敵。








 (明日には島に着くわね・・・・)





夜中に目の覚めたナミは海の様子を確認したあと、
そのままフラリとミカン畑に足を運んだ。





しばらくナミは畑の真ん中で、目を閉じて立っていた。
深呼吸。
土の匂いと、葉っぱの匂いと、うっすらミカンの匂い。
夜の冷たい空気と混じって、皮膚から直接自分の体の中に染み込んでいく。

小さな時から自分のまわりにあったその木。
ここにいると落ち着く。
イライラしたり、何か考え事をしたいときは、ここへ来ると心が静かになる。
不安なときも、泣きたいときも。









数分たったころ、足元で扉の開く音がした。

ナミはミカン畑から見下ろした。





キッチンから出てきたサンジが、煙草に火をつけ一服していた。

後片付けや翌日の仕込みなどで、サンジが毎晩遅くまで仕事をしていることをナミは知っていた。
それにしても今日はやけに遅い。

そのまま無言で見下ろしていると、視線を感じたらしいサンジは顔を上に向けた。




 「お疲れ様、サンジくん」

 「んナミさんvvv 何て素敵なアングルvvv」

 「シャベル落とすわよ」



スカートの中でも見えたのか、鼻の下を伸ばしているサンジをナミは笑顔で脅した。



 「冗談ですごめんなさい」

 「よろしい」

 「煙、大丈夫?」

 「うん」



サンジの煙草から出ている煙は、細く伸びてナミのあたりで霧散している。


ナミは微笑んで、ミカン畑からひょいっと飛び降りた。



 「ナミさん!」

 「大丈夫よ」



ふわりと着地したナミは、再びサンジの隣で微笑む。



 「何か飲まない?」

 「紅茶でも?」

 「いいわね」












キッチンで向かい合って座る2人は、温かい紅茶を飲みながら無言だった。

ゆっくりと何口か飲んだころ、ナミが口を開いた。




 「・・・・サンジくん、今日はやたら時間遅いのね」

 「・・・ちょっと、考え事してまして」

 「ふぅん」

 「ナミさんこそ、どうしたんだい? こんな遅くに」

 「ちょっと、目が覚めて」

 「・・・ふぅん」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」






再び無言になる。

サンジはカチャ、と小さな音を立ててカップを置いた。





 「・・・ナミさんはさ、あいつでいいんですか?」

 「あいつって?」

 「ゾロだよ」



サンジがいつになく真面目な顔で見てくるので、ナミは思わず視線を逸らした。



 「・・・・いいって、どういう意味?」



サンジの言いたいことは分かっていたが、ナミはあえて聞いた。





 「・・・・・・あいつはさ、ロビンちゃんの事も・・・その、気にしてるだろ」

 「そりゃあ、仲間だもんね」

 「そうじゃなくて、・・・・ナミさん、気付いてんだろ」

 「・・・・・・・・まぁ、ね」



サンジが少しイラついたような口調になった。
ナミは肩をすくめて軽く笑う。



 「・・・・・いいの、ナミさん?」

 「全然平気、って言ったらウソになるけど、でもいいの」

 「・・・・・・」





サンジが何か言おうとしたが、ナミはそれを阻むように口を開く。



 「もしゾロがロビンに心変わりするようなら、それは結局私がロビンに負けたって事で、
  ある意味自分のせいだし、・・・それに・・・・・」

 「それに?」

 「負ける気なんて、カケラも無いもの」

 「・・・・・」



どこかで見たような顔で、ニヤリと笑ってナミが言うと、
サンジは一瞬呆けていたが、すぐにくっくっと笑い始めた。



 「現時点では私の方が大幅リードなのは間違いないしね。今後ロビンの逆転は・・・させないわよ」

 「さすが、ナミさん」

 「ふふ」





何がおかしいのか、2人でしばらく笑いあっていた。

ナミが紅茶のおかわりを頼むと、サンジは「喜んで」とすばやく立ち上がる。







2杯目の紅茶の準備をしながら、サンジはいつもの軽口で呟く。



 「クソマリモ、こんないい女がいながら他に現を抜かすなんざ・・・おれなら貴女一筋なのに」

 「あーら、どの口がそんなことを言うのかしら?」

 「えーー?」



優雅なサンジの姿を見ながら、ナミは意地悪く笑った。



 「自覚してるんでしょー? サンジくんの方こそ」

 「・・・・・・」

 「サンジくんの場合は大幅にリードされてるんだから、頑張ってね?」

 「・・・・はーーい・・・」





カップを受け取りながら、ナミはポツリと呟いた。



 「私としてはサンジくんを応援しときたいんだけどね」

 「だろうね、共同戦線張っとくかい?」

 「そんな簡単にいくようなら、私だって心配する必要ないのよ・・・」

 「だね・・・」

 「なかなか手強い相手よ・・・」

 「まぁおれはどっちに転んでも・・・・」

 「何ですってぇ?」



こっそりと出たサンジの言葉をナミは聞き逃さなかった。
目を細めてサンジを睨む。



 「いやその、冗談です」

 「そんな、ゾロの残り物みたいなのでイイんだ?」

 「・・・・・イヤです」

 「それに、もう一人忘れてるわよ」

 「もう一人?」

 「ルフィよ」

 「・・・・・」




サンジの動きが一瞬止まる。




 「あれこそ、一番厳しいライバルよ」

 「・・・・だね・・・・」



はーーっと深く溜息をつくサンジを見て、ナミは思わず笑った。



 「・・・ナミさぁ〜ん・・・・」

 「ごめんごめん」

 「本当、よりにもよってクソゴム船長までもなんてな・・・・」

 「まぁ、頑張ろ」

 「はーい・・・」

 「さ、もう寝ようか。明日は上陸よ」

 「はいはーい」







サンジがカップを洗うのを待ってから、2人は一緒にキッチンを後にした。


だが扉を出てすぐにナミは足を止めて、クルリとサンジに向き直った。






 「ナミさん?」

 「サンジくんはさ・・・、どっちがいいと思ってるの?」

 「何が?」

 「私とロビン、どっちがゾロと・・・・・」

 「・・・・・・・」




どちらかの想いは、実らない。




 「・・・・おれは、2人が笑っててくれればいい、それだけです」

 「・・・・そ」



ナミは再び向きを変え、2階からの階段をトントンと下りていく。





 「ナミさん」

 「・・・・この船でなら、きっと皆笑っていられるわ」

 「・・・・・」

 「だから、どうなっても大丈夫よ」






そう言って微笑み、おやすみ!と叫んだナミは女部屋へと小走りで戻って行った。






残されたサンジはしばらく佇んでいたが、クソマリモ、と呟いて同じように男部屋へと下りた。













女部屋へ下りたナミは、寝ているロビンを起こさないようにそっと扉を閉める。


ロビンの寝顔を見て、起きていないことを確認して安心する。
そのまま静かに自分のベッドにもぐりこむ。



ゾロがどちらを選ぼうと、きっと笑えるようになる。
自分でも、ロビンでも。
だから大丈夫。
大丈夫。

自分に言い聞かせるように、ナミは心の中で呟いた。




眠っているロビンは、何だか微笑んで見えた。
もしかしたらゾロの夢でも見ているのかもしれない。

何だか悔しくなったので、ゾロの夢が見られますようにと願いながらナミは目を閉じた。




2006/03/10 UP

いろんな矢印が入ってますね。
サンジ→ロビン←ルフィで、ロビン→(←)ゾロ。
ゾロナミ前提で。
何が言いたいかよく分からんお話に・・・・(汗)。

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