謝。








 「夕飯だぞーーー!」



サンジの声に、クルーはわらわらとキッチンに集まってくる。













ナミは椅子に座ると、はーーーーっと長い息を吐いた。




 「あぁやっと落ち着いて食べれるわ・・・」

 「お疲れ、ナミさん」

 「みんなもね・・・」





昨日上陸した島では、早々にルフィの無銭飲食(食べ過ぎて代金が足りなかった)が発覚し、
ひたすら海軍と追いかけっこする羽目になってしまった。
食糧補給も中途半端な状態で慌てて出航したはいいが、途端に嵐に襲われた。

航海士ナミの手腕のおかげで船が大きな損害を被ることはなかったが、
夜を徹してさらに翌日も動き回ることになったクルーはみな疲れきっていた。




やっと腰を据えて食事ができる、ということで一同はいつものように料理にがっついていたが、
ふとゾロがその手を止めた。




 「何だクソマリモ、どうした」

 「・・・・今日って、普通のメシなのか?」

 「あぁ?文句あんのか? しょうがねぇだろ、バタバタしてあんま買い物できなかったんだ。
  いつもの上陸後みたいに豪華にゃできねぇんだよ」




サンジは顔をしかめて答えた。

サンジ自身も、上陸後は食材をふんだんに使って料理することが楽しみなのに、
今回は船長のせいでそれができないことが、かなり悔しいのだ。



 「いいじゃないの、美味しいんだし」

 「いや・・・・」



ナミが笑って口を挟むが、ゾロはそれに歯切れの悪い返事しかしなかった。
ウソップも不思議そうにゾロの様子を伺う。



 「何だよゾロ、料理がどうかしたのか? 」

 「今日って・・・・」




いつのまにか、クルー全員が沈黙してゾロの言葉の続きを待っていた。
ゾロはチラリと視線を上げ、テーブルの傍に立っているサンジを見た。















 「今日って、てめぇの誕生日じゃなかったか?」





 「「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」」









皆がしんと固まる。








 「何日か前に、お前ら言ってたよな?」

 「・・・・今日って、2日か?」

 「あぁ」

 「「「「「・・・・・・・・・」」」」」



サンジとゾロを除くクルーは、心の中でヤバイと呟いた。

本当なら、昨日上陸した島でプレゼントやパーティの準備をするつもりだった。
それが海軍や嵐との遭遇で、すっかり頭から抜け落ちてしまっていたのだ。


よりにもよって、ゾロに気付かされるなんて。
しかも本人の前で、こんな席で言わなくてもいいじゃないか。


皆の冷たい視線に気付くことなく、ゾロは食事を再開した。





 「まぁどうせ、作るのお前だもんなぁ」

 「そりゃそうだ」



サンジも気にするでもなく、ルフィの皿にお代わりのスープを注いでいる。










今日が2日で、自分の誕生日であることにサンジは気付いていた。
だがあえて皆に言うことをしなかった。


サンジはクルーの誕生日には、腕を振るって豪華な食事を作る。
それがコックである自分からのプレゼントを兼ねているからだ。

だが自分の誕生日に料理を作ってくれる人はいないし、作らせる気もない。

この船のコックは自分だから。

当然、自分の誕生日の料理も自分で作ることになる。
『プレゼント』自体は、元々欲しいとは思っていない。
特に欲しいものがあるわけでもないし、あえて言うなら珍しい食材だが、
これも食糧補給の際には一応は自己判断で買えてしまう。


結局、今日が誕生日だろうが何だろうが、
皆が美味しいと笑って食べてくれる、それだけでサンジは満足なのだ。













というわけで、皆が微妙な顔で固まっているこの状況の中、
どうしたもんかとサンジは頬を掻いた。




 「・・・・あのーー、皆さん?」

 「ごめんねサンジくん!!!!!!!」



サンジが口を開いた途端、ナミが大声を出して頭を下げた。



 「忙しくて準備とかできなくて、その、プレゼントも何も・・・!!」

 「いや全然気にしてないから、いいんですよ?」

 「でも・・・・っ」



半泣きになっているナミや、ルフィまでもがしゅんとしているキッチン内を見渡して、
サンジは困ったように眉を下げた。







 「・・・・皆に質問です」

 「え?」









 「メシ、美味いか?」









にっこり笑ってそう言ったサンジを、皆きょとんとして見返した。


だがすぐに、一斉に口を合わせて美味いと叫んだ。

それを聞いてサンジは満足そうに笑う。




 「プレゼントはこれで充分。サンキュな!」



そう言ったあとサンジはナミに微笑みかけ、給仕の手を再び動かし始める。








 「・・・・・・・・ロビン」



ナミはロビンに声をかけ、目で話しかける。
ロビンはそれを理解したのか小さく頷き、ナミと一緒に立ち上がった。






 「今のじゃ、サンジくんへの日頃の感謝には足りないわ」

 「ナミさん?」



ナミとロビンはサンジを挟んで立ち、その肩に手をかける。










 「誕生日おめでとう、サンジくん」

 「誕生日おめでとう、コックさん」



サンジの耳元でそう囁いたメリー号の美女2人は、その頬に同時にキスをした。














唇が離れてからも、しばらくサンジは動かなかった。



 「・・・・コックさん?」



ロビンが不思議そうにサンジの顔を覗き込もうとした瞬間、サンジはキッチンから飛び出して行った。



 「サンジくん!!?」













 「幸せーーーーーーー!!!!!!!!」










開け放たれた扉から、キッチンにサンジの絶叫が届いた。












 「・・・・ある意味あいつにとっちゃ、一番のプレゼントになったな」


ウソップは苦笑しながら言った。




 「結果オーライだ。しかし・・・安く済ませたな」


ゾロはナミに向かってニヤリと笑う。




 「あら、私たちのキスは高いわよ? ねーーロビン」

 「えぇ」

 「へーー、そうかい」

 「普通なら5万ベリーは取るところよ」

 「へーーー」

 「剣士さんなら、特別安くしてあげるわよ?」

 「・・・・・・・・遠慮しとく」

 「・・・あんたも素直じゃないわねぇ・・・」

 「誰が」












柔らかい唇の感触を脳内で反芻し、
とろっとろに溶けていたサンジがキッチンに戻ってきたのはそれから1時間後のことで、
サンジの夕食も全て船長の腹の中に消えた頃だった。




2006/03/02 UP

サン誕です。
はっ、ロビ誕では口にチューしていたのに、
ほっぺにチューで喜ぶサンジくん・・・!?
・・・細かい事は気にしない!!!
誕生日くらい、報われる話を書いてあげたかったので(笑)

てことでDLFナリ。

皆に愛を注ぐ貴方の事を、きっと皆が愛しています。


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