答。












馬鹿でかい波がこいつをさらったと気付いたとき、頭が真っ白になった。

視界からナミの姿が消える。

こいつがおれの前から消えるなんて、考えてもいなかった。
こいつを失うことなど、考えてもいなかった。

この手から離れることなど。




真っ白な頭のままで、夢中でナミの元へと泳ぐ。
その体を掴み、生きていることに安堵して、
それからロビンに気付いた。

あいつも落ちていたのに。

急いで廻りを見渡すと、コックがロビンを抱えて船へと戻る姿が目に入る。
ほっと息をついて、ナミを抱えて同じように船へと向かって泳いだ。



おれは見ていたのに。
ナミと、ロビンが海に落ちるのを。

悪魔の実の能力者であるロビンが荒れた海に落ちてどうなるか、それを知っているのに。



おれはナミを助けた。

ナミのことしか、考えていなかった。
ナミのことしか、考えられなかった。



それが、おれの答えか。




















海に落ちたときは、意識があった。

海に叩きつけられた衝撃でぼんやりとはしていたが、
それでも視界の隅にメリー号と、同じように波にさらわれたらしいロビンの姿を捉えていた。

泳がなきゃ、と思いながらも体が言うことを聞かない。
メチャクチャな動きをする海に手足を封じられたように、必死に頭を海面に出すことだけで精一杯だった。

小さくなっていくメリー号から、サンジくんとゾロが海に飛び込むのが見えた。



段々と意識が薄れていく。

ロビンの頭はもう見えなくなってしまった。




ロビンを助けなきゃ、足を動かさなきゃ・・・・・。


あぁでも大丈夫、ゾロがロビンを助けるわ。


ゾロは言っていた。
能力者であるロビンを、先に助けると。


だからロビンは大丈夫。
だったら私は、自分で泳いで戻らないと・・・・。


足を動かして・・・・手を・・・・・・・




そう思いながら、自分の体が沈んでいくのに気付かなかった。


最後の意識の中で、自分を呼ぶゾロの声を聞いた気がするが、
気のせいだったかもしれない。































あの嵐の日から2日、体調の戻ったナミはメリーの隣で針路の確認をしていた。

航海士であるナミが動けなかったため、船を動かす事はできなかった。
嵐の多い海域はできれば早めに抜けたいところなので
ナミは風や雲を読みながらログポースを覗いていた。





 「航海士さん、寝てなくていいの?」



背後からロビンが声をかける。



 「ロビンこそ」

 「私はもう平気よ」

 「私だって平気よ。いつまでも寝てるわけにいかないもんね」



振り返ってロビンに笑いかけてから、ナミはまた海に目を向ける。







 「・・・剣士さん、真っ先にあなたを助けに行ったそうよ?」



からかい混じりの軽い口調でロビンがそう言ったので、ナミはゆっくりと再び振り返った。




 「・・・うそよ、それ」

 「あら、どうして?」

 「だってゾロ、ロビンを先に助けるって言ったもん」

 「・・・・・・」

 「ロビンは泳げないから、私は泳げるし、だから」



助けられた経緯は、まだ誰からも聞いていない。
ナミはてっきりサンジに助けられたものだと思っていた。
いつかの言葉どおり、ゾロはロビンを助けたものだと。





 「でも彼が助けたのはあなたよ。私を助けたのはコックさんの方」

 「・・・・じゃあ・・・それは・・・、サンジくんがロビンのトコに先に行ったからじゃないの?」

 「確かに、コックさんは彼に貴女の方へ行くよう叫んだらしいわ。
  でもそれよりも早く、彼はもう泳いでたみたい・・・貴女に向かってまっすぐ、ね」

 「・・・・・・」

 「・・・・能力者だとか、そういうのを全部忘れるくらい・・・貴女の事で頭いっぱいになっちゃったのね」



ふふっとロビンは笑ってそう言った。
ナミはどう返せばいいのか分からず、そのまま無言で立っていた。







 「・・・・・ロビン・・・・」

 「あ、ひとつ報告があるわ」

 「え?」



とりあえず口を開いたナミの言葉を遮って、ロビンは明るい声で続けた。






 「私、フラれちゃった」

 「・・・・え?」

 「じゃあね」




ロビンは微笑んで、ナミに背を向け階段を下りて行った。














しばらく呆然としていたナミだったが、甲板を横切り船尾への階段を上るロビンを慌てて呼び止めようとした。
矢先、ゾロの怒鳴り声が響いた。





 「ナミ、何やってんだ!! ベッドに戻れ!!」





女部屋にナミの姿が無いことに気付いたらしいゾロが、倉庫から出てきて叫ぶ。



 「やば・・・」



抜け出したことがバレて思わず首をすくめるナミを睨みながら、ゾロはずんずんと階段を上ってくる。





 「あんまり動くなってチョッパーに言われたろ!」

 「だって、針路・・・・」

 「おいロビン! てめぇも戻れよ!!」




ゾロは向きを変えて、キッチンに入ろうとしていたロビンにも叫んだ。
ロビンははーいと軽く手を振り、笑いながら結局キッチンに入って行った。






ロビンを見るゾロの目が、以前と違う。
ナミはふと気がついた。

揺れる色が見当たらない。






 「・・・・ゾロ、・・・・ロビンが」

 「あ? あいつがどうした?」

 「フラれた・・・って・・・・・・・・・」

 「・・・・・・」



ナミの正面までやってきたゾロの動きが、ピタリと止まる。
そして小さく舌打ち。



 「・・・どういう、こと?」

 「・・・どういうって、そういうことだ」

 「・・・・・・・ちゃんと言ってくれないと、分からない・・・」



震え始めるナミの声を聞きながら、ゾロはナミの頭をがしがしとかき混ぜる。





 「泣くなよ・・・お前を泣かせたくねぇんだ」

 「・・・・・・」

 「つっても・・・今まで散々泣かせちまってるがな・・・・悪かった」



ナミは俯き、首を振る。


ごしごしと目元を拭うナミの手をとって、ゾロは自分の口元に引き寄せた。
自分の手で包み込むようにして、唇を押し当てる。





 「おれの傍に居ろよ・・・、消えるな」




神妙な顔でそう言われて、ナミはただ黙って頷いた。




 「おれも、お前の傍に居るから」






ゾロの声と、ロビンの笑顔がナミの胸に焼きついて離れなかった。




2006/05/08 UP

ようやく・・・ようやくゾロがダメ男から一歩踏み出したような・・・・
・・・・気がする・・・(オイ)。
しっかし・・・・オチが無ぇなぁ・・・・・・・。
何か、ダメ男ゾロに慣れすぎちゃったよ・・・男前ゾロってどんなだっけか・・・・(笑)
違和感がありすぎて笑えてきます。。。。

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