ナミはサンジの顔を覗き込んで、起きる気配が無いのを見るとゾロに向き直った。
ゾロはガシガシと頭を掻いて、残っていた酒を一気に飲み干した。




 「まぁ放っときゃそのうち起きんだろ」

 「ダメよ、風邪引いちゃうじゃない。ゾロ、男部屋から毛布取ってきて」

 「何でおれが・・・・」

 「あんたに付き合って酔いつぶれちゃったんでしょ? 責任取りなさい」

 「・・・・・」




こいつが勝手に呑んだんだ、と言おうと思ったが、
どうせ何かしら言い返されて負けるのは目に見えているのでやめておいた。



ナミはサンジの頭をツンツンと突付きながら、爆睡している姿を面白そうに見ていた。









 「・・・・・・・・ナミ」

 「何?」



ゾロに呼ばれて、ナミは素直にゾロの隣に来た。
椅子に座ったままで、ゾロは立っているナミの腰を抱き寄せた。




 「やだ、どうしたの?」



ナミがクスクスと笑いながらゾロの頭を撫でるが、ゾロは無言でしがみついていた。
ナミの腹に顔を埋めたままで、動かない。





 「ゾロ?」

 「・・・・・・あんな約束、できねぇよなぁ・・・・」









       どうすりゃあいつが泣かずにすむんだよ


       分かんねぇ










 「ゾロ、どうしたのよ?」

 「・・・・・泣くなよ、ナミ」

 「・・・・泣いてないわよ?」

 「・・・・・・ならいい」










       せめてお前は












 「どうしたの・・・・? まさか酔ったの?」

 「・・・何でもねぇ。毛布取ってくる」





ゾロは立ち上がり、ナミの視線を感じながらキッチンから出て行った。


残されたナミは首をかしげて扉を見つめ、それからサンジに目をやった。






 「・・・・ゾロに何か言ったの? サンジくん・・・・」




ナミの問いはサンジには聞こえない。





サンジの夢の中では、ナミとロビンは幸せそうに笑っていた。
・・・・・自分の隣で。




2006/03/19 UP

えーと、サンジvsゾロです。
サンジくんは報われない予感が大変いたします。
ゾロは相変わらずのダメ男です。

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