両。
答えは出た。
出たのはいいが、分からない。
おれがあの女に持っていた感情は、何だったんだ?
『お前そりゃ、騎士道ってヤツだ』
騎士道?
『男なら誰でも持ってるだろ、女を護るっていう使命感をな。
まぁ大なり小なり、それにおれとお前みたいに表に出すか出さないかってのもあるがな』
夢の中に勝手に出てきたコックが、ケラケラと笑いながらそう言った。
『お前今まで女と付き合ったことねぇのか?』
余計なお世話だ。
確かに真面目な付き合いをした女はいなかった。
『身近な女への親愛と、惚れた女への愛情の区別も付かねぇのかよ』
『お前がロビンちゃんに持ってる感情がどっちなのか、自分で区別できねぇか?』
『同じ船に乗る大事な仲間への愛か、絶対必要不可欠な唯一の存在への愛か』
『お前がナミさんに持ってるのは、どっちの愛だ?』
夢の中でも変わらず煙草をふかしながら、コックは片眉をあげて聞いてきた。
答えようとしたところで、目が覚めた。
「・・・・・・・・ナミ・・・」
「・・・・ん・・・・? なに・・・・・?」
思わず名を呼ぶと、眠っていたナミはぼんやりと反応する。
白い背中がもぞもぞと動き、おれの腕の中に抱かれたままで体の向きを変えて顔を合わせた。
「どうしたの・・・?」
「・・・・・・・・いや、別に・・・・おやすみ」
「・・・・? おやすみ・・・」
不思議そうな顔をしたナミだったが、
それでも睡魔には勝てずに目を閉じて、胸に顔を埋めてくる。
問われて考えるまでもない。
腕の中のこの女が特別なのは、出会ったときから変わらぬ事実。
翌朝、皆が上陸準備をしているなか、
碇をおろしているとナミが近づいてきた。
「ねぇゾロ、・・・今日の船番なんだけど、ロビンと変わってくれない?」
「あぁ?」
「あのね、ここって結構盛んな島だから、大きい本屋とかもあるみたいなのよ・・・・。
久しぶりだからロビンと一緒に回りたくて・・・・だから・・・・・ダメ?」
「別に、いいけどよ・・・・」
「よかった! ありがとう!!!」
「・・・・」
「・・・次の島では2人でデートしようね。だから拗ねないの!」
「拗ねてねぇ!」
怒鳴り声にも負けず、ナミは嬉しそうに女部屋へと戻って行った。
・・・・別に拗ねてはいない。
ただ久しぶりの島だったんで・・・まぁ色々と期待していたのは確かだが。
「じゃあゾロ、しっかり番しててね」
「ごめんなさいね剣士さん、今日は航海士さんお借りするわ」
「いいからさっさと行けよ」
船に残るおれに気付いて、ウソップたちが不思議そうな顔を向けてくる。
「あれ、船番ってロビンじゃなかったか?」
「ナミと出かけるんで代わってくれだと」
「へぇー、・・・・・・・・まさかロビンに負けるとはなぁ・・・」
「それは言ってやるなよ、ルフィ・・・・」
こっそりと笑いながら呟いたルフィとウソップに殺気混じりの視線を送ると、
2人はチョッパーと共に慌てて船から降りて行った。
「行ってきまーす!」
ウソップたちに続いて、ナミとロビンも船から降りた。
うきうきと楽しそうに町へと出て行く2人を船から見下ろしていると、隣にコックが立つ。
「いいねぇ、美女2人が仲良くデートか」
「お前もさっさと行けよ」
「てめぇなんぞに言われなくても行くさ。ただちょっと一言・・・言いたくてな」
「何を」
「・・・・・・疑問は解消したかい、悩める青少年?」
「・・・・・・・・・・・!?」
一瞬コックが何を言ってるのか分からなかったが、すぐに思い至った。
でも、昨日のは夢だろ?
「お前・・・・?」
「あぁ気にするな、昨日ちょっと妙な夢見たんでな、言ってみただけだ」
「・・・な・・・・・・」
言葉に詰まっているおれを無視して、コックはひらりと船から飛び降りた。
「寝てねぇでちゃんと船番しとけよーー」
ヒラヒラと手を振って町へ向かうコックの姿を、おれは言葉もなく見送るしかなかった。
おかげさまでな。
でも夢は夢だ。
礼は言わねぇぞ。
全員が町に消えたのを確認して、
軽く左右を見渡した後、背中を伸ばしながら甲板に戻る。
寝るなとは言われたが、一人で船に残ってすることも無い。
唯一の存在への愛?
共に在る仲間への愛?
おれにとってナミの存在。
ロビンやルフィたちの存在。
感情の名は違っても、どちらも同じように特別だ。
海賊狩り時代から考えると妙に丸くなってしまった自分に苦笑して、
居心地のいいこの船の上、今のおれは皆が帰るのを待つのみだ。
2006/05/28 UP
ゾロって女友達とか居なさそうなんで・・・区別付かなさそう。
あ、くいなは別として。
書きたかったのはゾロの夢の場面だけです。
あとはオマケです(笑)。
皆は仲良しってことで。
ほのぼの〜と終わらせたかったんです・・・・。
4ヶ月の『巡』、ラストの話がこんなでいいのか。
まいっか。
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