吻。
「それなら、キスを頂戴」
ロビンはいつもの笑顔でそう言った。
2月6日。
麦わら一味・考古学者の誕生日である。
お祭り騒ぎの大好きなクルーたちであったが、運の無いことにこの数週間、島に着いていない。
航海士ナミの予定では、誕生日前に合わせるためログを無視して途中の島に寄るはずだった。
しかし前の島で手に入れたこのあたりの海図が、結構な割合でデタラメまみれだったのだ。
「何なのよこの海図!! こんなのよく描けるわね!!」
「落ち着けよナミ、とにかく島は無ぇんだな?」
「この通りよ!!!」
大海原のド真ん中。
地図には堂々と島が描かれているにも関わらず、影も形もありはしない。
「どうするよ・・・・」
「・・・・とりあえず・・チョッパーが海鳥に聞いてくれた話じゃ、北の方へ進めばログの指す島があるみたい」
「へぇ、どのくらいで着く?」
「・・・・・・1、2週間かな・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・ロビンちゃんの誕生日、明日だよ」
「明日ね・・・・・」
「・・・・・・・」
ロビンを除くクルーたちがキッチンで盛大な溜息をついたのが、昨日の晩。
そして誕生日当日キッチンにて、ロビンの前に一同は神妙な顔で並んでいた。
「どうしたの、皆して?」
「ごめんロビン!! 誕生日パーティーできないの・・・・」
「・・・あら、そんなの構わないのに・・・・」
「クソ船長が盗み食いしやがるせいで、次の島まで食料持たすのに精一杯で・・・・、
でももちろんできる限りおもてなしするから!!」
申し訳なさそうに項垂れるクルーを見て、ロビンはクスクスと笑う。
「気にしなくていいのよ、それにこの年で誕生日パーティーだなんて何だか恥ずかしいもの」
「いやいや、パーティーはいるぜーーロビン!!」
「あぁ、肉パーティーは必要だ!!」
「お前が盗み食いしなけりゃ少なくとも豪華料理はできたんだ!!!」
サンジにガシガシと蹴られているルフィを無視して、ナミはロビンに尋ねる。
「でね、ロビン。次の島にも当分着かないから、プレゼントも用意してないのよ・・・・」
「プレゼントだなんて・・・気持ちだけで充分よ」
「ダメよそれじゃ。だからさ、今日はとりあえず私たちにできる事とか、してほしい事とかない?」
「してほしい事・・・?」
「ちゃんとしたプレゼントは次の島で用意するから、ね?」
「・・・・・・・」
ナミに言われて、ロビンは少し考えるように黙りこむ。
「何かある?」
「・・・・えぇ、そうね・・・・・それなら・・・」
「なになに?」
「次の島でのプレゼントもいらないわ、だから・・・・」
「だから・・・?」
「キスを頂戴」
「・・・・・キスって、・・・キス?」
「えぇ、キス」
「・・・・誰から?」
「みんなから。ダメかしら・・・・?」
「ううん、ダメじゃないけど・・・そんなんでいいの?」
「えぇ」
ロビンはにっこりと微笑んで答えた。
ナミは物足りないようだったが、本人のリクエストならば仕方が無い。
「うーん、まいっか・・・・。ちょっとあんたら五月蝿い!! プレゼント決まったわよ!!」
「え、何ですか?」
「キス」
あっさりとしたナミの言葉に、目をハートにしたのはサンジだけだった。
「本当にいいのロビンちゅわぁ〜〜〜んvvvvv」
「お、おいおい、それっておれらもか?」
「おおおおおおおれ、そそそそそんなの」
「何だよロビン、それだけかよーーー」
「・・・・・・・」
「皆が嫌じゃないのなら」
嫌なわけないよぉ〜〜vvvとサンジが舞い踊る中、ナミが立ち上がった。
「じゃ、まずは私から・・・・」
ナミはロビンのところまで行き、隣に座った。
「誕生日おめでとう、ロビン。本当の姉さんみたいに思ってるわ」
「ありがとう」
「これからもよろしくね」
そう言ってナミは、ロビンの両頬にキスをする。
「ありがとう、航海士さん」
「・・・何だか照れるわ」
「あぁ美女2人のキスシーンなんて・・・・っっっっ」
「さて、次はウソップいっとく?」
「・・・・・・よし、おれも男だ!!」
「あらステキ」
ウソップは気合を入れて立ち上がり、同じようにロビンの傍に行く。
椅子に座ったままのロビンは、ウソップを見上げながらにこにこと笑う。
「あーー、何だ。とりあえず誕生日おめでとう!」
「ありがとう」
「本当はブレスレット100本セットを贈ろうと思ってたんだが、生憎材料が足りず・・・・」
「ひとつでいいわよ」
「それもそうだな! あー、とにかく、今日はその、キキキキスのプレゼントだ!!」
真っ赤になってそう言い切ったウソップは、
腰をかがめ、ロビンのこめかみあたりに素早くキスを落とした。
「・・・意外とステキね、長鼻くん。ありがとう」
「う、うるせぇ!」
さらに真っ赤になったウソップが逃げるように離れて、
今度はオズオズとチョッパーが近づいてくる。
「誕生日おめでとう、ロビン!!」
「ありがとう、船医さん」
チョッパーはロビンの隣の椅子にぴょんと飛び乗った。
「ロビン、ちょっと屈んで」
小さな体に合わせてロビンは微笑みながら上半身を屈め、チョッパーに顔を近づける。
「おれからのプレゼント!」
チョッパーは自分の鼻を、ちょん、とロビンの鼻にぶつけた。
そしてにっこりとロビンに笑いかける。
「島に着いたら、一緒に本屋に行こうな!!」
「デートの約束までくれるなんて、ありがとう船医さん」
真っ赤な顔で離れるチョッパーの次は、ルフィがやってくる。
「おめでとうな、ロビン!!」
「ありがとうルフィ」
そう叫んだルフィは、ロビンの唇にキスをした。
そのあとロビンを自分の胸に抱き寄せ、ポンポンとその頭を撫でる。
「これからもよろしくな!」
「・・・・えぇ」
何事もなかったかのようないつもの笑顔で、ルフィは離れて行った。
入れ替わりにやってくるサンジに、すれ違い様に殴られる。
「何すんだ!!!」
「クソゴムのくせに、ロビンちゃんにあんな真似しやがって!」
「何だよ、本人のリクエストだろーー!!」
「うるせーー! ちくしょーー!!」
何故か半泣きで近づいてきたサンジに、ロビンは笑いかける。
「ルフィらしいわね」
「本当に、全く・・・・」
コホンと咳払いをし、サンジはネクタイを締めなおす。
「えー、お誕生日おめでとうロビンちゃん」
「ありがとう」
「貴方が生を受けたその日世界は喜びに満ちて鮮やかに色づいたことでしょう。
そしてその日こそおれにとっての真の女神が舞い降りた日なのです!!」
「ふふ」
「ということで、・・・・プレゼントを」
サンジはロビンの頬に手を添え、ゆっくりと顔を近づけていく。
「・・・・・・・」
軽く唇に触れただけで離れていったサンジを、ロビンは意外そうに見つめた。
「どうしたのロビンちゃん」
「・・・正直、貴方は濃いのがくると思ってたわ」
「そうしたいのは山々なんですが、やっぱり壊れ物は丁重にしないとね」
「・・・あら、私はそんな柔じゃないわよ」
「どうかな?」
サンジは優しく笑って、名残惜しげにロビンから離れた。
そして最後に近づいてきたのは、相変わらず仏頂面の剣豪である。
「・・・・あーーーー、・・・誕生日オメデトウ」
「ありがとう、剣士さん」
「・・・・・・で、キスか・・・・」
「えぇ、貴方はどんなのをくれるのかしら?」
ロビンがからかうようにそう言うと、
ゾロはガリガリと頭を掻きながら、ロビンの手を取った。
そしてその手の甲に、キスを一つ。
「・・・・・誕生日、おめでとう」
「・・・・・・・・ありがとう・・・・」
若干頬を染めつつ、ゾロはロビンの手を離す。
「・・・どうして手なの?」
「・・・後でナミが怖ぇからな」
「あら」
ポツリとゾロが呟くと、聞き逃さなかったナミが大股で近寄ってくる。
「何よそれ! 今日は許してあげるわよっ!!」
「そう言いながら、ちょっと怒ってない航海士さん?」
「そ、そんなに心狭くないわよ私っ!!」
ナミは顔を真っ赤にして叫ぶ。
そんなナミに、ロビンはクスクスと笑いながら小首をかしげる。
「ふふ、ごめんなさいね。・・・今日は許してくれる?」
「・・・・誕生日だもんね、・・・特別よ!」
「ですって、剣士さん」
「・・・・・」
「・・・・でもちょっとだけだからね!!!」
「ですって、剣士さん」
「・・・・・」
ゾロは半ばヤケクソ気味に、ロビンの頬にキスをした。
限りなく唇に近い、頬に。
ナミも若干ふてくされていたものの、ロビンの顔を見るとまた『特別よ』と呟いて微笑んだ。
ロビンは、頬を染めて少女のように笑っていた。
2006/02/05 UP
ロビ誕だよー。
ロビン総受風味。
シリアス路線の『巡』で一発目からほのぼの(?)。
ゾロナミ前提、サンジ→ロビン→(←)ゾロですかねぇ。
後書きまで読んでくれた皆様へ。
ショボショボですがDLフリーらしいよ?(他人事のように)。
え、誰もいらな以下略。ぎゃふん。
とにかく、誕生日おめでとうロビン。
貴女が心から笑えますように。
巡
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